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15周年を迎えたSHIROが、伝えたいこと


15年目の宣言

2024年6月23日、SHIROは15周年を迎えました。

15年前は、現在のようにコンセプトが明確ではありませんでしたし、こんなにもたくさんの人に愛していただけるブランドになるとは夢にも思っていませんでした。

ブランド名も「SHIRO」ではなく「LAUREL」からのスタートで、今日に至るまでの旅路では、数え切れないほどの変化がありました。

その中で、ずっと変わらなかったことは、「自分たちが毎日使いたいものをつくる」という想いです。私の想いは「SHIROの想い」になりました。そして、SHIROの想いが「皆さんの想い」になっていたら嬉しいです。

15年という長い歴史を紡いで来られたのは、ひとえにSHIROを愛してくださる皆さんのおかげです。改めて、いつも本当にありがとうございます。

節目の15周年を迎えるにあたり、昨年末に「SHIRO 15年目の宣言」を発表しました。2024年から、廃棄物ゼロを目指すという内容のものです。

「15年目の宣言」は、SHIROが皆さんへの感謝を表現する手段でもあります。ブランドを育てていただいたお客様、取引先の皆様、そして砂川というまち。ひいては地球に対して、どうやって感謝を表そうかと考え抜いた先に見つけた答えでした。

もうひとつも捨てたくない

「廃棄物ゼロを目指す」という未来を掲げたのには、理由があります。SHIROの生まれ故郷である砂川に「みんなの工場」をつくり、利益を社会課題の解決に投資したことで、「事業そのものが社会課題の解決につながらないと意味がない」と改めて確信したのです。

利益を社会課題の解決に使ったとしても、利益を生み出す過程で社会課題を生み出しているのであれば、本末転倒です。生活者の消費を煽って、毎月のように新しい製品を生み出しているようでは、地球が壊れてしまいます。

このままの調子では、いずれ循環が止まる未来が来てしまう。だから、SHIROは社会課題を生み出さずにつくった利益を、社会課題の解決につなげていくブランドになることを決意しました。

廃棄物ゼロを目指すにあたって、大きく2つのアプローチがあります。まずは、「新しくつくらない、新たなものづくり」です。そもそもSHIROは、捨てられてしまっていた自然素材から製品をつくっています。

がごめ昆布化粧水も、ラワンぶき化粧水も、タマヌオイルも、本来は捨てられてしまうはずだった素材に価値を宿したものです。

そうはいっても、どうしても製造の過程で残資材が生まれてしまうこともあります。製品のリニューアルによって使われなくなってしまった香料もあり、事実として廃棄物を生み出してしまっていました。

SHIROの決算月である6月になると、不良資材の一覧表が手元に届きます。廃棄にするのか、手元に残して税金の対象になる棚卸資産として残すのかを決めるのですが、どちらにせよあまり望ましくないことです。

廃棄物を生み出すことはしたくない。でも、使用用途が不明瞭ならば税金を支払うのも嫌だ。だからといって、こちらの都合で余ってしまったものをお客様に提供するのもどうかな…という気持ちもありました。問題なくお使いいただけるのですが、きっと受け入れていただけないだろうと思い込んでいたのです。

ところが、あるとき吹っ切れました。「私たちは、世の中をしあわせにするために、後世に豊かな地球を残すために、SHIROを経営してるんだ」って。そのためにできることは何でもすべきであり、余ってしまった素材を再利用することは、もちろん私たちがやるべきことのひとつでした。

そうして生まれたのが、リニューアルなどによって余ってしまった香料と容器、使われなくなった限りある資源から生まれる香水「ZERO COLLECTION FRAGRANCE」です。使われなくなった素材と資材を活かしたいという想いを、すべての製品を通して実現していく未来のためのチャレンジでした。「ZERO COLLECTION FRAGRANCE」を発売するにあたり、意識していたのは「余っているから買ってください」ではなく「余っている素材から素晴らしい製品をつくる」ということ。

捨てられてしまう素材を恵みに変えることは、SHIROの真骨頂です。余っていることを言い訳にせず、「こんなにいいものが、余りものからつくられているの?」と驚かれる製品をつくることに全力を注ぎました。

目指していたのは、例えるなら「冷蔵庫の余りものでつくった、抜群に美味しい料理」です。冷蔵庫の余りものでつくられた料理って、案外と美味しかったりしますよね。余りものでつくるので、同じ料理にめぐり会える可能性は少ないし、だからこそほっこりできる。

そうした一期一会の製品を発売してみると、とてもありがたいことに、多くのお客様が手に取ってくださいました。1月に発売して秋ぐらいを目処に完売を目指す想定をしていたのですが、6月時点でほとんど売り切れてしまっています。

もちろん、なるべく過剰な発注をしないことや、素材を余らせないことは大前提です。素材を余らせることをしなければ、余った容器の上にZERO COLLECTIONのラベルをすべて貼り替えるという大変な作業も、発生しませんでした。

それでも、廃棄物を出さないという強い想いを持って、背景を包み隠さず伝えて、本気でクリエイティブを磨けば、お客様も納得して購入していただけるということが分かりました。お客様にSHIROの信念を信じていただけていることを再認識できた、素敵なできごとになりました。

お店づくりでも、廃棄物ゼロ

廃棄物ゼロを目指す2つ目の取り組みが、「捨てない」そして「新たにつくらない」お店づくりです。

お店が古くなると、館(出店している百貨店やショッピングセンター)と相談をしてリニューアルをするのですが、従来のやり方では廃材を生み出してしまいます。床を変えたり、什器を新調したりすると、古くなったものが不要になるからです。

SHIROは「捨てられてしまっていた素材を恵みに変えるブランド」です。そんな私たちが、お店をつくったり、リニューアルするたびに廃材を出したりしてしまうことには、ずっと疑問がありました。

そこで、2023年9月にリニューアルオープンをした「SHIRO ルクア イーレ店」では、什器を捨てずにそのまま表層替えをして、余っていたガラス容器を左官材に混ぜて使用することにしました。既存の塗床を剥がさずに上から塗装する方針に切り替え、改装工事の在り方を変えてみたのです。

これまでのリニューアルにかかる工事期間は、床を剥がして、貼り直すなど、大掛かりになるため、一定期間どうしてもお店を閉めなければいけません。すると、こちら側の事情になるため同館内でポップアップを開催しないといけません。ポップアップのために新しい什器をつくることになり、さらに廃棄物が出ます。

でも、「捨てない」そして「新たにつくらない」お店づくりをすれば、その必要はありません。地球に優しく、お客様にもご不便をかけずに済むのです。せっかくリニューアルするなら、当初はお店を新しくしてみたいという気持ちもありましたが、工夫次第でどうにでもなります。「SHIRO ルクア イーレ店」のリニューアルをきっかけに、SHIROはお店づくりにおいても、廃棄物ゼロを目指す体制が整いました。

これを実現できたのは、私たちの想いに共感していただいた、建築デザイナーの小倉寛之さんの存在が大きい。建築過程で生み出した廃材を使ったプロダクトをつくることを以前から実践されていた方で、彼の考えとデザインが私たちの想いと交わり、素敵なお店をつくることができるようになりました。

小倉さんの存在しかり、廃棄物ゼロを実現するには、パートナーの存在が不可欠です。私たちにとって欠かせないパートナーのひとりが、ごみをごみにしない社会を目指す、石坂産業さん。収集した廃棄物の再資源化率100%を目指すという、とても高い壁に挑んでいる会社です。

自分たちが出した廃材が、どのようにして処理されているのかを知るのは、簡単なことではありません。リサイクルされていると思っていたら、実は埋めているだけだった、という現状も少なからずあります。しかし、石坂産業さんは、すでに再資源化率98%を達成しています。実際に工場も見学させていただきましたが、同じ経営者として頭が下がるほど、きめ細やかな仕事をされていました。

廃棄物を廃棄物として見ているのではなく、廃棄物を資源として見ているから、なぜかキラキラして映るんですよね。いわゆる、一般的にイメージされるような廃棄物処理とは、まるでイメージが異なっていて、私は初めて石坂産業さんを訪ねた時、廃棄物を見て、「なんて美しいんだろう」と感動しました。
私が突拍子のないことを言い出しても、シロのスタッフの誰もがついてきてくれるのには、こうした素敵なパートナーさんがいるというのもあるはずです。そして、壁を乗り越えてきた自信が、新しい挑戦をする背中を押してくれているんだと思います。

SHIROはこれからも、廃棄物ゼロを目指す取り組みに拍車をかけていきます。まだ詳しくお話できませんが、ものづくりも、お店づくりも、新しいチャレンジをしている最中です。

SHIROを愛してくださるお客様はもちろん、これからSHIROを使っていただくみなさんにも、楽しみにお待ちいただければと思っています。

石坂産業株式会社

 (編集サポート:泉秀一、小原光史、バナーデザイン:3KG 佐々木信)

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