鉛弾に関する新聞記事

鉛銃弾に関する記事が出ていたので、仕事で野生動物に関わる立場、狩猟者、環境保全を仕事にしている立場から、意見とコメントです。

私の現在使用している弾は主に銅弾ですが、過去に鉛銃弾を使用したことがあります(もちろん合法的に)。また現在も、ヒグマ向けに限定して鉛弾の使用に関する特別な許可をもらっています(野外で使用することはほとんどありません)。

鉛銃弾の使用を削減していく方向性に私は賛成です。

記事にもある通り、鉛は有毒です。その一方で鉛には、重たい、柔らかいという、弾頭にするには都合の良い特徴があります。おまけに値段も安いです。

柔らかくて重たくて安いという特性を持つ鉛の用途は多用です。釣りのおもりなんかにも使われています。渓流釣りでは、ガン玉、かみつぶしというような米粒大のおもりを使用しますが、これにも鉛が使われています。糸を挟んでギュッと潰すと変形して糸を抱き込むことができます。柔らかい鉛の特性を使用した使い方です。

狩猟では弾として使用される鉛、その鉛がめぐりめぐって生き物(特に生態系の上位にいる猛禽類)に鉛中毒を起こすというのが問題になっています。

仮に鉛中毒の問題がなくても、環境中に放出された鉛は、土壌や水を確実に汚染します。なので、私は鉛銃弾の使用を削減していく方向性に賛成です。

取締りがないと所持や使用はなくならない

「法律的に禁止されても、取り締まる仕組みがないと鉛銃弾の所持や使用はなくならない」、記事の中で欠けている概念だと思います。仮に日本全国で鉛銃弾の所持や使用が禁止になっても、それを取り締まる仕組みがなければ絵に書いた餅状態になります。鉛銃弾を使用し続ける”悪質な”狩猟者は存在し続け、環境中に鉛銃弾が放出される状態を改善することはできないと思います。

私は鉛銃弾が禁止されている北海道に暮らしています。狩猟を始めて15年にあります。しかしながらこの15年のあいだ、警察官や道庁職員などから、野外で弾や許可証の確認を受けたことが一度もありません。つまり取り締まりの現場にあったことが一度もありません。わかりやすく例えると、15年の車を運転していて、ただの一度も道路で取り締まりを行なっているパトカーを一度も見たことがない、パトカーが走っている姿さえ見たことないといった状況です。

狩猟を管理するための仕組みはいちおうあります。警察や道庁職員、非常勤の鳥獣保護員などがいちおういます。でも、15年のあいだで取り締まりシーンを一度も見たことがないです。

信じられないくらい、日本の狩猟を管理する仕組みは脆弱です。だから仮に現状で鉛銃弾の規制が強化されても、それは法律的には意味があっても、十分な実効性を持たせることができないと思うのです。悪質な人は使い続けるうえに、取り締まりもないので是正される機会もない。

鉛銃弾の使用量を減らすためには、法律的に規制することはもちろん、それと一緒に取り締まるための仕組みが必要だと私は考えています。

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