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ハロウィンの花嫁で学ぶロシア語(その10)

渋谷マークシティのつづき。エレニカの悲痛な回想。エレニカを気遣ったつもりが、逆鱗に触れてしまうドミトリー。



ハロ嫁関連の前後の記事は、下記マガジンを参照されたい。

ハロウィンの花嫁で学ぶロシア語



※ 以下、ネタバレになるので、未視聴の方は先に映画をご覧ください。


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2022年2月14日に公開された予告第2弾。


劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』予告2【2022年4月15日公開】
東宝MOVIEチャンネル


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引き続き、渋谷マークシティのカフェ。

エレニカは、プラーミャの爆破行為による、一般住民への被害をしきりに危惧する。

それを聞いたドミトリーは、エレニカの家族がプラーミャの爆弾の犠牲となった、過去の事件に触れてしまう。


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エレニカ 
В любо́м слу́чае, е́сли бо́мба взорвётся, бу́дет мно́го неви́нных жертв.
「いずれにしろ 爆破が起きれば 確実に多くの関係ない人達の犠牲が出てしまう・・・」

(発音)

IPA(国際音声記号、ロシア語ではМФА)での表記
[v ljʉˈbom   slʊˈtɕajɪ   ˈjeslɪ  bɐmˈba  vzɐrˈvʲɵtsə   bʊˈdʲet  ˈmnogo  nʲɪˈvʲinnyx  ˈʐɛrtf]

発音のカタカナ表記
ヴリュボーム スルーチャィェ イェースリ ボーンバ ヴザルヴョーッツァ ブージェット モノーガ ニヴィーンヌゥィフ ジェールトフ

(文法・語彙)

в +(前)(状態・状況) ~の中で

любо́м < любой (形)(あらゆる~、どの~も)の男性形・前置格。

слу́чае < случай (男)(場合、ケース)の前置格。

в любо́м слу́чае  どんな場合でも、いずれにせよ

е́сли (接) もし~ならば

бо́мба (女) 爆弾

взорвётся < взорва́ться (完)(爆発する) の三人称単数現在変化(未来完了)。主語はбо́мба

бу́дет < быть (不完)(未来形で、事件・状態の発生、時刻の到来などをあらわす) ~になる、起こる

мно́го (数量詞)+(生格[可算名詞は複数生格、不可算名詞は単数生格]=数量生格)  多くの

неви́нных < неви́нный (形)(罪のない) の複数生格

жертв < же́ртва (女)(犠牲者、被害者) же́ртваは可算名詞=数えられる名詞なので、мно́го のあとは複数生格になる。

неви́нная же́ртва  罪なき犠牲者  ⇒ 日本語字幕は「関係ない人達の犠牲」だが、ロシア語では少し踏み込んで「罪なき犠牲者」と訳されている。
この「罪なき неви́нный」という形容詞は、「犠牲者 же́ртва」にかかる枕詞として頻繁に用いられる。「無辜の民」と同じように使われる。

В любо́м слу́чае, е́сли бо́мба взорвётся, бу́дет мно́го неви́нных жертв.「いずれにせよ、もし爆弾が爆発すれば、多くの罪なき犠牲者が出てしまうことになる」



ドミトリー 
Ты ника́к не мо́жешь забы́ть о том слу́чае? 
「あの時のこと また思い出しているのか?」

(発音)

IPA表記
[tɨ   nʲɪˈkak   nʲe  mɐˈʐɨtʲ  zɐˈbɨtʲ  ɐ  tɐm  ˈslutɕɪɪ̯]

発音のカタカナ表記
トゥィ ニカーク ニモージェシ ザブィチ アトーム スルーチャィェ

(文法・語彙)

ты (人称代名詞)(二人称単数)(親しい間柄で用いる)お前、きみ

ника́к (副) どうしても~ない

не (助)(述語の否定) ~でない

мо́жешь < мочь (不完)+(不定形)(~することができる) の二人称単数現在変化。

забы́ть (完) о +(前) ~について忘れる

о +(前) ~について

том < тот (指示代名詞・男性形)(あの、その) の前置格。

слу́чае < слу́чай (男)(出来事、事件) の前置格。

Ты ника́к не мо́жешь забы́ть о том слу́чае?
「お前は、どうしてもあの事件を忘れられないのか?」



ドミトリー 
Бы́ло сли́шком по́здно… 
「あれはもう手遅れだったんだよ・・・・・・」

(発音)

IPA表記
[ˈbɨɫə  ˈslʲiʂkəm   ˈpoznə]

発音のカタカナ表記
ブィーラ スリーシカム ポーズナ

(文法・語彙)

бы́ло < быть (不完)(~である)(無人称述語と共に用いて、無人称文を形成する) の中性過去。

сли́шком (副) あまりに~すぎる

по́здно (無人称述語) 手遅れだ、遅すぎる
※ 発音 : по́здно の д は発音しない。
-здн- の綴りでは、真ん中のдを発音せず、[-зн-](IPA[-zn-])と発音する。

Бы́ло сли́шком по́здно…
「あまりに遅すぎたんだ(手遅れだったんだ)…」



エレニカ 
Кири́лл! 「キリル―――!」

(発音)

IPA表記
[kɪ'rɪl]

発音のカタカナ表記
キリール

(名前の意味)

Кири́лл (男)(人名) キリル

ギリシャ語の Κύριλλος(господи́н[主人、旦那]、влады́ка[君主、ギリシャ正教の大主教])に由来する男性名。

(出典)

Петровский Н.А. Словарь русских личных имен. Около 2600 имен. М., 1966.


キリル文字の元となったグラゴール文字を9世紀に考案した、キリル Кири́лл とメフォージー Мефо́дий 兄弟(キリュロス Κύριλλος とメトディウス Μεθόδιος 兄弟)の名前でもある。

日本語字幕の「キリル―――!」をより忠実に再現するならば、Кириииилл! となろうか。

(発音)Кириииилл! の発音


ドミトリー 
Я и сам хоте́л бы его́ спасти́.  
「俺だって 助けたかったさ」

(発音)

IPA表記
[ja   i   sam   xɔ'tɛl bɨ  i'vɔ  spɐ'stʲi]

発音のカタカナ表記
ヤー イ サム ハチェールブィ イヴォー スパスチー

(文法・語彙)

я (人称代名詞)(一人称単数) 私、俺

и (助) ~もまた

сам (定代名詞・男性形) 自身(動作の主体または客体をあらわす)

хоте́л < хоте́ть (不完)(欲する、望む)の男性過去。

бы (助)(動詞過去形+ бы で仮定法を形成する。ここでは事実に反する仮定=キリルを救いたかったけれども手遅れだった)

хоте́л бы  ~したかったのに(できなかった)

его́ < он (人称代名詞)(三人称単数)(彼=キリル)の対格。

спасти́ (完)(危機から)救う

Я и сам хоте́л бы его́ спасти́.
「俺自身も、彼(キリル)を救いたかった(けれども救えなかった)」



ドミトリー 
Но е́сли бы ты и бро́силась за ним, сы́на бы... 
「だけど 飛び込んだところで お前の息子はもう・・・・・・」

(発音)

IPA表記
[nɔ  ɪsli bɪ  tɨ  ɪ  brɔsɪləsʲ  zə nim  sɨˈna  bɨ]

発音のカタカナ表記
ノ イェースリブィ トゥィ イ ブローシラシ ザニム スィーナブィ

(文法・語彙)

но (接)(逆説)だが、しかし

е́сли (接)(бы と共に)(条件法、事実に反する仮定) もし~であったならば

бы (助)(動詞過去形+ бы で仮定法を形成)

е́сли бы もし~ならば

ты (人称代名詞)(二人称単数)(親しい間柄で用いる)お前、きみ

и (助) ~もまた

бро́силась < бро́ситься (完)(飛び込む) の女性過去形。

за +(造)(目的) ~を求めて、~のために

ним < он (人称代名詞)(三人称単数)(彼=キリル)の造格。

сы́на < сын (男)(息子) の対格。

Но е́сли бы ты и бро́силась за ним, сы́на бы...
「でも、もしお前が彼(キリル)のために飛び込んだとしても、息子を…
(救えなかっただろう…という含みを残す文章)」



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