#しらたまの台本88　文学＋朗読台本　両片思いの2本立て

ニコニコの動画投稿祭に合わせて朗読台本＆動画を作ったのですが、片思いの台本にしてしまったので「対になる台本を作って両片思いにする」ことにしました。
フィクションはなるべくハッピーにしたい勢です。
一応、声を当てる合成音声ソフト＆キャラクターの関係で百合にしましたが、性別を特定するワードはいれていないので一人称や語尾の変更でNL、BL、GL全部出来るようにしています。
また、片方だけでも成立するので、配信でも動画でもご自由にお使いください。
台本と一緒に、ニコニコにUPしたサンプル動画も掲載しておきます。

月が綺麗ですねとあの子は言った

あまりにも無邪気に月が綺麗ですね、と言われて、思わず笑ってしまった
「そうですね、本当に月が綺麗ですね」と返したら、あの子も笑っていた
元文学部同士、夏目漱石がI　Love　Youを月が綺麗ですねと訳せと教えた話はよく知っている
後世の創作と言う説、フィクションと言う説、出展がはっきりしないという話も含めて……だ
卒業してあの子が地元を離れても、理由もなく連絡する仲が続いている
共通の話題として文学ワードを織り交ぜる、いつもの遊びだ
でも、あの子は、私の本当の感情を理解できないだろう
いつも、言葉の裏に、文字の底に、私の叫びが隠れていることに
あの子が忙しい合間を縫って連絡をしてくれること、私を心の支えにしてくれていることをうれしく思う
同時に、この気持ちを悟られてはいけないと、強く思う
あの子の邪魔をしてはいけない
今は、我慢しなくてはいけない
気持ちを打ち明ければ、あの子は悩み、歩みを止めてしまうかもしれないから
だからこそ、決して伝わらないように愛を叫ぶ
行動は別の形に変えて、あの子を支える力になるように
あの子がふいに「こういう告白、憧れるよね」と、言った
私は少しの間言葉を失った後に、「そうだね」と答えた
ああ、今日も、月が綺麗ですね
本音は口にせずに、飲み込んだ
見上げた満月が、少し、にじんで見えた

I Love Youは届かない

あの子に気付かれないように、出来るだけ、思いがにじまないように軽く
月が綺麗ですね　と、口に出す
あの子は笑って「そうですね、本当に月が綺麗ですね」と返してくれた
彼女の声を聞いているとそれだけで満たされた気分になる
例え、その言葉に深い意味はなくても、愛しているという言葉が聞けるのはとてもうれしいことだった
地元を離れたのが、もう遠い昔のような気がする
実際にはそれほどの期間は経っておらず、気軽に連絡が出来る関係が保てている
いつか、彼女も忙しくなり、連絡がなかなか取れなくなる時が来るのだろうか？
そう思うと、胸の奥が締め付けられる
元文学部の仲間で、数少ない友人の一人
今はその立場に甘えられているが、理由もなく連絡をするのも難しくなっていくだろう
私が、自分の気持ちを自覚しているから余計だ
この気持ちはあまりに重く、友情とはあまりにも異質すぎる
だから、気持ちは伝えないようにと心に決めた
あの子と少しでも、長く時を過ごせるように
それでも、口にせずにはいられないのが、人の欲だ
だから、後付けでもごまかせるように考えるのだ
「こういう告白、憧れるよね」
こういえば、告白にはならなかったことになる
少しの沈黙の後、あの子は
「そうだね」と、言った
これで理想の告白は使えなくなったかなぁ……と、残念に思う
同じ言葉で、何度も告白するのは……なんというか、文学好きとしては抵抗があるからだ
そもそも、告白をするつもりも、関係を変える勇気もないというのは脇に置く
あの子は、どんな人が好みのタイプなのかなぁと想像をめぐらしながら……
私だったらいいのにと思ってしまう、自分の都合の良さに少し笑ってしまった

利用規約

自作発言は禁止、ちょっとしたアレンジなどは自由とします。
利用時は作者名　しらたま。　に言及するか、動画の概要欄等に

#しらたまの台本

の記載をお願いします。
配信、動画利用のどちらも可です。