ミューズは溺れない

2022.12.13 加筆

淺雄 望監督の映画「ミューズは溺れない」を鑑賞した。「絶対に映画館で観たい」とこころに決めていた作品だ。

感想を箇条書きしていく。




───以下、少々ネタバレを含みます───











映像も美しいのだけれど、特に音に惹かれた。


画用紙にえんぴつを何度も走らせる「画」と「音」に見入って、見られていることに朔が気づいた瞬間の「音」と「間」にすっかりこころは持っていかれてしまった。


「これは間違いなく面白い映画だ」と確信を得るには十分だった。



先生が窓越しに朔(正式には朔子、なのだれけれど作中での呼び名である朔と表記させていただきます)に話しかけるシーン、先生と朔の「動き」を見ていると大人と子ども、枠にはめたい・はまりたくない(穏便にこの時間を流したい)、でも先生の話はちゃんと聞かなければいけないと思う朔の生来の真面目さが窺えるようで好きだ。

ああ、こういう先生いたいた!
クセの強い先生、うまい!
こころの中でスタンディングオベーション。


西原さんと朔の階段でのやりとり、気持ちと動きがリンクしてて楽しい。


洗濯機の音、最初小さい音だったのが部屋を移動して大きくなる演出がたまらなく好き。


よくある演出じゃん、って思いますか?

いやいや、違うんだな。
音量!音量が本当に、絶妙。

答えを知りたくて一緒に家の中を探検してるような、作品に引き込まれていく音量に惹かれた。


そこにはたしかに「生活」があった。




ここまでで「いやーこの映画観にきてマジでよかったー」と思いながら観てるのだけれども、この後に大きな衝撃を受けるシーンに出くわすことになる。


淺雄監督にお会いしたら胴上げしたいくらい好きなシーンだ。






「作業音BGM」シーン。


マジでココ、サイコーにヤバい。

語彙力も低下する程にわたしのこころは色んな感情がせめぎあい、ない混ぜになって乱れたのだ。


こういう感情が「こころを奪われる」と言うんだなと感じた。

わたしは身体を前のめりにして見入った。
途中、場面が変わった時に自分が身を乗り出して見入っていたことに気付く程、この映画の世界観に没入していたのだった。






目の前で「画」として行われる「音」とそれまでに行った作業音ではあるものの「画」にはない「音」でBGMを奏でる。

そういったシーンが2回あるのだけれど、このふたつのシーンの対比がすごい。




ひとつ目のシーンは底知れない不安の感情を垣間見た。いや、垣間見たという表現では足りないな。先の見えない井戸を覗き込んだような、もやもやに包まれた。

BGMを聴いている時間が長くなればなるほど不安が大きくなり、胸の中が掻き乱されていってどんどん怖くなっていった。

蟻地獄に落ちたような、焦燥感。
どうにもならない遣り場の無い感情。
憤りや不安を抱えているのか?

作業をしているひとの気持ちが流れ込んでくるようで、感情移入をしていたのか、気付いたら手をぐっと握りしめて固唾を飲んで見守っていた。

真っ黒い油絵を描いているようだった。
たすけてあげたくなる、苦しさ。

 
殴りがきしたいけど出来ずに、絵の具に乗せて重ねていく負の感情。負、は言い過ぎかな。十代特有のやりきれなさというか、なんというか。そんなような感情がずっしりのしかかってきたような、そんな気持ちになった。




映画を観ていてこんなに「このシーン早く終わって!!」と強く願ったのは初めてだ。

これはこの言葉をそのまま額面通りに受け取られると困るのだが、それくらい感情が揺り動いて激動の時間だった。



わたしはまたこのシーンを見返したい。
好きなシーンだ。






ふたつ目のシーンを見た時、わたしは飴と鞭という言葉が頭にぽんと浮かんだ。



こんなに違うのか、と。


湧き上がる活力、楽しさ。
踏み出す一歩がさっきと違う、よろこび。

期待に胸を打ち震わせることが「音」により「曲」となって、胸がじーんとした。

ファンファーレが脳内で自動再生される。


一面、花畑のようだった。


一気にしあわせな気持ちが溢れ出す。




このBGMが流れる制作するシーンがすきだ。
その時その時の感情で肉付けしていく、「感情の生」を感じた。葛藤、希望、色んな想いを乗せているようで。


特に海での話し合いのシーン。
これは全人類に見て欲しい。

うつくしいんだよな。

波に胸をくすぐられるような、心地よさ。
これまで色んな感情が揺り動かされたけれど、すべて抱きしめてくれるような、あたたかさ。

すごく微笑ましく、安堵。



映画の最後のシーンは感動で涙でたよね。
なにがどう、と言えないのがもどかしい!! 






西原さんと朔が描き手とモデルとして向かい合うシーンも2回あり、そのふたつのシーンを見た時に「役者さんってすごいな」と感嘆した。

このシーンは是非、見て感じてほしい。

十代の頃がぶわっと蘇って、甘酸っぱい気持ちになった。



本当に、西原さんと朔なんだよな。

個人的には朔の前半の想いを言い出せない、対応に困って苦笑いしちゃうような感じがすごく十代って感じがして、好き。優しい子なんだよなぁ、優しいし真面目だから気を遣って言えないんだろうなぁ、ほんと朔よくがんばってる朔えらい。よしよし(突然の母性本能)


西原さんのポーカーフェイス、世界一だよ。
朔も好きだけれど、西原さんも大好き。

西原さんのこと色々書きたいけどネタバレになるしなぁーーー本当観て欲しい!お願い!!だれか一緒に語り合いたいから観てください!!

素敵な俳優さんばかりで、観てて楽しくて。

本当に皆さん、その役のまま存在されていそうなほど、そのひとなんだよな。街のどこかで、西原さんや朔といつかすれ違えそうなくらい、ふたりともそのままの役で現実にいそうと思えた。俳優さんってすごいな、の一言に尽きます。他の作品も調べてみよう、と思いました。


こうやって素敵な作品に、俳優さんに出会えたことを感謝です。知れてよかった、観てよかった。

現代の青春映画ナンバーワン、と言っても過言ではない。そう、過言ではない!




わたしは、うつくしいミューズたちに平伏した。









このnoteを読んで少しでも興味を持たれた方がおられましたら、ぜひご鑑賞いただけたら幸いです。



この映画、間違いないです。



全国で公開していくようなので、お近くで上映されることがあれば観にいきましょう。




最近、感情動いてますか?

最近、良いものに触れてますか?





何度も言いますが
この映画、間違いないです。



サイコーな映画観れて、サイコー!!


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