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【短編Tale】手帳を開いている

手帳を開いている。
溢れ出る心象。
赤・青・黄色。

僕の知らない大切な人が、知りもしない僕に向かって理由のない笑顔を向けている。

ここは空の大地。
いや、海という宇宙。

貴方を恨み、憎み、愛し、好きです、大好きです!だから付き合ってください。

いいえ、さようなら。貴方の事、きらいじゃないけど、それだけよ。おばかちゃん。

そうだったのか。
せやで。
せやのんか。
せやや。
せやや?
せやや。
なにそれ。
パワーワード。

所であれはなんです?
オオカミやで。
いやしかし、あれはライオンに見えます。
あれはライオンのキグルミを着たオオカミやで。
そうなのですか、なるほど。じゃあ、あれは?
キリンのキグルミを着たオオカミやで。
へぇ、それは随分と首の所が重そうですね。面白いなぁ。でも、実際のオオカミはいないんだ、不思議。
不思議でしょ?本当にね。
そうだ。
なんです?
貴方は一体なんなんです?

願えば遠く、想えば遥か。
空想に輝く、貝細工の白百合。
赤き雷鳴に身を縮こまる夜鷹の醜さ。
握りしめた鉄のララバイ、八分の一秒の火薬の匂い。
自由もわからず、羽ばたき落ちたノータリンのガキ。
されど幻想、積もり積もっても、恋煩いの様に散っていく。

落ちてくるのは白。荒野に降り注ぐ薄汚い白。
つばの混じったそれは、インクの滲み一つないキレイなもの。

これは心象。
くだらない唯の心象。

なるほど。
少し。
刺激的。

手帳は今、閉じられている。


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