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[カヌレクエスト]その6 それが最後に皿が回ったときだ。

染之助染太郎がふたり揃っていたのは、2002年。兄の死後も染太郎は皿を回し続けてはいたようだ、などとwikiを読み込んでいる場合ではないのだ。カヌレカヌレ。

だいぶ間が空いたのはまたおやつを入手してしまっていたからだ。merci bakeのクッキー缶。客人が来るというので、あの店のチーズケーキでも買っておこうかなと思って行ったら、15時ごろに売り切れになっていて、なんかテレビにでも出たのかと思ったら8月はクッキー缶を売ることにしてるらしかった。好奇心がおさえがたく、9月になるギリギリ前くらいに買いに行った。おいしかったが大量だ。コツコツとそれを消費している間に季節が15度くらい巡った気がする。夜がだいぶ涼しくなって、外にでようという気持ちになったりするようになった。

さいきんのクッキーは区切って並べられたりせず、ふきよせになっているのがトレンドである

先日、ようやくクッキー缶の底が見えてきたので、生地を作って寝かせた。予定外のことなどが起きていつもより余計に生地は寝ていた。そして前回考えたのは、もう膨らみそうになったら、上から押さえてやるということだ。タルト型の底とそれに乗せる耐熱の器。合計でざっと700gくらいある。まあ大丈夫だろう。これを押し上げるってなかなかだ。それに今回は生地を冷蔵庫から出してからしばらく放置したので、沸騰しやすくなっている。もしかしたら、それらの出番はないかもしれない。

これがフタとして用意されたもの

そうして焼き始める。まあ、速攻でわかるよね。生地が盛り上がってきたし、失敗の気配があるってこと。きっちり型の7割しか入れてなかったけど、まあ、溢れるよね。

ふくらんでもいいように7分目

当然すかさずフタをしましたよ。その重い奇異なフタを。そして安心して目を離していたところ、ガタ、と音を聞いた。

ガタ?

オーブンがガタ?

まさかと思った時は大体まさかな訳で、生地は膨らみ重しを傾かせ、庫内で瀬戸物の雪崩が起きて、なかなかなことになっていた。

あーあ。

もういいや。
もう失敗だもん。
とりあえず、食べられるように焼くだけだ。


これってなー。まあ色々あったけどレシピ通りに、書いてあることをかなり忠実に手順に合わせてやっていると思う。だとすると、現在たてられる仮説は2つ。

・レシピがおかしい
・オーブンがおかしい

の2つではないかと思う。

レシピがおかしいというのの可能性はとても低いと信じたい。内外のいくつものレシピを読んだが、材料の割合がいろいろあるだけで、大幅にずれているものはなかった。ひとつだけ焼く時の温度が極端に低いものがあるのを見つけただけだ。

カヌレの生地は重さにもびくともせずに膨らむ

だとしたら、2003年製のターンテーブル式のこのオーブンが原因だとするほうが合理的ではないかと思う。来年でちょうどオーブンレンジが二十歳になるからたのしみで、というようなことは全くない。すでに時折液晶の表示が消失するし、今時、皿が回るってなによ。3月に引っ越しをする時に買い替えようと思っていたんだけど、なんか先に洗濯機が壊れたりなんなりで後回しになっていた。ご存じコロナと円安でこの後電化製品の値段は上がるんじゃないかというっすらとしたデマっぽい噂もあるし。な。まあもともと買おうとしてたわけだし。な。将来1.5倍くらいの値段で買うのも腹の立つことだし。な。

そのように自分を説得し、オーブンレンジを買った。忍法「型落ちお安いけど家電はええやろ、アイホンはあかんで」を発動。27000円也。ここで、すっとカヌレを焼いてみるというほどに私は準備がいいわけでもないし、失敗カヌレを全部たべてからオーブンを買うというようなことをするタイプではない。衝動的にオーブンを購入し、失敗カヌレは冷蔵庫に入っている。だからといって、急いでカヌレをたべるでもなく、冷蔵庫のカヌレを無視するのでもない。だから、最初に稼働させてたのは、肉まんをあたためることだった。うちの近所には、肉まんのおいしいお店があるんだよ。