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【体験談】満員電車で薬品をかけられた日

その日は、いつもと同じ朝のはずでした。8:30の電車に揺られ、日々のリズムに身を任せ、いつもの通勤ルートをたどっていました。ただ、今日は少しだけ特別な気分で家を出ました。

それは、お誕生日に自分へのご褒美として奮発したDear Princessのワンピースを着ていたからです。特別なときにしか着ない、私の宝物の一着でした。

いつもの駅、いつもの時間。何も変わらないはずの日常の中で、電車を降りた瞬間、ドンと衝撃を感じました。振り返ると、私のワンピースに黒や紫の薬品がべったりとかかっていました。胸の奥に湧き上がる悲しみとこのワンピースが、こんな形で汚されるなんて思いもしないという驚きでした。

その瞬間、ふと頭に浮かんだのは、成人式の日に振袖を汚されたり、制服のスカートを切られてしまった学生たちをニュースで見た日のことでした。彼女たちにとって、その出来事がどれほど深く心に刻まれたかを考えると、胸が締め付けられるような思いになります。私のワンピースも大切なものでしたが、彼女たちが経験した苦しみに比べれば、悲しみはまだ軽いものだと感じました。

犯人が何を考えていたのかは分かりませんが、少なくとも、他の電車でに乗っていた誰かが同じ目に遭わなかったのなら、それでよかったのかもしれない。そして、人の心の傷はそう簡単には癒えないから、私より、学生さんなどが被害に遭い、怖い思いをしなくてよかったと思いました。

この出来事を通じて、人の心がいかに繊細で、敏感であるかを実感しました。犯人の気持ちに共感することはありませんが、その人自身も何かしらの苦しみを抱えていたのかもしれないと考えるようになりました。また、もしかしたらこの経験は誰かを守ることにつながったのだとしたら、その役割を果たせたことに静かに感謝し、受け入れていきたいと思います。

何より、これから先、私を含めて誰もが安心して電車に乗れるような日々が続くことを願っています。みんなが穏やかで、心に余裕を持って過ごせる社会でありますように。


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