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提案:メタボリズムの更新と都城市民会館のオマージュ再生

~都城市民会館の保存運動に関わった一市民として~ 

はじめに

 宮崎県都城市に、日本を代表する建築家菊竹清訓(1928‐2011)さんの設計による市の文化施設「都城市民会館」がありました。扇を拡げたような独特な形状の建物は、2019年に解体されるまで53年もの間、人々を魅了し続けたのです。

 竣工は1966年、音楽・演劇等のホールと会議室、それに結婚式場を備えた公共施設として誕生。高度経済成長期の真っ只中、日本全国に美術館、音楽ホール、図書館などが建てられていった時代でした。「都城市民会館」は長年、”文化の殿堂”として多くの市民に親しまれ、国内外からの建築見学者も多数あり、新しい文化ホールが建設された際には、市民による保存運動も起きます。

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 日本建築学会やモダニズム建築の保存に関する国際団体Docomomo(ドコモモ)、そしてユネスコ世界遺産の諮問機関であるイコモス等から保存要望が出されました。それほど高い建築文化財としての価値、国際的な評価があったわけです。

 2005年から始まった保存運動にずっと関わってきた私が、最も注目していたのは、都城市民会館が日本で唯一の建築運動と言われる「メタボリズム」を具現化した建物として世界に発信されていることです。「メタボリズム」は建築や都市を生き物のように”新陳代謝”するものと捉えた建築思想。1960年の世界デザイン会議で発表され世界を驚かせました。ベースに日本の伝統建築やエコロジーの視点をもっており、近年は再評価の動きもあります。 

 しかしながら、諸事情により新陳代謝叶わず。更地となった跡地は、市の老朽化施設の建て替え候補地として時を待っているのです。そこで、老朽化の中央公民館を、必要性が高まっている「市民活動支援センター」として、都城市民会館のオマージュ再生での整備を提案します。
 オマージュ再生は、ただのハコモノ建設とは異なり、これまで会館が市民とともに築いてきた歴史、価値、人々の想いを継承し、新しいシステムで未来につなぐという意味をもちます。

 また、「メタボリズム」を21世紀型の理論へと更新させ、世界に再発信する好機ともなるでしょう。都城市民会館のオマージュ再生には、建築・産業・教育・観光など多角的でかつグローバルな意義が発生するにちがいありません。

 建築の専門家でも行政マンでもない私ですが、「メタボリズム」と「都城市民会館オマージュ再生」について、考察を試みたいと思います。そして、保存運動の経緯なども一市民の目線で綴っていきたいと思います。

 会館が解体された今も、私の中で保存運動は続いています。保存運動を支えて下さった多くの方々に改めて敬意を表し、オマージュ再生という再挑戦へのご参集を期待したいと思います。



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