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#4 風邪診療について考えよう

だいぶ寒くなってきましたね。
みなさん元気にすごしていますか?
喉が痛い、鼻水が出る、咳が出る。
風邪をひきやすい季節になってきました。

ということで、最近いろいろな病院にかかっている人の
お薬手帳をみると、抗生剤を出されていることが多い。

そこで風邪診療について考えてみましょう。

風邪診療についてたくさんの薬は必要か

2019年にAmerican Family Physicianという総合診療・家庭医療系の雑誌に風邪診療に関する最近の知見がまとめられています。

日本で使える治療で普段よく使うものだけあげると
成人の風邪で効果を認められるのは以下になります。
アセトアミノフェン(カロナール):発熱に伴う不快感の軽減、鼻詰まりの短期的な軽減をする可能性がある。
イブプロフェン:頭痛、耳の痛み、筋肉痛、関節痛、くしゃみの軽減

子供の風邪の場合
大人と同様:アセトアミノフェン(カロナール)とイブプロフェン

大人と違うのは 
生理食塩水による鼻洗浄が有効です。1日6回使用すると鼻の分泌物や鼻づまりが早く解消されると言われます。(大人の場合は慢性副鼻腔炎では有効ですが、風邪に関しては効果が証明はされていません。)
去痰薬の一部が2歳以上の子供で有効な場合があります。

補完療法としてはメントールやユーカリオイル(もちろんスキンケアなどに使えるもの)を含む軟膏を子供の寝る前の胸や首に塗布すると、鼻詰まりが緩和され、夜間の咳の頻度や重症度が軽減されると言われています。
メントールは鼻の症状には効果はありますが、咳には効果はないようです。
2歳以上で安全に使用できます。
寝る前のハチミツは咳の頻度と重症度を低下させる可能性があります。ただ注意が必要なのは12ヶ月未満子供にはボツリヌス菌の感染を起こす可能性があるので与えない様にしてください。

風邪では抗生剤、抗ウイルス薬、ほとんどの咳止め、抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬)、ステロイドの点鼻薬などが効果がなく、さらには害になる場合がある。

抗生剤

抗生剤はウイルス感染の風邪では意味がなく、何の役にも立たない。
副鼻腔炎でも初期には必要なく、5日間ほど症状が持続する場合に時折利用することがある程度。
中耳炎でも軽症の場合数日は抗生剤なしで経過観察し改善することも多い。

風邪症状で抗生剤が本当に必要な場面は溶連菌性咽頭炎の特殊な場面であることを知っておいてほしいです。

抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬)

単独で使用した場合、大人でも子供でも症状を和らげません。
子供の場合は一部の抗ヒスタミン薬は熱性痙攣のリスクを高める可能性があります。普段使っている人がやめましょうというわけではないのでかかりつけの先生とよく相談して必要な方飲みが使うというのが良いでしょう。

シンプルな処方の医師ほど考えている

(個人の見解です)
 風邪に対して効く薬がほとんどないということがわかるでしょうか?
 風邪に関しては薬が絶対必要、劇的な効果があるというわけではないので、もう少し「自分自身の治す力」を信じて対処してもいいのではないかと思います。
 風邪診療には、いろいろな風邪の診療と今わかっている風邪の薬の効果を考え、使わないのではなく、適切に薬を使っていくためには患者さんへのメリットとデメリットを考慮する必要がある。
 医師の心配、患者さんの心配を薬で解決しようとすることは風邪診療についてはデメリットが大きい場合が多い。
 風邪診療の最前線であるプライマリ・ケア(日常的にかかる病院)の現場では、風邪に関して言えば「シンプルな処方を意識しながら、処方について患者さんと話し合う医師ほど患者さんのことを考え、プロ意識がある」と言えるのではないかと感じている今日この頃です。 



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