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旧市街のソバ屋とオンナ/『闇ソバを啜るオンナ達の蠢き』

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絵に題があった方がいいと思って付けてみました。ウゴメキ、です。凄い字だな。
ここもソバのことは前に書きました。夜だけ出現する黒鶏肉ハーブ煮込み半ナマインスタント麺の名物店Hàng Bồ/ハンボー通り24番地付近のMì Gà Tần/ミーガータンです。
毎夜暗くなってから、お客が来るとその都度プラスチックの幼稚園椅子を並べ、それによって空間としてのソバ屋ができ上ります。

旧市街の道は広くないのでダイニング環境としては多少快適さに欠けます。
一応車道にはみ出さずに営業していますが、歩道、つまりはバイク置き場でありゴミ捨て場であり調理場であり、また巨大街路樹の根の生育場である細長い場所は、どこかの町のカフェのような優雅な空間にはなりません。振り向けばタイヤ。
ただこれこそが混沌の海の波間を漂うかのようなハノイ旧市街での夕餉の団欒。座れるだけマシと思いましょう。

客席は1列に道路と平行に並ぶので、増えてくると幅がどんどん伸びていきます。おそらくいくらかのカネを払って隣近所の店との間で、そしてコーアンとも話が付いているんでしょう、数十メートル先まで延々と続きます。
配膳スペースは交差点の角の木の下にあります。虫が時々落ちてきて、、
どこかの建物と建物の間の路地の奥にも煮炊き場があり、そっちは完全ブラックボックスキッチン。知らぬがホトケ。

ソバはお盆ごと椅子の上に置かれます。椅子よりお盆のほうが大きいので、スープを飲むのに丼を持ち上げたりするとバランスを崩してお盆がひっくり返る危険があります。
そんなこともあってかベトナム人はスープを丼からじかに飲むことはしません。マナー違反です。スプーンですくって飲みます。ニッポン料理店でも味噌汁をスプーンで飲みます。見てるこっちは麺食らいます。

黒鶏肉は骨ごと煮込んでいるので身を口の中で仕訳けながら食べ、骨はお盆の上に出します。ベトナム人は実にキレイに食べます。身がまったく残らない。
ニッポン人はお上品ぶってティッシュの上に出して包んだりしますが、それをやってはいけません。残飯は集めて豚の餌にするからです。残飯回収業の人が縦に細長い専用容器を持ってバイクで集めに来ます。ティッシュが混じるとまた仕訳けなきゃならない。ティッシュや爪楊枝はゴミ箱か地面に捨てます。
いろいろと郷に入っては郷に従えなので、こういう店はベトナム人と行くのがいいでしょう。

オンナの人が多いのもこの店の特徴で、薄暗がりの旧市街の道端で、座の低い幼稚園椅子にスカートの裾を気にしながら器用に座り、骨付き鶏肉をこれもまた器用に食べる姿は絵になります。
こっちは外灯がまばらで道路上はケッコウな暗さです。バイクのヘッドライトが自己の存在を他に知らせるという以上の機能を果たしている。
客席部分には店が独自に照明を点けて、テーブルは鶏の骨と木の枝が見分けられるくらいの明るさです。

道端で若い男女がうごめいている感じが伝わるといいんだけど。

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