【新幹線メソッド】集中力を持続させる方法

電車運転士にミスは許されない。高速で走る新幹線は尚更だ。

ときには3時間以上ぶっとおしで運転することもある。もちろん1秒単位の高度な計算をしながらである。頼れるのは己の技術のみ。たったひとりで安全と安定を両立させなければならない。運転士は孤独なのだ。

その技術を支えるのは集中力だ。

安全と定時運転という結果は、集中力によって達成される。まあ、ずっと集中していることはできないわけで、ある程度の強弱はあるハズだ。
しかし、プロである以上、最高のものを届ける義務がある。集中力を持続させるための努力は必須だ。

キーワードはウィルパワー。

フロリダ州立大学のロイ・バウマイスー教授は集中力の源はウィルパワーてあるとしている。ウィルパワーは意思力。感情や意欲をコントロールするものだ。
何かを選んだり、判断したりすれば、ウィルパワーは疲弊していく。
それはちょうど、負荷をかけられた筋肉と同じようなものだ。だからウィルパワーは鍛えることもできる。鍛えるというのは総量を増やすことだ。同様のことは『スタンフォードの自分を変える教室』のケリー・マクゴニガル教授も述べている。

このことから、集中力を持続させるには2つの方法がある。まずはウィルパワーを増やすことだ。

現役運転士のころ、私が実践していたのは「姿勢を正す」ことだ。(というより運転中は動き回ることもできないからであるが)要するに、無意識下での行動を、その都度改めることが大切なのだ。これをセルフモニタリング効果という。これを繰り返すことがウィルパワーのトレーニングになるというわだ。

集中力の持続方法。残る1つはウィルパワーを減らさないことだ。

コロンビア大学教授、シーナ・アイエンガー教授の調査によると、あるショッピングモールでジャムの試食を行った。一方は24種類(試食A)、もう一方は6種類(試食B )。

もちろん客数が伸びたのは種類が豊富なAのほう。おおむね35%ほどAのほうが集客力が高かった。しかし、Aの購入率が3%だったのに対して、Bは30%のお客さんが購入したという結果となった。

このことは、提示する選択肢は、絞り込んだほうが成果につながることを示している。なぜなら、多過ぎる選択肢はウィルパワーを疲弊し減少させるからだ。ウィルパワーが一定以下もなると、先延ばしをする傾向がある。
このことは、マーケティングでもすでに実証されている事実なのだ。

加えて、人は1日に約70回の選択や決断をしていると指摘する研究もある。ならば、この70回や業務上の選択肢を少なくすることが、ウィルパワーを減らさないポイントである。具体的には行動をルーティン化させ、オートマチックに動くことである。服なども少なくするのだ。(スティーブ・ジョブズが1種類の服しか着ないことは有名。)

新幹線の運転も同じだ。たしかに高度なスキルが要求されるが、一度身につけてしまえば、あとはルーティンである。もちろん天候やお客の乗車数、遅延時分をはじめイレギュラーな対応など、同じ条件での運転はほぼ無いに等しい。

しかし、それらも含めてオートマチックに動くことはできる。実際、ほとんどの運転士は機械のように運転するハズだ。(褒め言葉だよ、念の為w)