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東京オリンピック前に、村上春樹著「Sydney!」を再読してみた

東京オリンピックがいよいよ始まりますね。(書いている今日がまさに開会式)
コロナなど色々なことがあり、開催も1年延期し開催にあたっても色々なことが起こってきていますが、それでも遂にオリンピックか、と思うと、徐々になんというか高揚感が高まってきています。

今から21年前に開催されたシドニーオリンピック。それについての手記で、村上春樹さんの著作「Sydney !」があります。個人的にこの本が好きで、たまに読み返したりしていましたが、今回東京オリンピックの開催にあたって今一度読み返してみました。各回のオリンピックには、個人的に記憶に残っていることや印象などありますが、そういう個人的なことを除いて、オリンピックってどうだったのか?を感じる手記としては、なかなか素晴らしいなと思っています。今回、再読してみて感じたことを列記してみたいと思います。

スマートフォンはまだ存在しない

2000年ということで、スマートフォン誕生前ですね。文中でも、今で言うガラケーは登場しますが。
スマホが出てこないというだけでなく、今当たり前に人が行ってるスマホを使った行動が、その時はしてないということですね。特に、人が待っている場面なんかで、スマホ見て待ってる、というシーンがないので、それが今となっては意外に思えます。

SNSもまだ存在してない

同様に、TwitterもFacebookもInstgramもないですね。村上さんご自身も、昨日の競技の結果を確認するのに、新聞で見たりしていますね。
今だったら、大会の様子などは、メディアでの報道以外に、選手とかその地元の人のSNSの投稿なんかを参照すると思うんですが、この時はメディアでの報道からいろいろ知る、という形だったかと思います。この「Sydney !」も、追ってではありますが、シドニーオリンピックはどんなだったかを知れるものではありました。

商業主義の影響はいろんなところに

今のオリンピックでも、色々言われているところではありますが、このシドニーオリンピックでも現れているところはあります。
象徴的なのは、以下のエピソードですね。

僕は一度バッグの検査の時に、「これはラップトップだね?」と尋ねられて、「ノー、これはペプシだ」と答えた。その場で撃ち殺されたりはしなかった。大笑いされただけだった。

これは、大スポンサーであるコカコーラ社が、会場のドリンク類ほとんどを牛耳っていて、持ち込みのドリンクにも色々と文句をつけている、という報道に対しての村上さんの皮肉を含んだ返しです。
他にも、同様にハンバーガーなどの食品を販売しているマクドナルドが、他の飲食店のメニューにケチつけて売るのを辞めさせたり、オフィシャルのマスコット以外のぬいぐるみを選手が持っていたら、それを持つなと通達を出した話などが出てきます。

今回の東京オリンピックでも、下記のような話がありましたね。

別に言われたわけではなく、学校側が忖度して言った可能性もありますが、シドニーの時のエピソードを踏まえると、なんか言われた可能性もあるような気もしています。

スポンサーの力は大きく、シドニー以降それが加速しているのは間違いない現状ですが、それがオリンピックの理念と本当に合っているのか?が一番重要かと思います。

オリンピックはどうあるべきかの提言も

僕のささやかでシンプルな提案は、競技種目を今の半分に減らし、会場をアテネ一ヶ所に固定してしまうことだ。サッカーとテニスと野球とバスケットボールは種目から外す。言い換えれば、プロのリーグやトーナメントが存在するものは、あえてオリンピックに入れる必要はないということだ。
高校野球だって毎年甲子園でやっているけど、何か問題がありますか?ないじゃないですか。アテネはいいところですよ。マラソンコースだって、常にオリジナル・マラソンコースでやれる。素晴らしいじゃないですか。

この提案には、個人的に本気で賛成です。もう商業主義にこれ以上に取り込まれるのを防ぐには、シンプルな作りでやるしかないと思います。(という観点で、東京オリンピックにもそんなに賛成ではなかった)
現実には、また持ち回りで行われていくように思いますが、何か弊害が出た時、またはその前に、原点に立ち返るようなアクションがあってもいいのではと思います。

それ以外の興味深いトピックなど

オリンピック日誌以外にも、簡単なオーストラリアの歴史とか地理とかにも触れられていましたが、買って読んだ当初から、私が気になっているのはこれ。

ところが、ソルティーくん(ソルト・ウォーター・クロコダイルというワニ)は、人間を見かければ、100パーセント反射的に襲ってくる。こういう人間にとって本質的に危険で致死的な動物は、世界中探してもあまりいない。挑発されなくても人間を襲う動物は、コイツを含めて地球上に2種類しかいないということ。

2種類しかいない挑発されなくても人間を襲う動物、というのが超気になりますね。色々調べたこともあったのですが、依然分からないままです。
しかし、海に住むワニがそれとはかなり怖い。オーストラリアに行ったときにこの種類じゃないワニを見ましたが、いやもう恐竜?というくらいの存在感でした。それと同じワニで100パーセント反射的に襲ってくるものがいると思うと、それはなかなかの恐怖だなと思いました。

まさにここからオリンピックですが、今回の東京オリンピック開催にあたって、色々あったことについて考えるだけでなく、自分にとってオリンピックでどんなのもので、それでどう楽しんで行くんだ?ということを考えてもいいかなと思いました。
オリンピックがどういうものかを、テレビとかネットの情報だけでなく、実際肌で触れた貴重で読んでて楽しい資料という意味でも、これからもまた読んでいきたい本だなと思いました。

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