見出し画像

童話【秋の風にのって】(幼年向け)

 

©️白川美古都


P1

 

 今日はえんそくだ。
 学校から歩いて公園にきた。
 
 アイは、とうめいなビニールぶくろをにぎりしめている。

 えんそくには、宿題がある。

「秋をいっぱい、あつめてきてね」
 先生は言った。

「秋って、なぁに?」
 クラスの男の子が聞いた。

「みんなで考えて。ただし、木の枝を折ったり、花をちぎっては、ダメですよ」

 アイは、友だちのユナを見た。
 ユナは、木の下のおち葉や、どんぐりをひろっている。



P2



 アイも、まねすることにした。
 赤い葉っぱ、黄色の葉っぱ、とがったどんぐり、まるいどんぐり。

「アイちゃん、マネしたらダメ!」
「えーっ、そんなぁ」
 まわりのみんなも、色付いたおち葉をひろっているのに。

 アイはこまった。
 ユナからはなれて、秋をさがす。

 丘の上の木のうしろをのぞくと、
「まつぼっくりだ!」
 まつぼっくりを見つけた。

 みんなが、アイをかこむ。
「すごく大きいね」

 ユナもちかづいてきた。
「アイちゃんだけずるい!」

 先生もやってきた。
「あら、すてき!」

 アイはうれしくなった。



P3


 まつぼっくりのカサのすきまから、うすい紙のようなものが出ている。
「これ、なんだろう?」

 とつぜん、風が吹いた。
 ヒューッ!
 うすい紙が空高くまいあがる。

「あれは、まつぼっくりの種よ。ひらひらしているのは、種についた羽。遠くに飛んでいくために羽がついているの」
 先生が教えてくれる。

「すごい! まだあるよ!」
 アイは、そっと、カサのすきまから、まつぼっくりの羽をひっぱった。
 細長い羽のさきが、丸くふくらんで種になっている。

 また、秋の風が吹く。
 手をはなすと、まつぼっくりの種は、旅立った。

#童話 #読切 #言霊さん #言霊屋

〜創作日記〜

私が子どもの頃の遠足は、いつも近所の公園でした。
その公園が家の近くだったので、
なんか遠足という感じはなかったですね。
今の子はどこに遠足に行くんでしょうね。

イラスト:sikiteiirodorian様

新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。