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童話【シラタマホシクサ】(幼年向け)


©️白川美古都

イラスト:©️まえだみちこ様


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 山のふもとの湿原に、シラタマホシクサが咲いています。
 ホシクサたちは、細くて長い茎をのばして、おしゃべりちゅうです。

「お星さま、まーだかな?」
「まだまだだわ」

 青い空で、お日様がわらっています。

 ホシクサたちは、星にあこがれているのです。
 自分たちの名前は、空の星にちなんでつけられたと知っています。

 星のような金平糖みたいな花だから、シラタマホシクサ。
 みんな、この名前が大好きです。


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「星は見えないだけで、お空にいるわ」
 物知りのホシクサが答えました。

 と、そこに、
 風の子がやってきました。

「星はホシでも、にせものの星だ」
 風の子は、いじわるをいいました。

「ぼくが見たほんものの星は、もっと、うーんと、きれいだった」
 風の子の言葉に、シラタマホシクサはかなしくなりました。

「ほんものをちかくで見たことがあるの?」
 
 ホシクサたちがたずねると、
「見たことがないのなら、見せてやるよ」
 風の子は、シラタマホシクサの花を、ひと吹きで、ちょんぎってしまいました。
 
 ぐんぐん、風をまきあげて、空へとばします。

「きゃーっ!」
 ホシクサたちは悲鳴をあげました。

 とちゅう、鳥のむれとあいました。
「うわぁ、きれいだな、たくさんの星たちがのぼってくるよ」
 鳥たちは口々にいいました。

 シラタマホシクサはうれしくなりました。
 そして、ここまでのぼったら、もっと、ほんものにちかづきたいと願いました。

「みんな、からだをよせて、風にのるわよ」
「がんばれ、がんばれ」


P3


 ホシクサたちは声をあわせて、あこがれの空を目指しました。

 そして、日がくれるとき、ホシクサたちは、ほんものの星を見たのです。

 風の子は、あやまちにきがつきました。
 空をのぼるシラタマホシクサは、夜空の星たちとおなじくらい、うつくしかったのです。

「にせものなんていってごめんよ」
 風の子は、ホシクサたちをつつみこむと、もといた湿地へおくりとどけました。

「いいえ、空へつれていってくれてありがとう。まるで夢みたい!」

 夜空で、星たちがわらっています。


#童話 #短編童話 #読切 #言霊さん #言霊屋

〜創作日記〜
この童話のテーマは「シラタマホシクサ」でした。
これを書くにあたって、本物の植物を見に行きました。
絶滅危惧種なんですけれど、
意外と近くにあって、幸運にも触れることができました(喜

画像:uzumaki54様

新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。