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童話【こんな話を知っているかい?】(幼年)


©️白川美古都


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挿絵©️高藤暁子先生

 シギは旅鳥です。

 冬はあたたかい南の国のオーストラリアやニュージーランドですごし、春に日本にやってきます。

 夏はすずしい北の国のシベリアやアラスカですごし、再び秋に日本にたちよります。
 そして、冬をこすためにあたたかい南の国へとびたちます。

 つまり、一年間に二回、日本にちょいとたちよるのが旅鳥です。


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 シギ吉もそんな旅鳥の一羽です。
 旅のとちゅうに干潟にまいおりました。

「あぁ、はらへった」
 シギ吉は長いクチバシを泥につっこんで、エサをさがしだしました。
 羽毛の色は、茶色と灰色で目立ちにくい色をしています。

「おっ、カニだ」
 小さなカニを見つけて土の中からひっぱりだして、さっそく食べます。
「うまいうまい」

 シギ吉は、夢中でエサを見つけては食べています。
 すると、クチバシのさきに、つるんとしたかたい物がさわりました。
「大きな貝だ!」

 シギ吉は、クチバシの先できように貝をはさみました。
 あとは、貝の中身をひっぱりだして食べるだけ……。
 と、つぎのしゅんかん、
「あいたたた!」
 貝がシギ吉のクチバシをはさみました。
 それから、

「はーなーせー」
 貝は、低い声でうなりました。
「いーやーだー」
 シギ吉は、答えました。


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ふと、シギ吉はあるはなしをおもいだしました。

「おい、こんなはなしをしってるか?」
 シギ吉は、はなしだしました。

「一羽の鳥が、クチバシで貝をはさみました。貝は食べられまいと、ふたをかたくとじました。あらそっているところへ漁師がやってきて、鳥と貝をつかまえてしまいました」

 貝はぎょっとしました。

「そこでだ。一、二の三で、おたがいをはなさないか?」
 シギ吉のていあんに、貝もさんせいしました。 
 とびすさるように、シギ吉と貝ははなれました。

 シギ吉は、辺りを見わたします。
 
 漁師のすがたは、ありませんでした。
 お日さまがわらって、しずんでいくところでした。

#童話 #幼年童話 #短編読切 #言霊さん #言霊屋

〜創作日記〜
テーマは「シギ」さんでした。
お話を読むことで、生き物に興味を持ってもらう、
と言うのが童話のテーマです。
生き物を描くのは好きで〜す。

イラスト:syudynote様

新人さんからベテランさんまで年齢問わず、また、イラストから写真、動画、ジャンルを問わずいろいろと「コラボ」して作品を創ってみたいです。私は主に「言葉」でしか対価を頂いたことしかありませんが、私のスキルとあなたのスキルをかけ合わせて生まれた作品が、誰かの生きる力になりますように。