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銀の鈴社 子どものための少年詩集「2010年〜2019年」

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銀の鈴社 子どものための少年詩集「2010年〜2019年」の10冊に掲載させて頂いた作品です。その内、2014年の作品【今日はこのままおうちにいて】は、作曲家:信長貴富先生により… もっと読む
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記事一覧

少年詩【ぼくは、今】

重い荷物しょって 歩道橋で立ち止まる ふと 空を見あげて 橋の柵のさらに上まで 高いフェンスが 張られていることを知る 駅のホームで切符を買う 線路とぼくの間に 黄色の線が横たわり 頭上からアナウンスが流れる おさがりください 通過電車が風になる 山のふもとで少し迷い 道とも呼べぬ道をいく 鳥が鳴き 花が歌う 山頂らしき岩に腰かける 崖の手前には もう フェンスはない アナウンスは聞こえない ぼくは、今 ナイを知り ぼくは、今 ここに在ることを知った Carrying

少年詩【君はマンタを知ってるかい】

君はマンタを知ってるかい 傷だらけのマンタを知ってるかい 青い海をとぶように泳ぐ マンタのこころを知ってるかい 人をもつつむ大きな体に するどい尻尾を持っている 強くて自由で怖いものなしの マンタの腹をのぞいてごらん 小さな魚がかくれている 石つぶての降る夜は マンタは魚をかばいたくて 大きな体でだきしめる 刃の吹く日には マンタは魚をまもりたくて 大きなこころで立ちはだかる 君はマンタを知ってるかい マンタの尻尾には毒がない 闘うすべなく打たれつづける 傷だらけのマ

少年詩【こころのありか】

きみのこころはどこにある? しんぞうかい? 頭の中かい? それとも きのう買ってもらった おもちゃの中かい? 鳥のこころはどこにある? 羽のおくかい? 目の玉のあいだかい? それとも 腹の下であたためている 卵の中かい? ぼくのこころはどこにある? 言葉をつづるこの指かい? 言葉をえらぶこの頭かい? それとも 言葉をえらんで 言葉をつづる ぼくのからだすべてかい? わからないと頭を抱えて しんぞうの音をきく どくん どっくん この音が ぼくのこころかもしれないし このな

少年詩【シーグラス】

砂浜にひかるガラスのかけら 水色にひかるガラスのかけら 白い波にあらわれて どこもかしこもつるんつるん もとはといえば パリンと割れたガラスの破片 角のとがったガラスの刃 たくさんの時を経て 長い道をこえて まんまるになって ボクの海にたどりついた 砂浜にひかるガラスのかけら 水色にひかるガラスのかけら 刃からシーグラスと名をかえて 夢を叶える力があるという ボクは今 シーグラスを探している いつも泣いている あの子に贈る為に Shards of glass shi

少年詩【壊れかけたこの星で】

壊れかけたこの星で ぼくのどける石ころが あとから この道を来るいのちに どうか やさしくありますように ぼくの引き抜く草が あとから このやぶを渡るいのちに どうか やさしくありますように ぼくのまく花の種が あとから この星に生まれるものに どうか やさしくありますように 壊れかけたこの星で ただ いっとき どうか やさしくありますように On this crumbling planet, May the smooth pebbles I clear away

少年詩【今日はこのままおうちにいて】

窓の外はすごく雨が降っていて  出たならぬれてしまうから 今日はこのままおうちにいて パンケーキを焼こうと思うんだ   ドアを叩く風はらんぼうで 開けたらお皿が割れそうだから  今日はこのままおうちにいて パンケーキを焼こうと思うんだ 小麦粉と卵と牛乳と 体にいい茶色のお砂糖を入れて きみの大好きな        パンケーキを焼こうと思うんだ 風も雨もひどいから きみはぼくを訪ねてこないけど 膝を抱えて過ごすより パンケーキを焼こうと思うんだ もしかしたら パンケーキが

少年詩【ダンディライオン】

道ばたに生えた きいろのタンポポ くつにふまれて ぺっちゃんこ もうすこしはしに 咲けばよいものを ちょいと はみだしたものですから アスファルトに生えた きいろのタンポポ 車にひかれて ぺったんこ もうすこしすみに 咲けばよいものを ちょいと 目立ってしまったものですから 負けるな 負けるな タンポポ 負けるな おまえのなまえは ダンディライオン 強いライオンの牙だろう くつに負けるな 車に負けるな なまえを背負って ぐんとむねをはれ The yellow da

少年詩【じいちゃんの桜の木】

じいちゃんの桜はいつも夏 ぎらぎらの太陽 ギザギザの葉 むねいっぱいの緑のにおい 夏休みの盆休み ひかりのなかで セミが鳴く ぎーんぎんぎん じいちゃんの桜はいつも夏 ざぶざぶの雨 ずぶぬれのボク 背中をつつむ緑のにおい ある日の夕立のなか セミが消える しーんしんしん じいちゃんは夏に死んだ 葬儀のあと 緑のにおいに顔をあげる ボクは 今 じいちゃんの桜の木の下に 立っている Grandpa's cherry tree always has the bright

詩【星の数】

いくつめの地球の上を ぼくは歩いているのだろう チリからはじまり まんまるになったこの星は 一つめであるはずがないわけで いくつめの地球の上を ぼくは走っているのだろう かちんこちんに 凍りついたこの星は 二つめであるはずがないわけで いくつめの地球の上を ぼくは生きているのだろう 星の数はかぞえられない ゆびさすはしから またはじける また生まれる Which Earth am I walking upon? Starting from Chile, Thi

詩「一番近くにあるお星」

野うさぎの兄弟が 夜空を見上げてとびはねます どの星がお母ちゃんだろう? ふたりのお母ちゃんは すこしまえに死にました 星になって そばにいるよと ことばをのこして あれかな? しろくぼうっとひかる星 でも とおいね うん とおいね と 大地がぐらぐら ゆれました 野うさぎの兄弟は 地面にぴたとはりつきました 星の音がきこえてきます ぼぉーっ ぼっ ぼぉーっ ぼっ お母ちゃん みつけた うん みつけた The brothers of wild rabbits