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オリジナルのYA短編読み切り小説(フリー素材:発表済み)

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愛知県教育雑誌「6年分」(紙媒体)の連載読み切り小説です。朗読、歌、動画の原作などの二次使用につきましては無料です。©️白川美古都の記載だけお願いします。また、使用にあたり必ずしも…
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#小説

YA【最初の一歩】(3月号)

 月ノ島中学校は校舎を囲むように桜の木が植えられている。  正面の校門から裏門まで立ち並…

YA【夢の通り道】(2月号)

 五木詩音は新築マンションの最上階のベランダから、街の光を眺めている。去年は嵐のような一…

YA【月はそこにいる】(1月号)

 月ノ島中学校には発足二年目の雅楽部がある。  杉山玲子は発足当初に入部した一人だ。きっ…

YA【大切な風景】(12月号)

「大晦日、もうすぐだね」  川本幸樹は、同級生の池下由奈にペチンと頭を叩かれた。一人、足…

YA【夢みる勇気】(11月号)

 月ノ島中学校と小学校の間の橋の上に、松岡美智は立っている。ギザギザした細い落ち葉と小さ…

YA【風を味方に】(10月号)

   月ノ島中学校の十月は、球技大会で盛り上がる。  今年、三年生になった岩崎涼は三回目…

YA【太陽に向かって】(9月号)

   夏休みが終わり九月になった。  月ノ島中学校は本日、授業参観日だ。一年二組の教室の後ろに親が集まっている。教室内の空気が僅かに緊張している。  高橋木葉は自分の席から恐る恐る視線をやる。父親の姿はまだない。  前回、一度目の授業参観は、両親共に仕事で忙しくて来られなかった。  二度目の授業参観は、やっぱり仕事で忙しい母に代わって、父が行くと言いだした。 「別に来なくていいから」  木葉は断ったのに、父は行くと言って譲らなかった。  しかし、今日は晴天だ。  父は土木

YA【君が好きだ】(8月号)

   田村健斗は朝からもう何度も空を見上げている。  晴れた。  天気予報では降水確率0パ…

YA【夢も希望もありまして】(7月号)

 夢も希望もありゃしません!  七夕祭りの短冊に筆ペンで書き付けられた文字だ。輪郭は震え…

YA【優しい雨】(6月号)

   月ノ島中学校一年生、貴田周は傘をさしたまま通学路でつっ立っている。たった今、女子に…

YA【透明なゴール】(5月号)

   今日は、毎年恒例の月ノ島中学校のマラソン大会だ。  全校生徒が参加する。  中学校の…

YA【満点の星の夜に】(4月号)

   月ノ島中学校は入学式、始業式と終えて、通常の授業に入った。  如月魁人は二年生の授…

YA【逆さまエリア】(3月号)

 月ノ島中学校の裏門のそばに、楕円形の花壇がある。  今、五十本ほどのチューリップは満開…

YA【どこへ帰ろう】(2月号)

   浜島瑠衣は、最寄りの駅のさびれたフェンスにもたれている。コートのポケットの中には入場券が入っている。瑠衣は電車には乗らない。  ベンチには、親友の佐伯幸助が、どかっと腰かけている。基本、この駅には普通電車しか止まらない。一時間に数本のみ、準急電車が止まる。その準急を待っている。  幸助は、月ノ島中学校の二年生にならずに転校する。  瑠衣が幸助の転校を聞かされたのは昨日だ。  しかも、ポストイットで。  水色の薄っぺらな紙には鉛筆で、俺、転校するから元気でな、と書かれ