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今日はなんとしても、具志堅隆松著『ぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤ―」になったわけ。』を紹介したい

ニュースでは、6月23日が「沖縄慰霊の日」だということを知らない人が日本人の7割にのぼるとしきりと言っていた。

そらそうやろ?年に一回、この日だけに話題にするのだから。だって、辺野古のことも高江のことも、今離島に次々に作られている物騒な軍事施設のことも、普段ニュースにならないじゃない。

慰霊の日を知らない人が増えてることが問題だとか言っている暇があったら、今、慰霊の日までの5日間、ハンガーストライキをしている具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さんを取材してほしかった。今回のハンガーストライキは初めてではなくて、2度目だからお身体のことも心配だ。

具志堅隆松さんは、ガフマヤーと言われる遺骨を掘る人だ。沖縄戦で亡くなり放置されている遺骨を掘り、ご家族の元にお返しする活動をしている。その具志堅さんの訴えは、辺野古新基地建設の埋め立ての為に、遺骨の含まれる沖縄南部の土を使わないでほしいということだ。

県は厳しい条件をつけ、業者も遺骨があると思われる表層の土はどかしておいて、後で戻すということを言っている。

しかし、具志堅さんが言うには、遺骨は表層の土だけでなく地中深くまで含まれるし、第一土を掘り返すと、遺骨収集が出来なくなってしまうのだ。

遺骨収集は、状態をよく観察することから始まる。遺骨の身元を特定するために、<遺骨から得られる情報><持ち物から得られる情報><出土場所から得られる情報>を手探りで集めてどんな人物だったかを浮かび上がらせるという。遺骨の傍に名前入りの万年筆があるかもしれない。なのに、ショベルカーで掘り返してしまっては、大事な証拠がなくなってしまう。どれがだれの遺骨かもわからなくなってしまう。

ネット番組ではハンガーストライキ中の具志堅さんのインタビューを見ることが出来た。具志堅さんは「辺野古の埋め立てに使うからとかいう問題はさておき、なんに使おうと遺骨に対する冒とくだということ。許されないことだということをわかってほしい。」と訴えていた。もちろん基地建設に使われようとしていることが、戦争によって亡くなった方に対する冒とくであることは確かなのだけれど、辺野古基地建設賛成の人だって、こんなことは許されないとわかってほしいという思いが溢れていた。

この本を読むと、遺骨が具志堅さんに見つけてもらって喜んでいるようにさえ思える。具志堅さんは遺骨の状態から、どのような亡くなり方をしたのかを推測してゆく。遺骨は多くを語るのだ。水筒に伸ばした手の骨。上半身が吹き飛んでいることから手りゅう弾で自決したと思われる遺骨。うつ伏せで何体も並んで出て来た遺骨、その骨の向きや状態からケガをした人を寝かしていたと考える。などなど。

軍人が身に着けている千人針。5銭玉を縫い付けたのは、死線(4銭)を超えてほしいという祈りが込められていたという。

そんな、遺骨が語る戦争を知ってほしい。国の行った戦争によって、犠牲になった人々のことを、もっと私たちは知るべきだ。生きようといして、生きられなかった人たち。国によって殺された人たち。そして殺されてなお、捨て置かれる人たちのことを。

ニュースは口をそろえて、「戦争の記憶が薄れているなか、どう子どもたちに伝えてゆくかが課題です」と言う。そんなこと言ってないで、人手も時間もかかる遺骨収集を一緒にして、戦争によって殺された人の声を聞くべきだろう。それを実践してきた具志堅さんの声を聞くべきだろう。


もう一冊、あわせて紹介したい本がある。

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『水木しげるの戦場』だ。漫画なので、戦争を想像も出来ない私たちに、絵で見せてくれる。片腕を失っても、決して死ぬものか?と帰ってきた水木しげるさん。命掛けという言葉があれば、この本こそ、命を掛けて書いてくださったと思う。しかも戦争を知らない私たちの為に。

P14「当時の教育は、小学校のころから『教育勅語』とか『修身(しゅうしん)』~中略~中学に入ると『軍事教練(くんじきょうれん)』というのがあり、各中学(現在の高校)には軍人が配属され、”教練(きょうれん)”という名で奇妙な心にさせられた。」

P199「軍隊では兵隊は馬も同じだった。下らん事で、いじめ殺された様な兵隊は数え切れなかったろう。どうしたわけか、上の階級になる程、その自覚がない。下々のことは理解できなかっただろう」

奇妙な心にさせられた軍人が、下々のことが理解できなくていじめ殺す。。。

なにかに似ている?

今現在起こっていることじゃないか?私たちは、いじめられているけれど、上になるほど、そのことが理解できない。「下々の者が生きようが死のうが知ったこっちゃない。」上から聞こえてくるのはそんな言葉だ。そして最後にはこう言われる、「役立たずは死ね!」と。

水木しげるさんが、文字通り死ぬ思いをした戦争を、命を掛けて書いてくださった『水木しげるの戦場ー従軍短編集』<中公文庫>をぜひ読んでほしい。


最後に、『ぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤー」になったわけ。』から、一文を抜き出したい。

P3「若い人たちに伝えたいことがあります。これからの長い人生、力の強い者についていくのではなく、弱い者に寄り添い、ともに歩んでください。それが社会をよりよくするだけでなく、人生をきっと充実したものにしてくれるはずです。」

ぜひ、読んでほしい。

そして図書館にリクエストもお願いしたい。


https://tver.jp/corner/f0077014
「報道特集(6/19放送)・沖縄戦と遺骨」で具志堅隆松さんの活動が紹介されています。 
※6月27日(日)14時配信終了予定までに見れます


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