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頭足類文学

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#創作大賞2023

耳を盗まれる

耳を盗まれる

 朝目覚めると、右耳が盗まれていた。
 ベランダの掃き出し窓を開けたまま寝てしまったようで、そこから侵入されたのだろう。部屋の中に荒らされた形跡はなく、右耳だけが綺麗に盗まれていた。窓から流入してきたモノラルの初夏の風の音が右脳に抜けていく。何はともあれ盗まれたのだから、先ずは被害届を出すことにした。
 「それで」
 「はい」
 「なぜ盗まれた、とお思いですか」
 「いや、普通に、盗まれたからです

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