MERCURIUS 第二話
次の朝。
冷たい雨が車のフロントガラスを叩きつけていた。しかし、天気とは裏腹に、雲の隙間からは一筋の光が漏れていた。
松山舞子は、愛車のハンドルを握りながら、信号が青になるのを待っていた。車内には、車のスピーカーを介して彼女のスマートフォンに入っている曲が流れている。流れているのは、松山の好きなバンドの新曲だ。物悲しげなメロディーがまさに今朝の空にぴったりだった。
ふと、前に目をやると、バックミラーに映る自分の顔と目があった。眉間に皺がよった険しい表情。さらに目の下に