菅総理の日本学術会議「推薦候補」6人の任命拒否は違法ではないか

日本学術会議 会員の一部候補の任命を菅首相が見送りとの報道がなされた

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201001/k10012643361000.html

加藤官房長官は、記者団が、「菅総理大臣の政治判断だとすれば、学問の自由の侵害にあたるのではないか」などと質問したのに対し、「会員の人事などを通じて、一定の監督権を行使することは法律上可能になっている。直ちに学問の自由の侵害にはつながらないと考えている」と述べました。

「これまでと同様に法律に基づいて手続きを行った」というが、法の趣旨に反した解釈であり、違法であると考える。


日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄の下にあるが、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立された(日本学術会議法3条)

内閣総理大臣の所轄の下にあるため、会員の任命こそ総理大臣がする。
しかし、政府からの独立性を担保するために、その任命は、日本学術会議の推薦に基づくと規定されている(法7条2項、17条)

今までの前例は、この条文は、政府からの独立性を担保するためにあるから、内閣総理大臣の裁量の余地はないため、推薦名簿に従って任命してきた。
しかし、今回の菅総理は、この慣例を破って、推薦名簿に記載があるにもかかわらず6名を任命しなかった。

菅総理の判断は、推薦名簿に載っているからといって全員を任命することまで義務づけられておらず、総理の裁量に委ねられているという解釈に基づくと考えられる。
しかし、法を全体的に見れば、会員の人事についても、内閣総理大臣が監督権を自由に行使できないように規定しており、任命について総理に裁量があるとは考えられない。

通常の組織であれば、任命権者は組織を統制するために、その裁量により監督権を行使し、会員を懲戒することもできるし、辞職の申出があればその意思のみで受理でき、不適当な行為があれば退職させる権限もあると考えられる。
しかし、懲戒権は規定されていない。
また、会員の辞任・退職にかかる内閣総理大臣の人事権についても制限がある。

第25条 内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があつ たときは、日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認することができる。
第26条 内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができる。

そして、法が規定している上記以外の場合には、内閣総理大臣は会員を退職させる権限は有しないのである。

このように、会員の資格を奪うことについて、内閣総理大臣の裁量の余地は小さく、必ず日本学術会議の関与が必要となる。
これは、内閣総理大臣の監督権の行使により、内閣総理大臣の意向に反する人物が排除されてしまうことや、会員が政治に忖度する言動をとることで、日本学術会議の独立性が犯されることがないように、法が担保しているためである。

この法の趣旨に沿って、任命について考えるならば、内閣総理大臣の任命は形式的なものに過ぎず、実質的な判断は日本学術会議が行うため、内閣総理大臣の裁量的判断の余地はない。
なぜならば、内閣総理大臣がその裁量により任命しないことが認められると、会員人事に内閣総理大臣の意向が反映され、結果として内閣からの独立性が犯されてしまう可能性があるからである。

結局、菅総理の、日本学術会議「推薦候補」6人の任命拒否は違法であると考えざるを得ません。
菅総理は、任命しなかった6名についても、速やかに任命すべきであると考えます。

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自分の書いたものより参考になるところが沢山あるので、メモがてらリンクを張っておきます

https://this.kiji.is/684364629570634849

https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabeteruhito/20201001-00201090/

https://mainichi.jp/articles/20201001/k00/00m/010/354000c


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