安倍政権は、適切な公文書の作成、管理、公開をするように方針を転換すべきである

※2020/5/29、ガイドライン関係について加筆しました。

はじめに

「コロナ専門家会議、議事録作らず 歴史的事態検証の妨げに」というニュースを目にしました。

驚くよりも、「やはり議事録を作ってなかったのか」と感じました。

議事録に関しては、コロナに関する実質的な意思決定機関である、非公式の連絡会議も議事録が作成されていないことも指摘されています。

記録を残さない安倍政権

後々追求される可能性のある詳細な記録を残さない方針は、安倍政権の一貫した方針になっています。

例えば、2014年に集団的自衛権の行使を認めた際は、憲法解釈変更までの内部協議の記録を残していませんでした。
加計学園問題では、国家戦略特区諮問会議に加計学園幹部が出席して発言もしたことを議事録要旨に載せず、速記録は10年間保存という義務を無視して早々に破棄しました。
首相官邸への入邸記録も早々に破棄されていますし、桜を見る会の名簿破棄も同様です。
自衛隊の日報隠蔽、森友の公文書改ざん問題も根っこは同じで、記録を出さない、見られたら困る記録は消すという精神に基づいた対処がされた結果でした。

昨年、公文書ガイドラインが改定されました。
これは、森友問題の文書改ざんの反省から改訂されたものであり、公文書管理を徹底する趣旨とされました。

ところが、記録を残さない方針は更に徹底されたおり、公文書を作成させないことだけでなく、官僚にメモをとらせない、面談時に使用された説明資料は早々に破棄できるようにする、などの対応をとらせていると報道されています。

 現に、これまでの毎日新聞の取材では、複数の省の幹部職員がこんな証言をおこなっている。

「官邸は情報漏えいを警戒して面談に記録要員を入れさせない」
「首相の目の前ではメモは取れない。見つかれば、次の面談から入れてもらえなくなる」
「面談後に記録を作っても、あえて公文書扱いにはしていない」
「幹部は面談後、記憶した首相とのやり取りを部下に口頭で伝えてメモを作らせている」

 そもそも面談記録をつくらせない、つくっても公文書にはしない──。

安倍総理は、公文書を適切に関することを徹底するのではなく、公文書として残さないことを徹底する道を選んだのです。

公文書の意義

公文書は、政府の私物ではありません。
公文書は、民主主義国家において、広く市民の共有財産であり、適切に作成・管理され、そして何よりも公開されることで、市民の政治判断の材料とされるものです。
そのため、公文書を作成するか否か、破棄すべきかを、政府が恣意的に決められるものではありません。

また、私たちが歴史から学ぶことができるのは、過去の歴史を記録した物が存在するからです。
文献資料は、最も重要な物の一つとされています。
そのため、現代に生きる我々には、後世に検証される記録として、公文書を残しておく義務があります。

今回のコロナの専門家会議の議事録は、コロナ感染の拡大のみならず、人の生き死に関わってくる問題ですので、記録すべき必要があります。
また、後世に残すべき記録である以上に、次に来る第二波に備えるために、現在進行形で検証すべき貴重な材料です。

・4日間発熱が続くまで検査できないというバカな基準が定められたのは何故なのか。
・医療現場への支援が不十分だったのは何が原因なのか。
・軽症患者を受け入れる官舎や民間施設の借り入れが遅れたのは何故か。
・検査が増えない要因は何なのか。

など、今すぐに検証をしなければならないことが沢山有ります。
ところが、詳細な議事録がなければ、この間の政府が意思決定をした根拠が不明となり、どの段階から修正をしたらいいのか確認することができません。

これは非常に大きな問題です。

民主党政権の反省


東日本大震災の時、当時の民主党政権は、震災に関する多くの会議で議事録を作成していなかったため、多くの非難を浴びました。

【参考】平成24年2月3日(金) 公文書管理委員会 第12回 議事録

○岡田副総理
最近に至って、東日本大震災に関 する記録が十分に残されていない。具体的には、5つの会議において記録の一部又は全部がないということが明らかになりました。
私もこの話を初めて聞きましたときに我が耳を疑ったわけでありますが、この法律の目的にも明らかになっておりますように、記録を残すということが、後世でそれを再評価するに当たっていかに重要なことかと。しかも、これだけの大震災、原発事故も含めて、しっかりと記録を残して、そして後々検証する。後世の検証に耐え得るだけのものが必要であることは論をまちません。しかし、それがなかったということが、残念ながら現実でございます。

その教訓から、公文書管理ガイドラインにおいて、歴史的緊急事態に指定された場合には、政府が意思決定をする会議の議事録作成などを義務づけることになっています

行政文書の管理に関するガイドライン

【参考】行政文書の管理に関するガイドライン(P13)
<歴史的緊急事態に対応する会議等における記録の作成の確保>
○ 国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項であって、社会的な影響が大きく政府全体として対応し、その教訓が将来に生かされるようなもののうち、国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急事態(以下「歴史的緊急事態」 という。)に政府全体として対応する会議その他の会合(第3及び第8の留意事項において「会議等」という。)については、将来の教訓として極めて重要であり、以下のとおり、会議等の性格に応じて記録を作成するものとする。
なお、個別の事態が歴史的緊急事態に該当するか否かについては、公文書管理を担当する大臣が閣議等の場で了解を得て判断する。

安倍政権は、新型コロナの政策決定に関する記録を残す義務を負っている

このガイドラインに従って、本年3月10日に、「歴史的緊急事態」に該当するものと閣議で了承されました。

令和2年3月10日 閣議了解
今般の新型コロナウイルス感染症に係る事態は、行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)に規定する「歴史的緊急事態」に該当するものとする。

これにより、安倍政権は、新型コロナの政策決定に関する記録を残す義務を、自らに課したのです。

 例えば、安倍晋三首相は一斉休校を要請したのは自らの「政治判断」だったと説明しているが、対策本部に先立ち首相と関係閣僚らが意見交換する非公式の「連絡会議」が重要な役割を担ったとも指摘されている。政府は「政策の決定や了解を伴う会議ではない」としているが、野党は「実質的に意思決定をする会議ではないか」と議事録の作成と公表を求めている。
 ここは会議の形式や位置付けに固執せず、政策決定に関わる政府の会議であれば、公文書の保存と公開を幅広く検討すべきではないだろうか。

さて、東日本大震災当時の民主党政権は、確かに、公文書を作成していませんでした。しかし、その重大性に鑑み、参考資料をかき集めて議事録を再生しました。そのため、完全ではないものの、当時のことを振り返り、検証することが可能です。

一方、現在の安倍政権は、平常時から公文書を後世に残すという気持ちが全くないため、危機に瀕した状況にあっても、議事録を残すべきだと指摘された後も、更には、自ら歴史的緊急事態に該当するものと閣議で了承した後でも、適切に記録を残そうとせず、民主党政権より劣った対応をしています。

結語

今まで述べてきたように、安倍政権は自分たちが問題ある意思決定したことを追求されないように、公文書を残さない、有っても出さない、早々に廃棄する方針で、政権を運営してきました。

繰り返しになりますが、公文書は、政府の私物ではなく、市民の共有財産です。適切に管理し、公開する義務があります。

安倍政権は、自分の利益のみを考えるのではなく、民主主義国家であり、更に長い歴史ある日本の最高意思決定機関であることを自覚し、適切な公文書の作成、管理、公開をするように方針を転換すべきであると思います。

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