ヒロインにはなれないけれど

いつも書き出しはどうしようかと悩んだりするのだけど、タイトルも書き出しも結局は定まらないまま私のブログは進んでいく。ブログなんて単語を使ったところでここは私の日記に過ぎないのだけれど。
それでも、こんなに素敵なことがあったんだよとか、こういうことを考えてたんだって誰かに向けて叫びたいと思うのなら、やっぱり書き出しは大事なのかなあと考えてみたり。
したんだけど、悩む時間がもったいないのでこのまま進むね。

最近買ってよかったものの話なんだけど、正確にはそれは紙の本とかものではなくて、音声データってことになるのかな。
DLサイトで購入した、いわゆる女性向けのシチュエーション音声作品。
もともと私はオタクだし、コスプレイヤーだし、BLも乙女ゲームもやりこんだことこそ少ないけど、オタクとしてはまんべんなく遊んできたほうだと思う。ただ、乙女ゲーは一度しか遊んだことがなくて、BLゲーも手を出したことはない。シチュエーションCDの方も片手で数えるくらいしか聞いたことがなかった。
そんな私がなぜ今回シチュエーションCDに関する記事を書いているのかというと、吃驚するくらいいい作品・声優さんと出会ってしまったからだ。
内容・声優さんに関しては年齢制限のかかる作品のためタイトルは伏せざるを得ないのだけど、声優さんというか役者やシナリオライターという職業がいかに素晴らしいかをようやく本当の意味で理解した気がした。

そもそも女性向けのCDは、キャラクターと自分、という前提の設定が主流だと思うのだけど、今回私が購入した作品はどれもシナリオがドンピシャ過ぎて逆に自分という人間をその世界のヒロインに置き換えられなかった。置き換えられなかったが、世界観にはどっぷり沈んだ。
基本的に私は、本を読んでもアニメを見ていても感情移入しやすく、その世界に入り込みやすい。だけど、今回は感情移入をすっ飛ばして声優さんが演じたキャラクターに引き込まれるあまり、キャラの幸せを祈り、キャラとその思い人(本来なら聞き手側)の恋路を部屋の壁に紙コップを当てて盗み聞きしているような感覚に陥った。数年前に聞いたシチュエーションCDではしっかりヒロインになれた筈なのに、声優さんの演技が素晴らしすぎてときめきによるドキドキではなく、キャラが幸せになれるかどうかドキドキしていた。つまるところ、私はヒロインになれなかったのだが、重要なのはそこじゃない。

声優さんの演技が本当に本当に素晴らしかったのだ。
心臓を搔きむしりたくなった。ヒロインより相手のキャラクターの感情に入り込んでしまってこっちがしんどくなった。いやいやいや、どういうことよというのが最初の感想。もう一度次の日に聞いてみて、何か変わるかもと思ったけどやっぱり第三者目線というか、作品を通してシナリオに引き込まれている自分に気づいただけだった。言い方は少し乱暴だけど、女性向けである時点で設定自体は聞き手側の心を揺さぶるように盛り込まれている筈だ。たとえばこれが本だったら絶対に読まなかったと思うし、アニメだとしても見なかっただろう。しかし、音源のみになった瞬間、私の視界は真っ暗になった。私自身がそこにいないものとして「彼と彼女」の行く末を見守っていた。見えてないけど。

正直、自分をヒロインとして置き換えるよりもなかなかハードな聞き方になったと思うし、スタミナ丼のようなガッツリもりもり設定でここまで聞き入ってしまうとは思ってもみなかった。私はドラマで見るような恋愛も恋愛映画自体も苦手なのだけど、ここまで他人(しかも架空)の恋愛事情に敏感になったのは初めてだ。だからこそ、最後まで聞き手を引っ張ってくる力を持つ声優さんと、ボリューム満点の設定をただのご都合展開だけに留めずシナリオを書ききったライターさんは本当にすごい。素晴らしすぎて拍手した。
ちなみにこの作品を聞いた後、夫と「キャラクターへの感情移入について」話してみたのだけど、私が感情移入するのは闇落ちか闇落ちするキャラと心中するキャラクターか、泥水をすすっても這い上がるタイプの三種類だったため、もう少し想像力の補完をしないと優しい普通の女性にはなれそうにないなと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?