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オープン・ダイアローグはどこに効いているのか?

”オープン・ダイアローグ”という語の表すもの

オープン・ダイアローグ(OD)という語が広まっているが、その意味するものが複数の次元にまたがることはあまり理解されていない。

日本でいうODには、技法、体制、思想の三つの次元がある。

技法とは、システム論的家族療法に基盤を置いた、集団精神療法としての技術である。

体制とは、複数の治療者チームによる自宅等へ訪問による介入と、要請に対して即時(24時間以内)に対応する、サービス提供体制である。

思想とは、患者・治療者の対等性や、患者がいないところで患者の話をしないといった、治療に臨む患者と治療者が共有すべき心構えである。

ODに批判的に言及する場合、多くは技法と思想についての批判や懐疑である。ODを推進する側も、体制の重要性について、あまり語られないことが多いように思う。その理由は、体制の構築が最も難易度が高いため、技法の普及を優先しているから、と思われる。しかし、もしODが有効なのもとすれば、最も重要なのは体制の構築にあるように思う。

オープンダイアローグの”効果”の源泉はどこにあるか

ODの創始者のひとりである心理学者セイックラによる論文を参照する。

西ラップランドにおける自身の研究について、統合失調症患者の障碍者手当受給率と再発率などがODでは低いことを挙げ、その理由として以下のように説明している。

A possible reason for these relatively good prognoses was the shortening of the duration of untreated psychosis (DUP) to 3.6 months in Western Lapland, where the network-centred system has emphasized immediate attention to acute disturbances before they become hardened into chronic conditions. DUP has been reported to vary between one to three years in a treatment-as-usual setting(Larsen et al., 1998; Kalla et al., 2002).

通常1から3年のDUP (Duration of untreated psychosis: 精神病未治療期間)を、ODが3.6か月まで短縮することで、統合失調症予後が改善しているという考察だ。(Seikkula. Journal of Family Therapy (2008) 30: 478–491)

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