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研究者日記 Day7

1週間…続きました。

トップの写真は、韓国チェジュで発掘された遺物。

今日は、こちらのプレゼンの準備をしていました。今日は家から出なかった…。相当珍しいことです。家では集中できないことが多いです。

アジアの沈没船について語る予定。

東アジアと東南アジアに水中文化遺産の保護体制について…

アジアでは、韓国がトップクラス。国立の研究所が頑張っています。国立海洋文化財研究所のウェブサイトから過去の発掘調査報告書などがダウンロードできます。2023年には、注目のチェジュの遺跡の報告書が出ています。日本の倉木崎海底遺跡や博多遺跡群出土の陶磁器類と似たようなものがたくさん出土しています。おそらく、中国から日本に向かう途中でチェジュで沈没したのでしょう…。日本の船だった可能性も?その他、韓国では新安船は日本行の船、珍島からは日本の準構造船が出土しています。古墳時代の日本の船の一部も発掘されている。日本の海事文化を学びたければ、韓国に行く必要があるという皮肉。


中国も、国策として行っている部分もありますが、実は基本は地方自治体が主体となっています。領海外については国の水下文化遺産中心が担当。ちなみに、他国のEEZで中国を起源とする遺物が発見された場合は、中国が調査・管理できると主張して法律に明記しています。

そう、日本のEEZで何か遺物が見つかった場合、日本には管理するための規定が何一つない・想定すらない・法的根拠が皆無なんですが、中国政府は取り扱うことができるのです。

台湾も、2000年以降急速に力を入れています。日本船籍の沈没船も多数調査しています。

ベトナム…。きっかけは、白藤江戦いの跡地調査(私もかかわっていました)。ホイアン沈船など。昔はトレジャーハンターがはびこっていましたが、払拭して研究や若手のトレーニングを行っています。

ブルネイも、国としていくつか発掘しています。

フィリピンは、国立博物館に専門チームがいます。一昔前までは、遺物の売却で発掘費用を賄っていましたが、もうそれは過去のこと。サンディエゴ号からは、日本の刀の鍔が発見されています。日本人傭兵が乗っていたそうです。他、中国の船など、特に16世紀以降の沈船が多いです。

インドネシア。この国は、ずっとトレジャーハンターがはびこっていました。売り上げを会社、政府、地方で山分けしていました。しかし、考古学者の働きで法律を改正。国でも専門機関が設置されました。ところが、数年前に大統領が海洋研究や資源開発に関して大統領令を発令し、トレジャーハンターが入る混む余地を作ってしまった。政治家や考古学者は大統領例の取り下げや新たな法律の改変に向けて動いているとか…。この前の大統領選がったので、これからどうなるか…。

シンガポールも微妙でしたが、最近は研究をしっかりと行っています。また、インドネシアでトレジャーハンターにより引き揚げられた遺物を一括で購入し、博物館で展示しています。唐の時代の船、インド洋~中国を往復していた船のようです。アラブのダウ船の祖先と考えられます。まあ、遣唐使時代の船ですね。本当は、この船はインドネシアに残して展示するべきだった…というのが多くの研究者の意見です。とはいえ、遺物がバラバラにならずに一つの博物館にまとまっているのは、シンガポールのおかげ。

さて、東ティモール。詳しくは分かりませんが、水中文化遺産に関する法律があると聞いています。国を中心として保護を進めているようですが、研究者が育っていないようです。

ラオスとミャンマー…すいません、この2国については、よくわかりません。ミャンマーも研究者が育たない環境に苦労しているようですが、政府は取り組みを行う姿勢を見せている、と聞いたことがあります。ラオスは、川や湖などで水中遺跡があるとのこと。

タイ…現在は、博物館、研究センター(トレーニングプール完備)、調査船もあります。1970年代から調査を開始。最初はデンマーク、オーストラリアなどが調査をしていましたが、徐々に国としての体制を整備。私も調査船に乗りましたが、やっぱり紫色ベースでした。

忘れていましたが、カンボジア。UNESCO水中文化遺産保護条約を批准しています。国策で水中遺跡の保護を進めたい、でも、なかなか予算がつかない…もどかしい思いをしている研究者たち。

モンゴル。UNESCO水中文化遺産保護条約の批准を目指しているようです。国内の政治家などもその必要性を認めています。数年前、オンラインでしたがUNESCOのエキスパートミーティングに参加しました。参加者を直前まで。知らされなかったのですが…前日にリストを見せてもらいびっくり。国立博物館の館長、いわゆる文化庁長官や文科省副大臣などが参加していました。そんな方々の前で日本とベトナムの元寇(蒙古襲来)の水中遺跡の話をしました…。

北朝鮮。噂ではきちんと水中文化遺産の管理を徹底している、とのこと。どっかの学会で政府発表があったそうです。本当かはったりか…

さて、日本は? 個々の研究はトップクラス。内閣府の取り組みは最悪最低。


あら、もう11PMではないか…明日は、朝4時の予定なのに Good Night!


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