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義務教育で思うこと...

色々と思うことを書いてみよう。頭に思いつくことをそのまま...書いてみたらどうなるか。

自分は、Twitterで水中遺跡・水中考古学について情報を拡散している。文字制限があるので、書きたいことが書けなかったり、短いがゆえに意図していることが読み取ってもらえないことが多い。

ここでは、そんな心配もない。なので、ちょっぴり長めに書いてみたい。さらに、敢えて写真の力に頼らない。文字だけのチカラで伝えたい。また、読み直しもほとんどしません。誤字脱字のチェックのみします。

支離滅裂かもしれませんが、もしかしたら、そのほうが、気持ちが伝わるかもしれない…

では、始めます。

今、毎日のように小学校に行ってます。もちろん仕事で。考古学の出前講座をしています。地域の歴史を教えたり、火おこし体験などをしています。その中で、必ず水中遺跡について3~4分ほど話すようにしています。

これまで、数千人の小学6年生に水中遺跡に触れる機会を提供することが出来ました。10年後、一人でも水中遺跡の研究をやりたい人が出てくれればいいなと思って続けています。

日本では義務教育で水中遺跡について触れる機会はありません。大学の考古学の授業でも水中考古学はほとんど話題に上がりません。

でも、水中遺跡について必ず義務教育で触れておくべきだと思います。

それはなぜか?少し回りくどいですが、説明します。

現在、世界では水中遺跡発見のブームです。各国それぞれ数千~数万件の水中遺跡が発見・周知されています。これは、9割が海洋開発のアセスメントによるものです。開発に際して事前に遺跡があるかチェックします。

残念ながら、日本はこのチェックのシステムが存在していない珍しい国です。例えば、洋上風力発電の開発に際して、鳥類や魚介類の調査は実施されますが文化遺産の有無についてはノーチェックです。

埋め立て地や浚渫に関しても事前に調査がされないので、おそらく数万件の遺跡が破壊されているでしょう。でも、誰も声を上げない…。そう、そもそも水中に遺跡があるなど想定外なんです。

海岸線600kmの国に水中遺跡が3万件あります。一方、海岸線3万キロの日本に水中遺跡が数百件しか発見されていない(しかも、大半が琵琶湖周辺)。

「水中遺跡がある!」と言うことを知っていれば、何らかの対処ができたはずです。水中遺跡の存在を知ってもらうことが大切!というのは、すでに数十年前から多くの専門家が言っていますが、多くの人はそんなことは知りません。残念ながら、専門的な論文には掲載されているんですが、それでは一般には伝わらない。

機会があれば、小江慶雄さんが1960~70年代に書かれた本を読んでみてください。水底にある遺物・遺跡を事前に調べ、盗掘や開発から保全する必要がある。それは、緊急の命題であり、独自の手法をもって科学分野と協同で守らなければならないと…50年前の言葉ですが、現在、それがほとんどできていない。

しかし、世界ではそれができています。何らかの国立の施設・機関を設置し水中文化遺産の保護を行なっている国は、近いところから挙げていくと、韓国、中国、フィリピン、台湾、ベトナム、インドネシア、カンボジア、タイ... もう、お分かりですね。日本以外の国では水中遺跡の保護は常識なんです。どこの国でも水中遺跡の専門家が数十名いる。

そもそも、水中文化遺産を保護する法律が世界で最初に出来たのは1832年。渋沢栄一氏が生れる前。水中遺跡の発掘は19世紀から行われています。日本でも明治時代に水中遺跡の調査が行われています(長野県)が、一般には広まらなかったようです。

話しが脱線してきましたね…元に戻しましょう。

3年ほど前、パリでユネスコ水中文化遺産保護条約の締約国会議にオブザーバーとして参加しました。この時、トーゴの代表が話した内容が、ずっと私の心の中に残っています。トーゴでは、水中文化遺産の専門家もほとんどいないそうです。そこで、子供のうちから水中遺跡の大切さに触れるキャンペーンを行なったそうです。

その内容とは、政府主導で水中遺跡のプロモーション動画を作ること。そして、その動画を毎週金曜日にテレビCMで流したそうです(国営放送かな?)。さらに、学校教育でもビデオを使って水中遺跡を守ることの大切さを教える取り組みを行ったそうです。

その取り組みのおかげで、現在では水中考古学の関心が高まり大学などでも積極的に遺跡保護の議論がおこり、国として水中文化遺産を大切に守る機運が生まれているようです。

これを聞いたとき、これは日本でも実施するべきだ!と思いました。

ところで、トーゴって国知ってますか?

あまり豊かな国ではありません。国民一人当たりのGDP(MER・為替レート)は1000ドル未満。識字率も80%に届いていません。そして、海岸線の長さは60㎞ほど。

そんな国が、水中文化遺産の保護について義務教育で教えている!すごいことだ!そう思い、会議の後、そのことについてチュニジアの研究者に話したら、何がすごいのかわからないようだった。「それ、別に普通のことじゃない?」と…。他国の代表にも話したら、同じような反応だった。別に調べたわけではないが、多くの国で水中文化遺産の保護は義務教育で教えている。

日本から数名その会議に参加していました。彼らにも話したが、反応は鈍かった。文化庁の方も、「そうなんですね…(ハイ終了)」という態度。「日本も教育現場から変えなければ!」と言ってほしかったが、そこまで関心がないのだ。

日本は、国民一人当たりのGDP(MER・為替レート)は4万ドル以上。識字率も99.9%。海岸線は3万キロ(そのうち1万キロ以上はすでに埋め立て・遺跡破壊済み)。

トーゴの若者は、60㎞の海岸に眠る水中遺跡に夢を膨らませているのだ。一方の日本はどうだろう...。

今、日本で水中考古学について話を聞くのは、おそらく大学院などに進んでからだ。その時点では、すでにキャリアもほぼ決まっているし、新しいことを始めるには遅すぎる。水中遺跡があるんだなと気がついても、もう遅い。さらに、海の開発業者や漁業従事者は、水中に遺跡があるなんて思いもしない。だから、遺跡らしきものを見つけても、遺跡だとは認識しないのだ。

そして、そのために多くの文化遺産が破壊されている。

今、政治や経済を動かしている人は「水中遺跡」など聞いたことがないのだ。さらに、政治家は、他国の状況なんて見ていない。これが日本で水中遺跡が浸透しない理由なのではないか...。そもそも、日本人以外から「水中考古学って初めて聞きました」など言われた試しがない。やはり、教育だ。若いうちから水中遺跡の存在を知っておく必要がある。

若いうちに水中考古学に興味を持ってもらいたい!やっと本題にたどり着いた...

そんなに難しいことなのか…。5分でいい。トーゴのテレビCMもそんなに長いものではない。日本だけが出来ないはずはないのだ。

小さなきっかけが大きな波を作る。

水中文化遺産を守ることの大切さを義務教育で教えよう。

若い世代が水中文化遺産の保護について真面目に考えてくれる。そんな日が来ることを願っている。

以上...


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