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NFT TOKYO から見る企業はweb3にどのように取り組むべきか(まとめ&考察)

NFT TOKYO 202212トレンド

今回NFT TOKYOを振り返ると前回と比べて特徴的な差があるとすれば、「企業におけるユースケースのバリエーション化」「DAOに関する取組拡大」(若干バズワードになっているが )「企業がどのように Web 3に取り組むべきか」この3点ではないか。
また  Web 3の活用が以下の図にある中で、

web3構造

個別領域で展開(例:NFTやメタバース)するだけでなく、各領域を複合的に展開しているケースが増えてきた印象です。

MetaBrewSocietyは ビール作りを通じて NFTやトークンの発行DAOにおける商品開発、トークン発行による設備投資、開発商品の提供(トークンを購入すると毎年100のビールが届けられるまた飲めなければ、その権利をNF販売も可能)など複合的な展開ができているのは、小さいながらもWeb3で何ができるかのユースケースとしてはとても参考になると思います。

グローバル企業も着々とweb3の取組が進んでいる。


今回も含めてユースケースとして取り上げられることの多い企業は以下の3つです。

スターバックスにおけるロイヤリティプログラム(現在進行中)


Nikeもweb3における新しい体験価値を提供し続けておりユースケースとしてはよく取り上げられている。

ラグジュアリーブランドのGUCCIもブランドの持つ世界をweb3に展開して注目を浴びている。

ただこれらの企業もまだプロトタイプを作って展開しているため、すごく成功したという実績までは出せてはいないが、事業戦略上、顧客に対する新たな体験価値創造という考えに基づいて積極的に取り組んでいるのではないでしょうか。

トークンエコノミーで変わる世界/現代版物々交換

web3におけるトークンエコノミーの進化は「既存顧客維持」「LTV最大化」といった企業が行っている顧客の囲い込みができなくなる世界が実現されることである。

例えばエアラインがトークンを発行する環境が整うと、エアラインアライアンスグループ(スターアライアンス・ワンワールドアライアンス)の世界が変わってくる。アライアンスグループのエコシステムを利用すれば、特定航空会社のマイレージを保有し、なるべく同一航空会社利用を促しているが、web3時代になるとマイレージの利用方法そのものが変わる。

トークンマイル流通するようになれば、ユーザー間でマイレージのエクスチェンジができるようになり、マイレージ保有による同一航空会社利用のつなぎ止めが必要なくなり、ワールドワイドで統一されたアライアンスグループになる可能性もある。どこでためるかとどこで使うかが別な世界になるのだ。

また日本の事例で置き換えると、今回の日本の NOT A HOTELが150万円で47年間のメンバーシップ利用権を販売した。
これは、毎年指定されたホテルの1日宿泊権利(但し、ユーザーがどのホテルでいつ泊まるかは指定できない)をトークン(ホテルの部屋の鍵として)で付与される。
メンバーシップのユーザーは、指定された曜日にそのトークンを利用してホテルに宿泊すればよい。この事例はホテルの権利をNFTで販売し部屋にはいる鍵をトークン化したものであるので、事例としては一般的であって先進性はないが、今後トークンエコノミーが進化すると、異なる変化が生まれてくる。

それは、NOT A HOTELの指定日に宿泊できないメンバーが、その権利をユーザー間で他の権利と交換ができるということである。しかも値決めも自由だ。自分の権利と相手の権利が同等または交換してもよいと思えば、簡単にエクスチェンジできる。

つまりNOT A HOTELの1日宿泊トークンをハワイのヒルトンクラブの宿泊権利と交換が可能になるのだ。
こうなると、NOT A HOTELのトークンを47年間保有しているメンバーは、外部環境が整ってくると、世界と自由に物々交換できるチャンスを得ることになる。
ホテルの権利同士を交換するケースもあれば、ホテルと別なものと交換するケースもできるだろう。ブロックチェーン上で物々交換のエコシステムが構築されていくわけだ。

ブロックチェーンの仕組みを活用すれば容易にこうしたことが実現される。
これがweb3の醍醐味であろう。

企業介在がなくなる世界

そして、これが何を意味するかというと、マイレージやNOT A HOTELのケースが進化すれば、ここに企業が介在しないCtoCのエコシステムが構築されると共に、顧客を囲い込むという仕組み(ロイヤリティ―プログラム)を進化させなくてはいけない。

そのヒントに、web3における企業トークン(例:ポイント・マイル)は特定個人に流通するのではなく、特定個人から新たな顧客層に流通するという視点変化が必要である。トークン資産は不変であるため、新たな潜在顧客に流通する媒介手段と機会と捉えて、積極的にトークン発行し新規顧客開拓の有効な手段になるかもしれない。特に顧客満足度の高いサービスを得意とする日本の企業は海外に比べ、そこにビジネスチャンスが生まれるかもしれない。積極的にトークンを発行し、世界中に顧客開拓をしていくことも可能なのだ。

ビジネスポテンシャルがあるがまだ未成熟市場であるため、まだまだ企業資産のトークン化・発行はそれほど進んではいない。しかし近い将来トークンエコノミーに参加できない企業はユーザーの選択肢から排除され、その市場に参入できない可能性もある。だからこそ、1企業の利益追求だけでなく、その業界のために取組む視点(業界発展型モデル)も必要であり、状況に応じてはコンソーシアム化して取り組むことも必要であると日興証券の磯野さんは述べている。

本質を捉えていかなければ、企業はこのエコシステムから取り残される未来がある。特に内需に強い日本は、世界市場単位で展開されるweb3領域では短期的に成果が出ない可能性が高い。だから取組に遅れがちになるのである。トークンエコノミーは未来の顧客開拓への投資としてとらえるべき。
その価値は変わらないため所有者が変わるだけ。だからこそ自分たちのビジネスに新たなチャンスがあると捉え積極的に参加してほしいと思う今日この頃である。

企業の取組を拡大するために


今回NFT TOKYOではこうした環境において取組が進んでいない日本企業の中で、web3の領域において先行的に取り組まれている全日空/高野さん・日興証券/磯野さんご登壇いただいた。

今回、以下の3つを論点ポイントとしてディスカッションを行った。
①企業における Web 3の取組をどのようにすべきか(前述)
②どのように社内説得してきたか
③ROI(費用対効果)

まず社内説得において課題として出てくるのは
1:web3の未理解
Web 3を取り組むにあたって 社内において一番のハードルとなることは、 Web 3が説明しにくく理解されにくことである。国内事例も少なく、ユースケースとしてあるのはゲーム・コミック・ アニメ・スポーツなどの有力コンテンツのWeb3化が中心。

2:税制問題
ビジネス参入しトークンを発行すると日本では含み益に法人税がかかるという税金の問題も大きい。

3:ROI(費用対効果)
web3の経済効果は聞かれたときになんと答えるべきか。ここに正解はない。
web3単体の経済効果は未知数である。そこに投資を行う意味があるのか。

web3は事業の成長戦略設計にどのように組み込むべきか

企業で取り組む場合に、上記の説明責任をはたさないと前に進まないため、日本企業の 取組はアメリカに比べて10年以上遅れていると言われている。
だが、日本が進んでいない最大の理由はweb2を取り組んでいる企業家たちが参加していないことが考えられる。彼らはDXの推進を行っている立場であり、経営課題としてDX推進しているため、web3の取組余力がほとんどない。よって、日本でweb3を取り組もう考えている企業の人たちの多くはDX推進メンバーでない方が多いのではと思われる。今回のお二人もCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)的な動きを行って社内説得を行ってる。今後はこうしたweb3に詳しい人とweb2の事業推進者が一緒になって、事業戦略の中にどのように組み込むべきか議論し、web3は流行っているから取り組まなくてはいけないのではなく、新たな市場創造が起こり、そこに企業がポジションを取ることができなくなる可能性があることを認識し、現状の事業戦略にどのように取り込まなくてはいけないか。まずそこを議論することが重要なのではないかと全日空の高野さんは提唱している。そして、事業・経営レイヤーで議論する場を設け、経営課題として捉え、DXの延長線上に組むこむことで日本のweb3の取組が拡大していくことが予測される。

DAOの本質

今回のNFT  TOKYOではDAOが注目されていた。DAOの詳細はこちらを見てもらうとよいが、


簡単に言うとDAOは同じ目的(パーパス)を持ったユーザーコミュニティーであり、その中で実行される施策がトークンを保有しているメンバー(保有数によって加重が可変)の投票制によって可否判断される非中央集権型組織である。その中に企業が入っていくと企業が主体に運営するため中央集権組織になるためDAOの本質とは異なってくる。DAO領域における第一人者の Fracton Ventures 鈴木氏は、企業が行うときは初期段階では中央集権組織運営になるがその後、非中央集権組織にしていくことで企業側にチャンスがあると答えている。こう答えるとDAOは企業に向いていないかとか投票権利の高い人の投票に偏重するリスクがあるではという意見も出るのだが、鈴木氏はDAO設計で重要なことは、まずベースとなるルールを作って運用し、実態を体験しながらアップデートしていくことが重要である。もしDAOがアンコントロールになったなら解散して、新しいDAOを構築してリトライするという考えもあるとも述べいてる(雄大さんの本です)


DAOの本質は自分たちが自己実現したい世界を共通の思想を持った人たちが集まり、そこで議論(議論はweb3ではなくDiscord上)され、その内容が民主的(投票)に決まっていくこと。つまり共感価値が何であるかが重要であると考える。わかりやすいDAOのケースでいうと不老不死DAOはその典型である。不老不死の仕組みを開発するためにみんなが集まり議論し、お金を出しトークンを購入し、投票して何をしていくか決める。そのプロセスに人は共感し、大きなインパクトを生むトピックが起こることで、共鳴が起こり、その組織のシンパシーが高まると考える(これはユングのU理論がわかりやすい)。


つまりDAOは共鳴した人たち集団になるため、その共鳴が高まれば国家ができると湯川さんは「NETWORK STATE」の論文でアメリカでは話題になっていると説明していたが、DAOは共鳴の状態によってステイタスが3つぐらいのステイタスがあるのではないか。

1:共感フェーズ:同じ思想のメンバーが集まって、議論していって物事が 
  決まっていく。
2:共鳴フェーズ:決まったものが世の中で何らかの価値を持ち、社会貢献  
  や自己実現などが実体化してくる。その体験が無意識に共鳴していく(鈴木さんはDAOのメンバーは、DAOにおける行為・行動を見ているので容姿・プロフィール・国籍などはまったくは関係ないと言っていた。つまりその人の行動に共鳴し、もし会った時は一瞬で仲良くなれる現体験をしたそうだ)
3:シンクロンニシティフェーズ:共鳴したメンバーが人・モノ・カネを集め究極の自己実現を目指すフェーズ(これが湯川さんが言うDAOは国家になるということだろう。DAOのメンバーである場所に土地を買い、自分たちで作ったルールで、そこに所属・住んだりして、DAO独自法治国家として成立する)。現在多くのDAOは1,2のフェーズであるが、DAOで成功するポイントは共鳴を起こすこと、企業DAOの成功の秘訣は、共鳴を起こすマネジメントにかかっているのではないか。

今後、企業に置いてDAOを構築することが目的化しないことを期待したい。

時代は繰り返す

今回、企業がどのように取り組むべきか議論が活発に行われたが、デジタル業界に25年在籍する小生としては、Web1・Web2の時代に起きたことが改めて起きているという感じでした。web3がわからないは、web1で企業HPがなんで必要なのというものと時と近いし、DAOの運用はweb2のアプリ開発の初期に近いが、ツールが開発されASP化していけば誰でも簡単に運用することができている。
そして社内説得もどのフェーズで起きえたことだ。そこには先駆者がいて、自ら積極的に取組新しい価値を構築していく。Web1は資生堂の岩城さん、キリンの真野さん、ホンダの渡辺さん、web2では無印の奥谷さんや東急ハンズの長谷川さんがやはり社内アントレプレナーでした。今まさにその新しいアントレプレナーたちが新しい世界を切り開こうとしている。ボトムアップ型で苦しみながら活動しているのだ。だからこそ経営者はweb3の重要性を理解し、経営イシューとして議論を行いトップダウンで取組むことを目指してほしい。

ここ最近でも個人情報保護法の改正で企業はあたふたした。でも、経営者が経営に近い課題として捉え、どう取り組むべきか議論されている企業はしっかりとした取組ができている(小生がマネージしたこのビデオは西井さんがそのことを語ってくれている。。クッキーレスになるこのタイミングで企業はどう取り組むべきかということをディスカッションしているVTRです。6:45~9:44あたりです)。


これと近いことが Web 3においても今後行われていくだろう。この世界で起きることをいち早く気づき経営に近い課題として捉え、アクションプランを設計していくことが今後求められるのではないか。

今回の NFT TOKYOでは、こうしたトピックが個人的に注目したポイントである。

私はマーケッターなので、web3で実現する世界が事業戦略上の課題として捉え、その課題を解決するための手段として、Web3を展開することを期待したい。





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