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キャッチコピーは神格化するのか?

先日、TwitterにてKFCに関する、とある記事を引用リツイートしたところ、ちょっと反応があったので、私見を書き留めておきたいと思い、つらつらと書いてみます。

現在の外食企業の状況

このコロナ禍における営業自粛・外出自粛の影響で、外食各社は軒並み苦しい状況です。

上記をご覧いただいてもわかる通り、この状況下においても、マクドナルドとKFCは好調を維持しています。

4月は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、本格的に休業・営業時間短縮・イートイン休止などの店舗が数多く発生したため、3月以上に影響が出るだろうと思っておりました。が・・・

【4月度の既存店売上高(前年同月比)】
マクドナルド:売上高6.5%増、客数18.9%減、客単価31.4%増
KFC:売上高33.1%増、客数7.3%増、客単価24.0%増

マクドナルドは、3月の既存店売上高が前年比99.9%と、実に52ヶ月ぶりに前年を下回りました。でも、51ヶ月連続でプラス成長してきたというのは驚異的ですし、4月にまたプラスになったのは、やはりこれまでのマーケティング戦略の賜物ですね。

一方、KFCも2018年12月から17ヶ月連続で既存店売上高が前年比プラスとなっています。また、マクドナルドが4月に客数を大きく落としながら客単価でカバーしているのに対し、KFCは客数も伸ばしている点は注目すべきですね。
※ちなみに17ヶ月連続ですが、2018年11月の3.0%減の前も、2018年7月〜10月はプラス成長しているため、V字回復は、そこからだとも言えます。

KFC絶好調を支える名コピー!?

さて、そんな絶好調のKFCについての分析で、面白い記事が出ていました。それが、コチラ。

記事の中から、いくつか引用してコメントしていきます。

広告業界では、高畑充希が登場するCMの「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーが相当効いていると分析している。

先に述べた「17ヶ月連続昨年比100%超達成」は、キャッチコピーが効いているから「だけ」ではもちろんないですね。

元々、KFCのメニューと言えば、「クリスマスの時期に家族で食べる特別なもの」といったイメージが定着していたが、「日常食」として利用できるセットメニューを強化。

かつて、ハレの日需要を追求し、「プラス1オケージョン」を模索していた時期がありました。
(例えば、クリスマス+誕生日、クリスマス+ハロウィンなど)
しかし、それだけでは思ったように結果ができなかった要因の一つに「ケンタッキーは高い」というイメージが消費者の意識から拭えないということがありました。
そこで、これまでなかなか展開できなかった「思い切ったバリュー戦略」を展開し、「日常食」へ進出したのが功を奏しました。
※それらについては、すでに様々なメディアで取り上げられていますので、一例として下記をご参照ください。

さて、記事では「今日、ケンタッキーにしない?」というキャッチコピーに話題を集約し、以下のように評しています。

KFCは誰もが食べたことはあるし、好きだけど『そういえばあったな』といった感覚を持つ人が多かった。誰もが美味しいことは分かっているけど、“特別感”がありました。だからこそ『今日軽い気持ちであのおいしい味を食べようよ』というコピーに多くの人がハッとし、KFCを食べたくなったのでしょう。

本当にキャッチコピーを見たり聞いたりしただけで、そのような行動が起こるのでしょうか?キャッチコピーは、そこまで人の脳裏に焼き付いているのでしょうか?

一つ肯定的な見解をするならば、一つ前のKFCのキャッチコピーである「やっぱり、ケンタッキー」と比較することはできます。

「やっぱり、ケンタッキー」は、コンビニ各社がフライドチキンに参入してくる中で、フライドチキンの老舗であるケンタッキーが「自信と誇りを持って」「やっぱりケンタッキーでしょ?」と消費者に問うものだったのではないでしょうか。

それは企業側の「自信と誇り」を感じさせるものではありましたが、「共感を得る」までには至らなかったのかもしれません。それと比較すると、「今日、ケンタッキーにしない?」と言う問いかけは、顧客目線であり、共感を意識したLet's(お誘い)であり、ソーシャル時代にもマッチして、消費者に受け入れられたのではないでしょうか。

ただし、緻密なマーケティング戦略において、キャッチコピーは一つの表現機能であり、それだけで売上が上がるものではないでしょう。

先に紹介したバリュー戦略や、これもよく書かれている「高畑充希さんの起用」以外にも、2013年から続けている次世代育成としてのキッズスクールや、私が携わっていた公式アプリでのロイヤルティプログラムなど、中長期でのお客様との関係構築も、現在の好調な業績を支えてる一因になっていると思います。(というか、なっていると信じたい・・・)

前出のプランナーは、「KFCのこのコピーが、今後ますます“神格化”していくのでは」と見ており、
『今日、ケンタッキーにしない?』を超えるものを作るのはけっこう難しいですよね……。

もちろん、普通にマーケティングを行なっている人であれば記事の文面のまま受け取ることはないとは思いますが、KFCにおけるV字回復について、キャッチコピーやタレントの起用に関する断片的な見解を記載する記事を見かけることも多々あるので、いい機会かと思い、書いてみました。

shioyan

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