2204C志乃【九死に一生】

 てん、と軽く鈍い金属音がして、振り返れば側溝の網に山茶花がひっかかっていた。
 葉擦れや風に花弁の端から傷み始めているが、まだ鮮やかな淡い桃色をしている。鳥にでも落とされたか。近くへ寄ってまじまじと見なければ、盛りの花と言われても違和感がない。
 蓋のない側溝へ落ちるでもなく、泥の地べたへ顔を伏せるでもなく、仰向けに落ちたこの花は汚いとは思われないだろう。まだしばらく、道を行く人の目を楽しませるに違いなかった。

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