マガジンのカバー画像

一人百物語

4
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

視線

もう解決したといえばしてる話なんだけど、それでもいいのか? と背の高い青年が後ろ頭に手をやって問う。もちろんとうなずけば、青年は忘れかけの記憶を掘り起こすようにのんびりと話し出した。
「もう五年は前のことなんだけどさ」
 精々仲間内で「すこし不思議な体験」を持ち寄って語るような、気軽な語り出しだ。

***

高校卒業して、大学は実家から遠いとこに決まったから、春に引っ越しをしたんだよ。よくある話

もっとみる