第12回 ぶらり句会
広瀬ちえみさん主催のネット句会です。(参加者全員で共選)
今回の題は「かく」「雑詠」。私の選からほんの少しだけをご紹介。
破格値の羽や尻尾や嘴や 広瀬ちえみ
わたしたちは鳥類と同じただの生き物ですが、この句に書かれた部位を
腕や唇に置き換えてみるとどうでしょう。手塚治虫が描いた漫画の世界は
すでに現実となりました。生物の体の意味について鋭く突いた一句です。
「破格値」とは通常とても安いお値打ち価格の意味で認識していましたが、逆の場合もありかもしれないと考えさせられました。
カナリアにそこでなってもいかんのよ 湊圭伍
カナリヤに含まれる哀愁と危機感にどこまで句意を委ねてよいのだろうか、という悩ましさは感じたのですが「そこで」「も」が効いていて技あり!
後で作者が湊さんだとわかって、作者の川柳観が反映されているのだと
納得しました。“目立たない”ことについて。
真っ先に消滅させられないようにすることについて。
ネモフィラの昭和的ではない青さ 高橋かづき
昭和じゃないなら令和か。とすればすごいフェイク感があり、
すでに忘れかけている平成であればかなりのぺらぺら感。
どうしてなんだろう(ネモフィラに罪はない)。
どの顔も笑っているよ安倍一族 ますだかも
内閣は月へと向かう準備する 樋口由紀子
関係者各位飛び込む水の音 兵頭全郎
気がつけば旅客はみんなお猿さん 松永千秋
頭角の。途中でおわる日記帳 いなだ豆乃助
みんなどこかへ逃げていっているみたい。
うまい消え方なんてあるのだろうか。ないと思うけど。
えんえんと空と地面に春を描く 佐藤みさ子
終わらない春というのは終わらない冬より怖くないかもしれない。
それでも「えんえん」に狂気は含まれていて、花粉と黄砂で人類が
滅亡する可能性もゼロとはいえない。花びらに埋もれて。
袋いっぱいにかくかくの屍 竹井紫乙
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