潮吹、追跡、噂 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(6)~
空と海は清澄の気に満ち
銀色のさざ波がうっすらと
しかし常ならぬ確かさで寄せている
はるか前方に聖なる潮があまた噴き上げている
(クジラ アル! クジラ アル!)
クエクエは興奮し 声を枯らして叫ぶ
船員たちはざわつきながら甲板に上がってくる
その数分後に船長が姿を現す
杖をつき からだを揺らしながら
うろついている舟子どもをけちらし
船の際まで歩いていくと
険しい眼で前方を見やる
その眼に光が宿りはじめる
(帆を上げよ!)
船長は舟子どもに命令する
(全ての帆を拡げよ!)