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叙事詩『月の鯨』

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神話上の白き妖獣「月の鯨」を追い求めてよるべなき海を行く船。その行き着く先は? メルヴィルの『白鯨』に素材を得たフィクションです。
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#鯨

自滅 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(12)〜

さて 船長様御一行が 人類世界の光源たる創造物に喰らいつき 酒池肉林を繰り広げていたときだ…

汐田大輝
1年前
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狂宴 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(11)〜

その夜 〈月の鯨〉を祀る厳かな礼拝堂にて パーティーが行われた 高級船員限定の集まりだった…

汐田大輝
1年前
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鯨を追う 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(10)〜

太陽の光は大気を銀色に染め 万物は茫洋とした昏睡状態に陥っている うつらうつらとして 眼を…

汐田大輝
1年前
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捕鯨、幻の国、鯨の王国 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(9)〜

なぜ、オレたちは鯨を追いかけるのか 世界中の数多の捕鯨船が 海の藻屑と消えるかも知れぬ危険…

汐田大輝
1年前
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海鴉、幽霊船、大烏賊 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(8)〜

船は超自然的現象の中を進んでいく 現実と幻想のあわいをただよう舟子たち 船長は姿をくらまし…

汐田大輝
1年前
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喜望峰 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(7)~

鯨群の潮吹きを ことさら秘蹟めいたものにしたのは 不思議なほど清澄な天候だった 倦怠と孤独…

汐田大輝
2年前
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潮吹、追跡、噂 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(6)~

空と海は清澄の気に満ち 銀色のさざ波がうっすらと しかし常ならぬ確かさで寄せている はるか前方に聖なる潮があまた噴き上げている (クジラ アル! クジラ アル!) クエクエは興奮し 声を枯らして叫ぶ 船員たちはざわつきながら甲板に上がってくる その数分後に船長が姿を現す 杖をつき からだを揺らしながら うろついている舟子どもをけちらし 船の際まで歩いていくと 険しい眼で前方を見やる その眼に光が宿りはじめる (帆を上げよ!) 船長は舟子どもに命令する (全ての帆を拡げよ!)

虚無、日常、鯨群 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(5)~

クエクエが大切に祀り上げていた小便小僧 床に転がって埃だらけになっている オレは布で磨き、…

汐田大輝
2年前
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