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叙事詩『月の鯨』

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神話上の白き妖獣「月の鯨」を追い求めてよるべなき海を行く船。その行き着く先は? メルヴィルの『白鯨』に素材を得たフィクションです。
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#白鯨

鯨の中へ 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(15)〜

〈まあ、大層な言葉でいえば、幻想的、超現実的、あるいは荒唐無稽というべきか。あいつの手紙…

汐田大輝
4か月前
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白い泉 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(14)〜

宇宙創生のときから 鯨は世界の中心であった 古代人は鯨を神殿に祀り 娘らを争って贄に捧げた…

汐田大輝
7か月前
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鯨の感覚世界 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(13)〜

すったもんだの末に仕留めた抹香鯨 長々とけだるい引き揚げ作業の末 その恐るべき巨体が甲板に…

汐田大輝
10か月前
54

自滅 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(12)〜

さて 船長様御一行が 人類世界の光源たる創造物に喰らいつき 酒池肉林を繰り広げていたときだ…

汐田大輝
1年前
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鯨を追う 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(10)〜

太陽の光は大気を銀色に染め 万物は茫洋とした昏睡状態に陥っている うつらうつらとして 眼を…

汐田大輝
1年前
39

捕鯨、幻の国、鯨の王国 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(9)〜

なぜ、オレたちは鯨を追いかけるのか 世界中の数多の捕鯨船が 海の藻屑と消えるかも知れぬ危険…

汐田大輝
1年前
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海鴉、幽霊船、大烏賊 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(8)〜

船は超自然的現象の中を進んでいく 現実と幻想のあわいをただよう舟子たち 船長は姿をくらましていた 大津波は鎮まりつつあるようにも見えたが 待ち構えていたのはさらに荒涼とした世界 ある朝 甲板に上がっていくと 海鴉が雲霞のごとく飛び交っていた 真っ黒な鴉どもが 帆の上にぎっしりひしめいている 船はいつの間にか海鴉の棲み家 我が物顔で船を荒らしていた 鴉たちにとって この船はもはや無人の漂流船 船員たちは存在感のない亡霊だった そうこうするうちに前方から 白い船が近づいてくる

喜望峰 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(7)~

鯨群の潮吹きを ことさら秘蹟めいたものにしたのは 不思議なほど清澄な天候だった 倦怠と孤独…

汐田大輝
2年前
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潮吹、追跡、噂 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(6)~

空と海は清澄の気に満ち 銀色のさざ波がうっすらと しかし常ならぬ確かさで寄せている はるか…

汐田大輝
2年前
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虚無、日常、鯨群 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(5)~

クエクエが大切に祀り上げていた小便小僧 床に転がって埃だらけになっている オレは布で磨き、…

汐田大輝
2年前
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説教、幻術、憤怒、血の涙 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(4)~

神父さまの説教が始まる 淫祠邪教に呪われたる舟子ども 貴様らの祈祷で嵐が鎮まることはある…

汐田大輝
2年前
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嵐の夜、祈祷、礼拝堂 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(3)〜

クエクエの祈祷がずっと聞こえていた 海は荒れ 風は吹きすさび 船体が軋んでいる 上下左右に…

汐田大輝
2年前
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船長、壁画、海坊主 〜叙事詩『月の鯨』第一の手紙(2)〜

不思議なことがある オレはこの船に乗り込んでから 船長の姿を見ていない 義足でオレを突き飛…

汐田大輝
2年前
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新しい相棒 ~叙事詩『月の鯨』第一の手紙 (1)~

ハハハハハ おい、相棒よ オレからこんな手紙が届くだなんて夢にも思っていなかっただろうよ もうとっくに海のモクズとなって消えたと思ってただろうよ オアイニクさま、まだ生きてるぜ 変なウワサを立てないでもらいたいな オレにだって文字のヨミカキくらいできるんだ 新しい相棒ができたからな もうオマエの助けなんていらないんだ クエクエっていってな 顔はマックロ ヨミカキが得意で教養がある奴なんだが クエクエって名前がなんかブキミなんだ オレの未来に暗い影を落とすかもな まあ そんな