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はじめてつぶやきのような思いつきのままの記事を書く

隣の部屋に、留学生の子が越してきたのは約3年前か。コロナウィルスのパンデミックが始まったころだろうか。

大学院で人工知能の研究をしていると言った彼女は、バイオリンとピアノとギターを操る秀才で、日本語を含め3つの言葉を操った。

日常会話では使わないような単語と丁寧な言い回しを繰り返す彼女は、それでも「私は日本語が下手なんです」と言う。
私が、そんなことはない、と言っても、難しい顔をする彼女の気持ちはわかる。自分に課しているものが、大き過ぎるため、納得しないのだ。
誰の言葉も存在も、通り過ぎるだけの慰めになってしまい、ひたすらもどかしさが募る、そんな時期が、人生には二度や三度となくあることを私も知っている。

だからこそ、彼女との距離感は難しかった。
私との会話も、彼女の勉強になっている自信がなかった。
それでも、会えば朗らかに挨拶をし、就活や研究室の忙しいスケジュールの合間をぬってコーヒーを飲みに出かけ、旅行に行けばお土産を買ってきてくれたり、お菓子の差し入れをしあったりした。
就活に悩み、遠距離恋愛の恋人に会えずに悩む彼女の前で、私は無力だった。

その彼女が、外資系に内定が決まり、左手の薬指に指輪を光らせ、ヨーロッパに発つという。
今夜が日本最後の夜。

IHコンロ付き鍋のようなものと、携帯コーヒーミル&ドリッパーを「冬に友達とお鍋してね」と餞別にくれ、先ほど、スーツケースを引きながら部屋を去った。

…寂しい。
私にはもっと、出来ることがあったはずなのに、出来なかった。
気の利いたプレゼントだって出来たはずなのに、年下の学生さんが喜ぶものがわからなかった。というか、彼女は何だって、質のいいものを十分に持っていた。

頼りなくてごめん、というのが、本音。
私がもっとしっかりしていれば、彼女の不安を和らげ、就活に専念でき、もっと沢山の笑顔を見られたのだろうか。

そう思い込むのも傲慢かもしれないが、それでも私は後悔する。この別れは、必ずあると分かっていたのだから。
ベストを尽くしても、残るときは残るのが心残り。

私が無力感を感じていようがいまいが、彼女は立派に巣立って行った。これが事実。

貴女が隣の部屋で頑張っているのを知っていたから、私も頑張れたんだよ、ありがとう。

今夜はひたすら、彼女の輝かしい未来を想像し、健康と幸せを祈ります。

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