感覚を手放さないということ

毎日のようにsns、ニュースに流れる、今アメリカで起きている出来事を信じられない思いで見ている。

本当に辛いし、悲しい。そして考え続けていると怒りのような感情も沸き起こってくる。

2020年、今の時代自分という人間が、世界中の人たちと関わりを持たずに生きていると考える方が無理だろう。自分の生は、物理的に遠くにいるアメリカの人たちとも深く関わっているはずである。

自分はアメリカについて、さほど知識があるわけではない。アメリカに関わる学生団体に所属していたにもかかわらず、であるが。正直なところめちゃくちゃ思い入れがある国かときかれたらそういうわけでもない。

それでも、日々の動画を目にして、この現状に対して自分にできることはなんだろう、何かできないか、仮にもそういう団体に所属したんだったのであれば何かしなければではないのか、それができなかったらその団体の意味なんてないんじゃないか、とかやるせ無い気持ちが襲ってくる。まるで心を手掴みされているような、痛む、身体が痛む。

声を上げなければ、それは差別に加担していることになる、という話もよくわかる。そういう文章をsnsで目にする機会もどんどん増えていて、とてもよくわかる一方で、だからと言ってsnsに書き込むことができない自分もいる。公に言葉を発するほど自分はこの事態に向かい合えているのだろうか、言葉を発するという行為に自分が追いついていない気がしてしまって、それはまた誠実で無いように思えてしまう。

このような状況を目にするたび、考えるたびに、僕の身体に暴力が進入してくるように感じる。動画を目にしたときの辛さ、痛み、何もできない自分に対する怒り、不条理に対する怒り、「沈黙は中立では無い」という言葉を頭で理解していても、目に見える行動を起こしていない自分に対する痛み。


辛いと感じること、痛みを感じること、怒りを感じること。ごくごく当たり前なこの感情を、まずは受け止めなければいけないと思う。どうしようもなく当たり前に持っているこの身体で感じているその感覚を、手放してはいけないと思う。

なぜならそれが当たり前のことだからである。一人の人間として、辛さを感じ、痛みを感じ、怒りを感じるのは当たり前のことである。生きているのだから。

この感覚を絶対に手放してはいけない。なぜなら、それが自分であるから。一人の人間であるから。国籍とか人種とか、そういうものたちの前に自分は痛みを感じる一人の人間、本当に当たり前だけれど、絶対に手放してはいけないところだと思う。

だからこそ考え続けなければいけない。今起きている、自分となんら変わらない一人の人間の命が「黒人」であるということを理由に奪われてしまうということについて。何がそうさせているのか、何がそうさせてきたのか、自分はこれからどう動いていけばいいのか。

声を上げ続けることも大事だと思う。black lives matterと叫ぶことも、大きな力になるのだと思う。ただ、発するその言葉の一つ一つに、一人ひとりの人間が宿っていることを決して忘れてはいけない。「black」という言葉には、当たり前のことだが、blackであるかどうかなんて関係なしに、自分たちと同じように生きる人たちが宿っている。ここを忘れてしまったら、当たり前の生を置き去りにして作りあげられてきた、今の社会をまた続けていくことになってしまう。

今感じている一つ一つの感覚が、自分であるということ。それを絶対に大切にして守ること。その手触りを絶対に手放さないこと。そしてそれは人間がみな等しく持っているものであるということ。ごくごく普通な、その当たり前から、もう一度社会について考え続けなければと思う。

もしこの文を読んでくれている人がいるならば、自分が発するその声に自分はいるか、自分の感覚はちゃんとついてきているか、振り返ってみて欲しいなと思います。snsで声を上げなければならないというプレッシャーもあるかもしれないけれど、確かに上げた方がいいのかもしれないけれど、自分の心を追い越した状態でしなくてもいいのではと僕は思います。時にそれも、暴力になり得る。自分の痛みにまずは向き合って、考えて、心が追いついたら声を上げたらいいのではと思います。もちろん、すぐに声を上げられる人もいるだろうしそれもまた大切なことだと思います。そうしたら、その声、言葉について、どのような自分がいるのか、どのような意味があるのか、これからどうしていくのか、自分も含め、ずっと一緒に考えて続けていきたいなと思います。

このように言葉にすることは、正直どこまで力があるのかわからないし、もちろんこれが正しいってわけでもないから、それを公にするのはとても怖いです。言葉にするプロセスが結構しんどくて、それも辛い。こんな状況で自分語りかよって受け取られてしまうんじゃないかっていう怖さもある。けど、考えていることが言葉として表されて、それが何人かの目に触れて、ちょっとでも共有できたらそれはまた、言葉の力強さなのかなと思って今回書くことにしました。

ここまで長文を読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

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