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出張のおとも。

2024.4.16

気持ちのよい晴れの朝。この頃はようやく雪もなくなり、日差しがうれしいと感じることが増えてきた。だけど、いきなり暑い。春を通り越して、夏のような日がつづいている。

今年はいつも以上に、春を味わう時間が短いような気がするのは、きっと気のせいではないだろうなと思う。

今日はインタビュー取材で出張の日。新しくいただいたお仕事で、この数ヶ月は月に1〜2度ほど、電車に乗って仕事の旅に出かけるようになった。

行き先は、学生時代に4年ほど暮らしていたまち。

何者かになりたくて、生き急いで、でも臆病で動けなくて…酸いも甘いもたくさん味わった青い思い出いっぱいのまちに、アルバイトをのぞいて仕事をしに行くのはこの機会がはじめて。新しい気持ちもあるけれど、どこか懐かしさもある。

つい先月までは、凍える寒さから身を守ることでガチガチになっていた身体が、ふわりと解放されて、足取りも軽やかに。毎月同じところへ向かうからこそわかるうれしい変化に、周りに気づかれないようマスクの下でひっそりと微笑んだ。

出張が日常となる日々に、身体も心もようやく慣れつつある。馴染んでいくことがうれしい気持ちと、慣れてしまうことへのこわさがある。いつも、両方の気持ちだ。

電車に乗り、到着まで1時間25分の時間をどう有意義に過ごそうかと、いつも考えている。

最初は時間がもったいないからと、パソコン作業をしようと意気込み、カタカタと指を走らせていた。

でも、30分ほどすると頭が痛くなり、画面を見ていられないほど気分が悪くなってしまう。「学生時代も同じようにしていたのにな…」と、当時との身体の変化に、少しだけ寂しさをおぼえる。

「今日は調子が悪いだけだ」と思い、それ以来何度か試したが、結局どの日もダメだった。身体が「NO」といっているのだから、無理強いはやめよう。と諦め、あっさりと切り替えることにした。

今はお気に入りの本をめくったり、ノートに考えを整理したり、お腹を満たす時間に充てたりすることにしている。

そのおかげかどうかはさっぱりわからないが、電車の中で食べる「おにぎり」がとても好きだということに、最近気がついた。

もちろん仕事だということは重々承知の上なのだけれど、「旅をしている」という気持ちを盛り立ててくれる存在が、私にとっては「おにぎり」なのだ。

余裕がない時はコンビニで買うこともあったが、出費はなるべく削りたいので、自分で作っていくようになった。

定番になりつつあるのは『菜飯(なめし)のおにぎり』。小松菜でもシロナでもよいけれど、1番気に入っているのは「大根菜」。塩の染み具合がほどよく、香りや細さもドストライク。大根菜が冷蔵庫にあると、まずもって安心感がちがう。

サッと茹でてぎゅっとしぼり、細かく刻んだところに塩をもみ込む。少し置き、またぎゅっとしぼって、炊きたてのホカホカごはんに投入。白いりごまをふりかけて混ぜたらできあがり。

夫も私も大好きなので、自宅で菜飯を食べる時は、3合分があっという間になくなってしまう。それくらいに、好きなのだ。

だから、出張の日が近づくと、スーパーでいちもくさんに大根菜を探している。大事なエネルギー源であり、心の安定剤であり、旅の気分を高めてくれる、お守りのようなもの。

「さすがに、飽きたな」

そんな日が来るまで、いつまでも出張のおともとして、にぎらせてほしい。

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