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おでかけ日誌|vol.1_秋に行きたくなるところ

秋がくると、旅に出かけたくなる。
正確に言うと、季節が変わるとその度に思うから、要は年から年中思っているのだけど、夏はどうにも体がしんどい。

免許を持たない私のおでかけは、基本電車と歩き、たまにバス。
とにかくよく歩く。
おかげで、ポケモンのたまごが次々かえる。
(未だ細々と続けているこの話は、また別の機会に)

しかし、昨今の猛暑では、この移動手段だとなかなかにしんどい。
元来、体が丈夫な方ではなく、体力も少なめだから、高まる気持ちをなだめて、無理はしない。夏は努めて穏やかに、養生して過ごす。
そんなわけだから、秋がくると、活動再開である。
溜めがある分、ワクワクは3割り増しだ。

今年はどこへ行こうかと、思いを巡らしている中で、「あそこは良かった」と思い出すのが、岡山の旧閑谷学校である。
これからはじまる紅葉シーズンを前に、ぜひ多くの人に検討いただきたいスポットだ。


テレビの国宝特集(確か「美の巨人」)で一目惚れしてから数ヶ月、木々の葉が照るのを待ちわびて向かった。
現存する、世界で最も古い、庶民のために造られた公立学校で、江戸時代前期、1670年に創建された。来年で350年経つんですね。なんとまぁ。
日本三大名庭園としても有名な後楽園を手掛けた津田永忠が、岡山藩主から任され、心血を注いで作ったそうです。

最寄りは、JR山陽本線の吉永駅。岡山駅から、たしか30〜40分程だったと思う。車窓から山が見えて、川が見えて、それだけですでに嬉しかった。
裾野から少しずつ色付きはじめた山が、そばを流れる川面に映っていたりなんかして、そんな風景を眺めながら徐々に気分も高まっていく。

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吉永駅からは小さなバスが出ているので、それに乗って向かうことに。
バスはえんじ色をした9人乗りのワゴン車で、その日はちょうど満席だった。私以外は、ご夫婦だったりご友人とペアでいらっしゃっていて、奇数でうまくはまったからラッキーだった。
バスを待つ間、「どこから来たの?」と自然に会話が始まった。神奈川の同じ沿線に住んでる方や、職場が近い方がほとんどで、岡山まで来てそんなことがあるのか、と驚いた。

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道中、席が隣合ったとあるご夫婦は、何度も訪れていると言っていて、駅から歩きでも行けるのよ。と教えてくれた。
徒歩だと小一時間程かかるのだけれど、徒歩専用の旧道があって、なんとも趣があり良いそうだ。最後にトンネルを抜けてたどり着くから、帰りよりも行きに歩くのが特におすすめと聞いたから、次はこれで行ってみよう。

バスに揺られて10分もすると到着する。バス停からほんの数分、ゆるやかなうねり道に沿って進むと、木々が生い茂る公園の入り口のようなところへたどり着く。木でできた看板に沿って向かう道には、紅くなったもみじあり、チロチロと流れる小川あり。あぁ、ついに来たんだと小鼻を膨らませて、ずんずん歩く。

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そうして見えてくるのが、待望の旧閑谷学校だ。
山々に挟まれ、まるみのある石塀にぐるりと囲まれて建っていた。
屋根に並ぶのは備前焼の本瓦で、一枚一枚微妙に違った渋くて優しい色をしている。

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塀の前には、長方形の池のようなところがあって、色とりどりの鯉が泳いでいた。散ったもみじの演出もあり、多くの人が小さく声をあげていた。
その道の先にあるのが、鶴鳴門という正門だ。そこから覗くと中の様子が絵画のように見えて美しいのだが、この門からは入れない。みんなとりあえず記念撮影をしているので、私も一枚撮ってみる。

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入り口はその右手にあるから、回って入場料を支払うと、いよいよだ。
(この受付で、無料のガイドテープが借りれるようです。※公式HPを参照ください)

入るなり目にしたのは、一面ススキ色に染まった芝生が広がる校庭と、その奥にどんと立つ講堂。右手には、温かなオレンジ色が舞い散る一対の櫂の木。左手奥には、石塀沿いに溢れるように迫る色取り取りの山裾。
誰もいなかったら、アルプスのハイジよろしく、荷物をほっぽり、衣服を脱ぎ捨て、裸足で駆け出したくなるほどの景色が待っていた。

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この先は、実際に行って、銘々楽しんでいただきたいので、詳しくは書きませんが、講堂の中にも実際に上がれるので、300年を超える歴史の中に文字通り身を置くことができます。
透明な拭き漆で仕上げられたぴかぴか光る木の床、すべすべの柱も堪能できるし、江戸時代の誰かもここから同じようにこの景色を見たのかしら、と縁側に腰掛けることもできます。
建物のそこかしこから感じる、熟成されたしっとり感。
丁寧に、丹念に、几帳面に造られた空間は、学ぶことを尊び、そこで育つ未来の藩を支える子供達への愛が、ずっしり詰まった場所でした。

岡山出身の知人は、学生時代にここで合宿をしたそうで。なんと羨ましいことか…!
未だに現役で使われている庶民のための学校。
敷地内には、聖廟や資料館、少し歩くと津田永忠が晩年を過ごした場所や、黄葉亭という小さな茶室もあります。

鮮やかな秋色が溢れる季節の美しさと、江戸時代から続く歴史の濃さを、体全体で存分に味わう、そんな秋の旅はいかがでしょうか。
すてきなおでかけになりますように!
どうぞ楽しんでいってらっしゃい。

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