ショック!!!!

住んでいるアパートの近くにある居酒屋さん。
60代くらいと思われる「ママさん」が営んでいた。
自家製の野菜を使った漬物や煮物のお通しから始まり、炭火焼きの焼き鳥や自家製野菜ギョーザなど、家庭的な滋味滋養あふれる味がだいすきだった。
ソロ居酒屋デビューを決めたのも、このお店。

デビューしたのはことし3月初旬。
ちょうど新型肺炎の話が始まったころで、普段は夫と来ていたわたしの顔をなんとなく覚えてくださっていたママさんが話しかけてくれて、とても嬉しかった。
常連さんと思われるおじさまが、マスクの話をすると「おたくは足りてる?大丈夫?」と気にかけてくれた。
あの温かい心地よい空間は、ずっとずっと続くと思っていた。


情勢が深刻化した春、お店は自主休業に入った。
一ヶ月以上は、明かりのないお店の横を寂しく通っていた。
一度だけ、ママさんが見知らぬおじさまとお酒を飲み交わしていたのを見た。元気にしているなと、ちょっとだけ心が沸き立った。

そして都内の自粛要請が解除されたころ、お店は再開した。
本当はすぐにでも行きたかった。
でも、手狭なお店に行くことはなんとなく躊躇われて、仕事の行き帰りになかの様子を伺う日々が2週間ほど続いた。

我慢も限界になり、夫婦して「そろそろ行ってみようか」と思い立ったその日曜日、わたしたちは店に明かりが灯っていることを疑わなかった。
ところが、目指した先は真っ暗。
あれ、臨時休業かしら?
深く考えず、少しがっかりしながら別のお店へ向かったわたしたちはまだ知らなかった。お店が閉店してしまったことに。

しばらく信じることができなかった。
実は、昨日までまた再開することを信じていた。
看板が取り外され、しばらくそのままの状態がつづき、最近になって内装工事が始まった。
わたしは、改装してまた始めるのかもしれないと、最後の望みにかけた。
かなり、その線を期待していたのだ。

ところがけさ、新たな看板が上がったのを目にしてしまった。
その店名は、明らかに前の店と違うものだ。
ものすごく、ものすごく、ものすごく
表現できないくらいショックだった。
もう、あのママさんに会えないんだ。
自家製野菜を使った、家庭料理を味わえないんだ。
・・・・・・・。

さらに仕事の帰り道、店の前を通りかかると新たな店のオープンに向け、店内で準備に勤しむ男性数人の姿を目にしてショックを受けた。
もう、あのママさんには、本当に会うことができないんだ・・・。

本当に、一期一会とはよく言ったもの。
きょう会えても、あすは会える保証なんてない。
あの居酒屋デビュー戦を決めた日、あのお店をチョイスしたことは偶然ではないのかもしれない。


夫に新しいお店の話をしたら、同じようにショックを受けていて、同士がいてくれて心強かった。
ありがとう、ママさん。
どうかこれからもお元気で。
あなたの心のこもった美味しいお料理をもう一度食べたかったけれど。

shiori    2010.9.18

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