リーグ戦自戦記 アガらなかった8p
こんにちは。最高位戦日本プロ麻雀協会所属、キンマWeb観戦記ライターの後藤哲冶です。
私事ですが、先日プロになって初めてリーグ戦昇級をすることができました。
最終節での出来事が印象的だったので、こうして文字に起こしてみようと思った次第です。
良ければ最後までお付き合いいただければ。
リーグ戦最終節開始
7/1日土曜日。リーグ戦最終節を迎えた僕のスコアは。
+132pt。
現在の昇級ボーダーが70ptで、多少ボーダーは上がることが多いため、80~90ptがボーダーになりそう。つまり僕は、この最終節4半荘で50ptほどマイナスしなければ昇級ができそう、という状況。
しかし打ち方は最終4半荘目まではあまり変えるつもりはなく、あくまでいつも通りやろうという気持ちでいました。
ここまで14日間リーグ戦を経験してきましたが、1日でマイナス50以上を叩いた節は今まで1度しかないため、いつも通りを貫けば基本は問題がないはずだからです。
大きく息を吸って、吐いて。
大事な、1半荘目が始まりました。
東3局南家 ドラ7s
東パツに走った親が45000点ほど持ち、続いて東1局2本場に3900をアガった僕が2着目で迎えた東3局。11巡目を迎えた僕に選択が来ます。
3着目の親がそこそこ速度感のある捨て牌。それに対して下家のトップ目が
この河。
手役を狙っていることがほぼ確定で、最終手出し1mでチャンタ系が濃厚。このトップ目の選手は以前一度対局したこともあり、実力にかなりの信頼を置いていました。
鳴いてもらって、親を流してくれるならなにも問題はない。
僕はイーシャンテンからドラ引きくっつきのために残して置いた8sをリリース。
「ロン」
「8000」
その発声は、もう「チー」では間に合わなくなっていました。チャンタ三色ドラ1。痛恨の8000放銃。「はい」と口に出して。頭を切り替える。後悔も、反省も、今日が終わった後でいい。今は目の前の局面に全力を尽くさなければ。
南4局東家 ドラ西
痛恨の8000放銃でラス争いに巻き込まれた後、それでもなんとか点数を回復させて、3着目と1800点差で迎えたオーラス。
4着目はかなり点数が離れハコ下に沈んでいることもあり、3着目は比較的押しやすい。流局でもノーテン罰符で捲られてしまうこともあり、ここはアガリに向かう必要がある局面。
3着目の北家が、ドラの西を5巡目にリリース。打点は確かに必要ない。それでも、西家に鳴かれるリスクはある。
対して僕の手は全く進んでいない。
……僅かな焦りが僕を襲いました。
「リーチ」
その発声は、意外なことに対面のラス目からでした。
ドラの西は1枚切られ、それに発声がかかっていないことから、西家ラス目からのこのリーチは、素点回復と損切りがメインのリーチなことも多々あります。満貫以上をツモられなければ親被りで捲られることはなく、比較的オリやすい。
手牌が全く進んでいなかったこともあり、ここは北家の動向を見ながら、テンパイは諦めずに、オリに回ります。
「ツモ」
ラス目のツモアガリ。
これが安ければ1番良いのですが……叩きつけられた牌は――ドラの西。
「2000、4000」
ラス目のリーチは、ドラの西単騎。
最悪の、親被り捲られ3着。
18ptのマイナス。まだ慌てるほどではない。ないけれど。
この3着への落ち方に、僕は言いもしれぬ嫌な予感を感じていました。
3半荘目 東2局南家 ドラ2s
僕の嫌な予感は的中してしまい、2半荘目はなにもさせてもらえずラス。
これでいよいよ、後がなくなりました。マイナス50pt。もうこれ以上のマイナスは、昇級の目が無くなりかねない。
そんな中で迎えた、3半荘目の東2局。
3巡目、一旦役なしテンパイを取った後に、持ってくるドラの2s。ここで僕は、8s切りを選択。これならば、37sの2種で三面張待ち、下は愚形でもドラが絡むのですぐリーチに行ける。
そう決めて打った次巡。引き入れるは……最高の3s引き。
「リーチ」
迷うはずもなく。147sの三面張リーチ。
これをツモれば、この3半荘目を少しは優位に戦うことができる。1300、2600からの加点は、この赤がない最高位戦ルールにおいて価値の高い大きなアガリだから。
しかし、5巡目に放ったこのリーチが、待っても待ってもツモれない。
(これくらいツモらせてくれよ……!)
そう願いを込めても、僕の元にアガリ牌は訪れない。
終局間近。僕のリーチに対して押している人もあまりいなかったため、仕方なしに1人テンパイでの流局も受け入れようかと思っていたその時。
「ツモ」
下家が、ツモ発声。
「2000.4000」
……下家の3巡目には、6sが切られており。
僕のリーチ後の河には、9sが3枚。
5巡目にドラ1の三面張リーチを打って、終局間近にまず間違いなく最後の1枚であるフリテン69sをツモられ、2000点の失点。
……目眩がしました。
明確に遠くなっていく昇級。
内から沸き上がって来る言いも知れぬ衝動を無理やり抑え込んで、一度、僕は目を閉じて、息を吐きました。
――まだ、まだ終わっちゃいない。
結局、3半荘目はその後一度もアガリに辿り着けず、4着。
これで、僕のトータルポイントは、15pt。
絶望的な状況にまで追い込まれました。
……けれど、意外なことに3半荘目が終わったこの瞬間、僕はルーティーンと化している休憩中のチョコレートを口に放り込みながら、冷静に状況を整理していました。
(デカトップ条件ね……)
この最終半荘、僕に突きつけられた条件は、大きなトップ。最低でも、5万点以上の。
厳しい条件であることはわかっています。ここまでの3半荘、あまりにも苦しかった。
けれど、卓に座ったらやるしかないから。
頬を、2回叩いて。
最終半荘へ。
4半荘目南2局1本場 ドラ4p
デカトップ条件で迎えた4半荘目は、比較的平らな点数状況かつ、僕がトップ目で進んでおり、あとは最後の親番で大きな手を……と思っていた矢先。
南2局で、親番の上手な選手にあまりにもあっさりと4000オールを引かれ、2着目に。
絶対にこの親でこれ以上走られるわけにはいかない、1本場。
僕の配牌が、これでした。
ホンイツか、チートイツか……一応、僕には親番が残っており。
そこに望みを託す手はある。けれど、高い手は絶対に逃したくない。
僕はここで縦系の手は切れないと判断し、役牌ではない西から切り出し。
南中が2枚切れになって切り出した後、1sと4sを続け様に引きました。
これで僕は暗刻系の手に狙いを絞ります。幸い、7pも8mも、まだ河には出ていませんでした。
山に残っていそうだと思った9pを対子にし、これでターツは十分。あとは、縦に引くだけ。そう思っていた8巡目。僕が引いたのは。
8p引きでの、イーペーコーテンパイ。
8pの安全度は高く、状況が変わるかもしれないため、このテンパイは取る。問題は、アガるかどうか。
親番は、残っている。ここで1600は1900をアガって、親番で勝負というのも、無くはない。けれど、こんな四暗刻を狙える手を、逃していいのか。
親からリーチを受けたら、変わるかもしれない。けれど、今は。
見逃す。それが僕の選んだ答えでした。
次巡、親から8pが切られます。もちろん見逃し。
唯一ピンズの上のターツがわからなかった親が8pをツモ切ってくれたことで、ピンズの上の景色は更に良くなりました。
必死で、山に、手を伸ばします。
(入れ……入れッ……!)
祈るように手を伸ばした先に待っていたのは――
7p。
「リーチ……!」
迷いなど、あるはずもなく。
ツモれば僅かに、僅かに昇級にもう一度手がかかる。
8m9pは河に0枚。引ける。いや、引くしかない。
次々と、周りがオリに回ります。
あとは、山と、僕の勝負。
まだ僕は、自分が誰よりも麻雀が上手いなんて口が裂けても言えない。
麻雀の普及にもっと携わりたいという想いでプロになったけれど、やはり僕も一介の麻雀打ち。
公式対局はやっぱり負けたくなくて。
観戦記とか小説とか、色々自分にできることに手を出してきたけれど、それで麻雀の勉強を疎かにしたつもりは1ミリもない。
でも、もうそんな言い訳じみた事すらどうでもいい。
今日の打牌の反省も、検討も、後でいくらだってやるから。
今は、今だけはどうか。
結果をくれ!!
「8000、16000は……8100、16100……!」
願いの先にいてくれた8mは、今までの麻雀人生で1番嬉しかった。
最終節終わって
意地の四暗刻ツモでなんとかトップこそとったものの、素点が足りずに僕の最終スコアは70pt。ボーダーが上がることを考えれば、これはかなり絶望的なスコア。
結果が発表されるつい先日まで、僕は昇級をほぼ諦めていました。
けれど、実際に結果が出て、ボーダーは変わらず、辛くも昇級。
結果が発表されるとほぼ同時に電話をかけてきてくれた先輩も、グループラインであまりにも早く「おめでとう」と言ってくれた先輩もいて、本当に嬉しく、そしてありがたかったです。
最終節の朝のツイートでも言いましたが、いろいろな活動を通じて、僕自身を応援してくださる方が増えたこと、本当に嬉しく思っています。
お祝いの言葉を頂いた、皆さんに感謝。
こんなnote書きましたが、まだまだ、1つ上がっただけです。
そんな下ッパの分際でなにを大げさな、と思うかもしれません。実際その通りです。
けれど、この一歩の積み重ねでしか、僕たちは進んでいけません。
たった1つ、だけど、大きな一歩。
後期もまた、この大きな一歩を踏み出せるように。
引き続き頑張っていきます!
……以下、おまけ小噺です。
本当おまけもおまけで短いので、僕の事を応援したいよ!!っていう方だけ購入して頂けたらと思います😂
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