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要約 『子どもの「10歳の壁」とは何か?乗り越えるための発達心理学』 著者 渡辺弥生

●ベストフレーズ

9歳、10歳は、「峠」とか「壁」などという言い方でとらえられてきましたが、必ずしも、ネガティヴな意味合いではなく、質的に「飛躍」できそうな興味深い年齢と考えられそうです。 53ページより

●はじめに

本日の一冊は、発達心理学者の渡辺弥生さんの『子どもの「10歳の壁」とは何か?』です。

9歳~12歳は、多くの神経回路が形成される「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期です。一方で、発達には個人差があるため、「10歳の壁」と言われています。

本書はこの「10歳の壁」を理解し、ネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉え直し、必要な支援を行う方法を教えてくれる本です。

●本文要約

1.「9歳、10歳の壁」に根拠はあるのか?

「9歳、10歳」という年齢は学力や運動、他の面でも取り上げられることが多く「10歳で決まる」と書かれていることもありますが、実はその科学的根拠はほとんどありません。

ただ、脳内の神経回路が完成に向かう年齢のため、この年代の子どもの発達を支援する上では、9歳・10歳という年齢を壁として捉えるのではなく、人間として飛躍していく年だと考える方がいいでしょう。

例えば「脳の前頭葉の大半は9歳までに出来上がるため、9歳までの子育てが大切」「音読や計算をすることで脳の発達が促される」と書かれていると、9歳や10歳までに脳の発達にいい音読や計算をしなければいけない、と思いがちです。ですが、「音読や計算=脳の発達にいい」ことは「それ以外の黙読やグループワークなどの教育方法=脳の発達に効果がない」ことを証明しているわけではありません。

9歳・10歳は第二次性徴により急激に身体が変化し、心も不安定になりやすい時期なので、社会性と道徳性をバランスよく育てる必要があります。社会性を育てる支援としてはソーシャルスキルトレーニング、道徳性を育てる支援としてはVLF思いやり育成プログラムがあります。

このように変化が激しく、成長の個人差も大きいため、親や保育者からすると、それまでとは違った対応を求められることが多くなるため、「壁」と表現されてしまうようです。

2「9歳・10歳」は過ぎると手遅れなのではなく、飛躍の年。

9歳、10歳は、「峠」とか「壁」などという言い方でとらえられてきましたが、必ずしも、ネガティヴな意味合いではなく、質的に「飛躍」できそうな興味深い年齢と考えられそうです。(一部略) 53ページより

学力や運動、その他の面で「9歳、10歳の壁」という言葉が使われています。しかし、なぜ9歳・10歳なのかという根拠はほとんど書かれていません。例えば「神経系は10歳まで成長するけれども、その後は変わらないため運動神経は10歳までが一番伸びる」と書かれた記事もありますが、それは「10歳までに運動させた方がよい」ということには必ずしもつながらないのです。また、9歳・10歳つまり小学4年生前後に、計算はできるけれども文章題は難しいなど、勉強についていけなくなる児童が増えるといわれています。ですが、教育の世界ではこれは9歳・10歳を過ぎるともう手遅れという意味ではなく飛躍の年であると捉えられています。

3.「9歳・10歳」は、心身ともに様々な変化がある年

いたずらに、ビジネスのために利用されるような、臨界期としての年齢ではなく、より積極的に、親や教育者が「おもしろい」と思ってかかわっていきたくなるような魅力的な年齢であると理解していただきたいと思うのです。 57-58ページより

9歳・10歳というとどんなイメージがありますか?子どもだけれども、扱いにくい年ごろと思う方も多いかもしれません。この時期の子どもは、第二次性徴により身長や体重が一気に増加していき、自分ではどうにもできない身体の変化がおとずれます。また、自分も他人も信じきれない不安定な心の変化も起こりやすく、暴力行為やいじめなどの行動にも表れてくることがあるのです。そして「自分とは何か」などの抽象的なことについても考えられるようになり、「友情」という概念が強くなるため友達からどう見られているか気になったり、行動を友達に合わせるようになったりします。9歳・10歳は心身共にいろいろな変化がある大切な時期だと考えられるでしょう。

続きは以下リンクからお読みいただけます。(残り5200文字)

4.9歳・10歳の「自分」
5.9歳・10歳の「考える力」
6.9歳・10歳の「感情」
7.9歳・10歳の「親より友情」
8.9歳・10歳の「自分以外」
9.「社会性」と「道徳性」
10.社会性を育む「ソーシャルスキルトレーニング」
11 道徳性を育む「VLF思いやり育成プログラム」

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