見出し画像

要約 『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』 著者 出口保行

同じ言葉でも、 受け止め方は同じではありません。180度違うことだってあるのです。そこに気づかなければなりません。 100ページより


●はじめに

よかれと思って子どもに「呪う言葉」を使ってませんか?

本書は、親がついつい使ってしまいがちな便利な言葉が、適切に使われなかった結果、犯罪に走ってしまった子どもたちの実例を挙げながら、犯罪心理学者の著者が子育てでやってはいけないことを解説した本です。実際に起きた事件を引き合いにして、「その時その言葉を言われた子はどういう風に受け止めたのか」を紹介しています。自分の子育てに自信がある人、逆に自信がない人、どちらにもドキリとさせる、そんな一冊です。読んだあとは必ずいつも以上に丁寧に子どもの話を聴きたくなるでしょう。

●本文要約

1.呪う言葉とは?

子どもに社会の最低限のルールを教えるのは大人や親の務めです。また、子どもに期待しない親はいないでしょう。しかし、親が良かれと信じて伝えても、子どもの反応は、思った通りでないばかりか、反発したり、非行や犯罪行動となって表出してしまうことさえあります。なぜでしょうか?

例えば、ワタルは両親から「みんなと仲良くできない子はダメ」と言われ続けてきました。一方的に「みんなと仲良く」を言われ続けたワタルは常に人の顔色をうかがう子になってしまいました。ワタルのように自己主張を許されなかった子は、人を批判できないため自己決定する力が弱く、悪い方へ流されやすくなります。ワタルは「この子とは仲良くできない」という大事にすべき自分の本心と、「仲良くしなければならない」というしつけの間で引き裂かれますが、親に愛されたい一心で、自分の本心を捨ててでも、周りに合わせる人間になりました。一見、「みんなと仲良く」できても、ワタルは幸せでしょうか?社会に出ていけるでしょうか?無論、幸せでもなければ、社会に出たら悪事に巻き込まれるかもしれません。このように、一見正しくても、子どもを不幸にする言葉が「呪う言葉」です。

2.理想を押しつける親の声かけは、子どもを追いつめる

なぜ親が良かれと思った言葉が「呪う言葉」に変わってしまうのでしょうか?これには親の「確証バイアス」と子どもの「主観的事実」、という2つの要因が関係しています。

確証バイアスとは、心理学用語で、自分が正しいと思うことを支持する都合のいい情報ばかりに目が行くことです。親が理想を押し付ける時、多くの場合「確証バイアス」が働きます。この「確証バイアス」の問題は、思考が「理想」や「常識」のような「思い込み」に偏るため、小さな「違い」や「変化」という、目の前の現実に気づけなくなってしまうことです。ワタルと親の場合なら、ワタルは、「もっと自分を見てほしい」「認めてほしい」というメッセージを伝えるために、ちょっとした口答えや、やるべきことをやらなくなるなど、小さな変化で苦しみを表現していました。しかし、「確証バイアス」に陥った親は、ワタルが苦しんでいるという現実に気が付かないか、気が付いても「そんなはずはない」と理想や常識で、わたるの苦しみ、という現実を塗りつぶそうとします。

一方で、親から「みんなと仲良くできない子はダメ」と言われたワタルは「自分と合わない人がいてはいけない」「自分の好き嫌いで人を選んではいけない」と思ってしまいました。この親のメッセージに対する、ワタルの解釈を「主観的事実」といいます。本来、親はワタルに対して、「人の好き嫌いがあってもいい、でも嫌いでも仲良くはできる」、と伝えなければなりませんでした。しかし、「言われた通りにできない子」、「反発する子」に対し、「確証バイアス」が働いている親は、さらに「お兄ちゃんなんだから」「もう中学生なんだからできるはず」というように役割を期待する声がけを重ねます。すると、ワタルのように親に愛されたい、期待にこたえたい、と頑張る「いい子」ほど、「できない自分」に苦しみ、自責を募らせて、追い詰められてしまうのです。

3.非行少年、非行少女に共通する「事前予見能力」の乏しさ

続きは以下リンクからお読みいただけます。(残り約4900文字)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?