人魚姫との恋3話

夕方、律が宿舎に帰宅。

「リツちょっと来い!」と永遠(トワ)に呼ばれてダイニングの椅子に座らされた。
「今から俺の質問にはちゃんと答えろ、いいな」と強い口調で言われてドキッとした。
「今日は何処へ行ってたんだ?」永遠が僕を真っ直ぐに見て聞いた。
「友達と会ってた」僕は考えながらそう答えた。
「男?女?」そう聞かれて俯いたけど

永遠の視線を感じて僕は言った。

「女…彼女…」そう言うと永遠が「ふーん、お前いつの間に彼女出来たの?しかもあんな可愛い彼女いつ見つけたんだ?」他のメンバーもクスクス笑いながら僕を見ていた。

「何で知ってんだよ」

僕はみんなを見て聞いた。

すると輝(ヒカル)が僕を見て言った。
「最近お前俺達に内緒で時々出かけてるだろ?気になって跡付けていったんだよ」輝の言葉にムッとして僕は言った。
「マジかよお前ら」陸が宥めるように「まぁまぁみんなお前を心配してんだよ」「あんな可愛い彼女何処で見つけたんだ?」直人が聞いてきた。
「この前スランプの時に湘南へ行った時に知り合ったんだよ、彼女も一人で来てて…」僕は正直に話した。
「いくつなんだ?」永遠が聞いてくる。「18大学生なんだよ、めちゃ良い子でさ」僕は朱里の事をみんなに話した。
輝が「お前さぁあれから変わったよね、トゲトゲしさが無くなって丸くなったよ」そう言ってくれて僕はちょっと嬉しかった。「仲間なんだからちゃんと紹介しろよ?」永遠に言われて「わかった今度連れてくるよ」と僕は言った。寝る前に朱里とLINEのやり取りをしていて今日の事を話すと朱里もビックリしていたが「みんな優しいのね。リツさん愛されてますね」と言った。
「今度連れてくるって言ったんだけど、みんなに会ってくれるかな?」
僕は朱里に聞いた。
「はい、恥ずかしいけど、ぜひお邪魔させてください」
朱里はそう言ってくれて妙に嬉しかった。それからしばらくして僕は朱里を迎えに行き宿舎に連れてきた。水色のワンピースを来て長い髪をポニーテールに結んで僕の好きなスタイルだった。
ドアを開けるとメンバーが勢揃いしていて一瞬朱里は恥ずかしそうに俯いた。
そして「初めまして花村朱里です」とみんなの顔を見渡してからお辞儀をした。
みんなが「いらっしゃい」と言って中へ案内してくれた。家事をしてくれているマネージャーがお茶の準備をしてくれていて彼にも朱里は丁寧にお辞儀をして挨拶をした。「あのこれシュークリームとクッキーを作ったので良かったらみなさんでどうぞ」と差し出した。永遠が受け取って「ありがとうございます。頂きます」とにこやかに言った。それから一人一人自己紹介をして朱里が持ってきてくれたシュークリームとクッキーを食べながら話をした。「えっ美味っ、皮サクサク中トロトロ好きだわ」輝が嬉しそうに言った。「うん最高だね。幸せありがとう朱里ちゃん」と直人が言うと他のメンバーもお礼を言って朱里は照れながら嬉しそうに笑った。

「あのね来週姫が帰ってくるから会わせるね」僕は朱里に言った。
「姫?」朱里は首を傾げて聞いた。
「あっ僕の姉貴、今韓国に住んでて歌やってるのKIMRIO」僕は朱里に姉貴の事を話した。「あぁ知ってます。リオさんきれいですよね、私リオさんの歌好きです。お会い出来るの楽しみです」朱里は瞳をキラキラさせて話した。」永遠が「姫帰ってくるのか?」嬉しそうに聞いた。「うんひと月位いるみたいだよ」「そうなのか?良かった」永遠は嬉しそうに呟いた。「トワは姫大好きだもんな」輝がそう言うと「うん、好きだよ姫ほど素敵な人はいない」と遠くを見る瞳で言った。

「お姉様素敵な人なんですね?」と朱里が僕に聞く。

「うん、優しくて自分の事より人の事ばかり気にする人だよ、きっと君も気に入ると思うよ」と朱里を見つめて言った。
翌週日本での仕事の為に姉の莉音が韓国から帰国した。仕事が立て込んでいたがポッカリと夕方から時間が出来たと聞いて僕は朱里を呼び出して姉貴に会わせた。しかもそこにはマネージャーをしている長男の瑠偉兄と蓮兄、カメラマンの華偉兄もいた。
姉貴はソウルでモデルとして活躍し歌もやっている。あの有名な世界的大スターBTSの妹的存在。メンバーの長男キムソクジンは僕達の従兄に当たる。ソウルで生まれ育ちBTSARMYとして有名な姉貴はモデルや歌の他にもジュエリーや洋服のデザインも手掛けていて日本に帰る事は殆どないほどの忙しさだった。
朱里は緊張した表情だったが優しく微笑み挨拶をする姉貴に釘付けだった。
「花村朱里です、よろしくお願いします。お会い出来て嬉しいです」とお辞儀をした。
姉貴は嬉しそうに笑った。
「リツいつの間にこんな可愛い彼女見つけたのよ、めちゃリオのタイプだわ」と朱里を抱きしめて言った。
「朱里ちゃん、お会い出来てリオも嬉しいわ仲良くしてくださいね」と朱里に言った。「はいこちらこそよろしくお願いします」と朱里は頬を染めて嬉しそうに笑った。
初対面とは思えないほどふたりは意気投合し連絡先の交換までしていたし兄貴達も僕には勿体無いと豪語した。気に入ってもらえて良かったと僕は胸を撫で下ろした。
「ひと月くらいいるから今度ゆっくりお食事でもしながらお話しましょうねふたりの馴れ初めとか聞きたいし」
姉貴がそう言うと朱里は嬉しそうに返事をした。それからアルバムのレコーディングやMV撮影等が有り多忙な毎日を過ごしていたが、朱里とはちゃんとLINEや電話での連絡を取り合っていた。

僕は時間がある時はこっそりと宿舎を抜け出して朱里をドライブに誘った。

「ごめんね、昼間青空の下でデート出来なくて」朱里に言うと彼女はニコッと微笑んで僕を見つめて言った。

「昼で無くてもいつだって律さんに会えたら顔を見れたら嬉しいし幸せです。こうして傍にいられることが嬉しい」

ふたりが出会った海へ来ていた。

空には輝くような満月があって月明かりの下で僕は彼女を抱きしめた。

「朱里…大好きだよ」そう言って彼女の顎に指をかけ上を向かせてそっと唇を重ねた。甘く優しいファーストキス。

唇を離した時彼女は僕を見つめて「私も大好きです、律さんの傍にいたい」

そう言って恥ずかしそうに俯いた。

僕は可愛くて堪らなくてもう一度Kissを落とした。「あの時ここへ来なかったら朱里に会えなかった、運命だよね」

そう言うと繋いだ手をギュッと握りしめて「はい、出会えて良かった律さん」

僕達は月明かりの下でいろんな話をした。「朱里僕ねこんな仕事してるから普通のカップルみたいに外でデートしたり出かけたりは出来ないけど君の事は大好きだし大切にしたいと思ってる、こんな僕でも付き合ってくれる?」僕は自分の気持ちをちゃんと朱里に話した。

「はい、正直私がいることで律さんに迷惑かけたり見つかったりしないか心配はあります。でも私律さんが大好きです。律さんの傍にいて律さんがいつも安らげるような存在でいたいです。傍にいさせてください」朱里は真っ直ぐ僕を見つめてそう言った。僕は朱里を抱きしめてそっと唇を重ねた。唇は1度離れて今度は深いKissを落とした。

月明かりと静かな波の音が僕達を包んでいた。

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