国内での女子フットボールの地位を確立するためにも今回のW杯はイングランドに勝ってほしい

前回のブログ更新からずいぶんと経ってしまいました。

ちょっとブログが死んだっぽいのでnoteに初投稿します。(ブログの記事は読めるんですけど投稿ができない…)

今回は、06/07に開幕したばかりの女子ワールドカップについて。
それもイングランドの女子サッカーについて。

みなさんはイングランドにおける女子サッカーってどれくらい知っていますか?
軽く自己紹介しますと、僕は今シーズンイングランドで大学女子チームの監督をしてました。この役割につくまで、女子サッカーについてまあ何も知りませんでした。イングランドにほぼ3年いるんですけど、それくらいの認知度なんです。
となると日本ではイングランドの女子サッカーについてあまり知られていないのでは?と思い、この記事を書いています。

イングランドの女子サッカーはいま、大きく成長しています(現在FIFAランキング3位)。2018-19シーズンから1部リーグ所属選手は全員がプロ契約。来シーズンからもリーグが大きなスポンサー契約を決め、急成長しています。

ただ、ここまで来るのは本当に長く険しい道のりでした。
現実はまぁ大変です。
僕は大人の男子チームを指導したことがないので単純な比較をすることはできませんが、受ける扱いとか。
僕が指導しているチームでは、ピッチの外で見てる男性から性的にひどいことを言われた子もいます。
男子チームが練習するのはきれいな人工芝、僕たちはデコボコの芝生。といった具合に。

イングランドはサッカーの母国と言われていますが、イングランドにおいて女子がサッカーをするっていうのは、実は大変なことなんです。
そこには歴史とかが絡まってくるのがややこしいので後述しますが、
これまでの苦労やら今の成長を見ていると、今回優勝しないとイングランドで女子サッカーが国内で文化として根付く機会を手にすることが、しばらくないんじゃないかと思ってしています。
その辺の歴史的背景も探りながら、実際に指導していて感じたことも踏まえつつ、なぜイングランドに勝ってほしいのか、ということを書いています。

なぜイングランドでは女子がサッカーするのが大変なのか(だったのか)

1. 元々イングランドではサッカーは男性がするスポーツという認識が強い
これは歴史を紐解いていかなければいけません。
イングランドではサッカーは教会、職場(工場)、パブにいる人たちでチームが編成されていったと言われています。主に工場などで働いていた労働階級の人たちの間で。(有名なところでアーセナルとか)
なのでそもそも「女性がサッカーをする」という発想が当時なかったんですね。女性は家に入って家事をすることが一般的だったので。
そして子ども(男の子)はその大半の時間を母親と過ごすことで女性的になると考えられ、スポーツをすることによってマッチョにしようと大人は考えるわけです。イングランドにおいてもっとも一般的なスポーツはサッカーなので、サッカーは子どもマッチョな男性を育てるツールとしても使う。結果サッカーはより女性からほど遠いものと考えられていたわけです。
(ここでいうマッチョは体型ではなくメンタルのことです)
これは昔の社会構造上しょうがなかった部分です。

2. 女性のサッカー禁止
これはサッカー協会(The FA)が正式に出していたルールです。1921年から71年までの50年間、女性はサッカー協会管轄のグラウンドではサッカーができませんでした。
要するに排除されていたわけです。
この50年の間にFAが認めなかったので、「サッカーは男性がするもの」という認識が一般化してしまいました。
実際にいまでも女子にサッカーを認めない学校もあります。
(その記事はこちら

3. レズビアンという偏見
さきほど1でも書きましたが、イングランドにおいて(多くの国において)サッカーは男性がやるスポーツだと考えられています。
そのため、サッカーをやる女性は「レズビアン」のレッテルを張られます。
これは男性的なスポーツをやる女性は男っぽい、つまり「レズなんじゃないか?」という間違った考え方が広まったと思っています。
こう思われたくないからサッカーをしないという選択になるわけです。

実際レズカップルはいます。それは社会としてふつうのことです。
うちのクラブにもいます。サッカーは社会の一部ですから。
うちのクラブにおいてはみんながそれを認めている素敵な環境です。ただ、選手たちは一歩外にでたら、偏見にさらされているのでは、という不安と戦っています。
(もちろん自分に誇りを持っている選手もいますよ!)
レズビアンじゃないのにレズビアンというレッテルを張られる選手もいるということです。

これらの理由から、イングランドにおいては女子サッカーがあまり広まりませんでした。
もしサッカーをやっていたとしても、女子サッカーは15,6歳になると急に競技人口が減るという問題もあります。
それは上記の理由から来るロールモデルの不在といった影響が考えられています。あんな選手みたいになりたいってやつです。
実際に僕が指導しているチームでも、2-3年、もしくはもう少し長くサッカーやってなかったっていう選手はいます。
しばらくやってなかったけど、大学にサッカー部があるからもう一度始めようかな、という感じです。
サッカーに戻ってきてくれるだけでも本当にありがたいんですけど、やっぱり継続してサッカーがでいるような社会であってほしいなって思います。

そのためにも、今回のワールドカップでイングランドが優勝すれば、彼女たちがロールモデルになり、競技人口が増加してくれたり、ドロップアウトもなくなり、3で述べたような偏見がなくなり、この国において女子サッカーが文化として根付いてほしいと期待しています。(もうすでに文化があるのかもしれませんが…)
これまで禁止されていたスポーツをのびのびとプレーして、男子が50年以上遠ざかっているワールドカップのタイトルを獲得してほしいです。

最後に。
この記事はなでしこジャパンをとがめるものではありません。
イングランドの実情を知ってもらいたかった、という思いで書いたものです。
現在のなでしこの監督、高倉さんが現役時代、それはそれは大変だったと伺っています。
しかしこっちで指導している者として、イングランドが今回のワールドカップを優勝することでイングランドの女子サッカーが正当な評価を受ける思っています。
ただただそれだけです。
今回のワールドカップで女子サッカーは世界的に盛り上がっています。このチャンスを逃さず、地位を確立できれば最高だと思っています。
長いブログをさいごまで読んでいただき、ありがとうございました。

06/19の日本vsイングランド、好ゲームを期待しています!


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