見出し画像

秋の始まりの、帰り道

夜の六時半頃。

いつもなら、とっくに家でお風呂掃除をしている時間なのですが、昨日は五時半に親知らずの抜歯をしたので、帰るのが遅くなりました。

左の上と下の歯、二本抜いたので、その抜いた部分や舌や唇が麻酔で痺れて、熱を帯びます。なんだか、歩くのさえも慎重になってしまいました。

病院から駅の方へと歩く中、風は既に秋のどことなくそっけない、でも軽やかで心地いい感じが含まれています。まだ昼間は汗ばむことはあるけれど、夜になると表情を変えるんだなと、一人でゆっくり歩きながら思いました。

私は一人で歩くときに、行き交う人たちや、建物や、街路樹等々、目に入るものをよく見てしまいます。特に駅前になると、人がたくさん溢れかえっていて、色々な人の人生がここにたくさんあると思うと、じっと見てしまうのです。

昨日も、駅前には大学生のサークルのような集まりがいたり、帰り途中のサラリーマン、塾に向かう学生たちがいました。

最近は帰宅ラッシュの時間帯から外れた時間に帰るからか、その光景が少し懐かしかったです。みんな他人で、向かう場所や話している人も違うけれど、1日を無事終えられたことにほっとしたり、悩んだりしているのかな、とか考えました。

自宅の最寄駅に着いてスーパーに向かう途中、通勤用のリュックを背負ったお父さんが小さな息子になにか話しかけて、歩いている姿がありました。

「このお父さんも会社を出て、保育園で息子に会って、そしたら疲れも忘れて、『今日はどんなことしたの?』とか聞きたくなったりするのかな」と、勝手に想像を巡らせます。

人混みはそこまで得意ではありません。

でも、色んな人の、色んな人生があると思うと、悩んだり、苦しんだりしているのは自分だけではないよなと、たくさん人を見ていると思えたりします。

恋人とか、友達とか、家族とか。そういう人たちに喋って、愚痴を言って、悩みを言って、笑ったり泣いたりして、みんな生きている。

そんなことを考え、自分のアパートへの道へと、自転車を漕ぎ進めました。やはり心地よい秋の風に当たりながら、ゆっくり深呼吸してみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?