中央が出ていけない守備はボコられる
ここ最近で見たいくつかの試合で同じことを感じたのでそれを記事に。
感じたことはタイトルそのまま。
『中央が出ていけない守備はボコられる』という話。
お互いに[4-4-2]よりだけど[4-3-3]っぽくもなるような配置にしてみた下の図。
最近見たのがその2つのシステムだったから中間にした。
白がボールを持ってて黒が守備。
守備(黒)のこんな状態をよく見た。
で、その中のこの黒丸エリアにいる二人。
この二人はきっとDFライン(CB)の前を埋めてるつもりなんだと思う。
でもね。
その結果なにが起きてるかというと。
この白エリアの中で、そこにいる黒4人が遊ばれて、その白エリアの中で白チームに無限の時間を与えることになってるわけだ。
こうやって遊ばれちゃう。
黒はそこで作られた時間を使われて、自ゴール前まで簡単にボールを持ってこられることになる。
そうやって全体が下げられちゃうし、前の人数も薄いから、奪った後のカウンターも1〜2人で行って来い!になってしまう。
そんな試合が実に多くあった。
これはね、もちろんチーム戦術によるけど、だいたいはこんな感じにするべきなんだ。
これぐらい中央の選手が出ていかなければならない。
(比較用↓。↑の黒は、ボールに一番近いのとGK以外は全体的に前に出てる)
↑のやつみたいにすればやることは忙しくなるが、相手に自由な時間を与えることは減り、操られづらくなるから体力的にも楽になる。奪った後を想像してもらってもだいぶ違うと思う。
じゃあなんでそれをしないのか。
いくつか原因があると思ってる。
【原因1 = 自FWが多くの相手を担当することが当たり前になっている】
「中間ポジション」や「背中でコースを消す」っていう守備技術が信用されすぎているのか、「FW(またはSH)は1人あたり2人の相手を担当するものだろ?」っていう状態になっているパターン。
それらの守備技術は、チームでより効果的に早くスペースを埋められるための技術であって、1人で2人を担当するためのものじゃ無いんだよね。
でも1人で2人を担当させられてるのをよく見る。
【原因2 = 中盤中央の選手がCB前のスペースを埋めることで仕事した気になっている】
CBの前のスペース(黒丸エリア付近)を相手に使われるのは危険、というのは間違いない。
だけど、そこにボールが来なければいいし、もしくはボールが来た時にそこに居られればいい。
「自分は最も危ないスペースを埋めてるんだぜ!」とか言われても、最初からそこにいる意味はあまりない。
というか最初からそこにいるから、他の場所を自由に使われて、結果的にその危険なスペースを使われることになってしまっている。そこに気づいているかどうか。
そのエリアにボールが来たら「ほらきた!」とか思うのかもしれないが、自ゴール前まで押し下げられてそのエリアにボールが来るまでに、もっとやれることがあったのでは?と考えて欲しい。
もしくは出ることを怖がっているのかもしれないが、もし前に出た後にその後ろをパスで使われてもコースを切ってれば間に合うでしょ?
自由に組み立てられるのとどっちが怖いか、考える必要がある。
この「下がったそのポジションにしか居られない」という中盤中央の選手を”アンカー癖のある選手”とでも言っておこうか。
世界的なアンカーはグイグイ前に出てるけどね。
【原因3 = 味方が仕事をしていない、味方を信用できない、味方を感じていない】
上の「前に出た後にその後ろをパスで使われる」ケースは、出た選手の後ろにいる味方が前に出て処理することも出来る。
そのためにディアゴナーレもあるんでしょ?(ディアゴナーレの参考↓)
ちゃんと前からプレッシャーがかかっていれば、その分狙いを絞ってボールにアタックしに行きやすい。
だからDFラインが上がってることも大事だし、DFラインが前にアタックに行けることも大事。
それが期待できなければ、中盤中央の選手は出ていくことは難しい。
特にラインが下がっていると、中盤中央の選手が前に出るのはとても怖い。
危険なエリアががら空きになってしまうから。
DFラインが上がらない原因は、DFラインが背後を取られた時に対応する自信がない場合が多い。
CBの速さだったり、GKの前に出ての処理能力だったり。
で、味方がどうこうって言うと。中盤中央の選手も「FWがちゃんとプレスかけてボールの動きを制限してくれないと自分は前に出れないよ」とか言い訳することもある。
もちろんその主張が正しい時もあるが、DFラインが前に出ないと自分(中盤中央)が前に出れないのと同様に、中盤中央が前に出ないとFWも前には出れない、ということも知るべき(味方の位置を気にしながら取りにいけるFWに限る)。
良いCBやGKを獲得するとチームが強くなるのがわかる。
良いCBGKが居る → DFラインが上がる → 中盤が前に出れる → 前線が取りにいける = 相手の自由を消せるし、奪ったらカウンターがしやすいし、追いかけ続けることが減るから疲れづらい
という具合に。もちろん攻撃の組み立てでの貢献の部分もあるけど、それは置いておく。
ラインの上げ下げがこまめに正確に出来ることは、強さに結びつくということでもある。
【原因4 = チームの原則を変に守る】
最近主流になった、ゴール前の決められた位置に戻って守るやり方。
自ゴール前でクロスを上げられそうな時などにその定められた場所を埋める、という原則(約束)がチームで決めれているやり方。
「空中線に強いCBが外にボールを奪いに行くよりもゴール前に居た方が良いから」「近年増えてきた速いゴロのクロスに対してそのコースを消せるから」、などの理由からそれが当たり前になってきた。
失点の確率を低くする、とても効果的なアイデアだと思う。
だがしかし、この原則を設けることで、それに囚われてポジションがズレて不利を生み出してしまうケースがある。
この記事のタイトルは『中央が出ていけない守備はボコられる』。
そう、この記事は「中盤中央が前に」という話だけではなく、「自ゴール寄りに位置取りたくなるCBや中盤中央が、自分の定位置を離れて前や横に」出ていけるかという話。
DFラインの上げ下げの話もCBが上げられるかどうか、と捉えられる。
ということでこの原因4はCBの話も。
で、その原則によって不利を生み出してしまうケースの一つが、下の「いや、まだ早いだろ」。
先に戻ろうとしすぎて、危ない場所が空いちゃう。ビックリマークの中盤中央が慌ててそこをカバーしに行く。
こうしておけば、さっきの慌ててカバーしにいった選手は、相手のバックパスを狙ったり、奪った後のカウンターに備えることも出来るのに。
CBが前にも横にも出て行けるかどうか、というところ。
その原則によって不利を生み出してしまう他のケースは、この「決まったところにいるけど、それで守れてる?」。
危ない位置にフリーの相手選手がいるし、数的不利も作られてる。
それでも定位置を守って正解な場合もあるけども、優先順位としてそれは合ってるのか?と思う場合も多々。
例えばこうやってズレれば、ピンチも減るんじゃない?
たしかに三角形の頂点の担当が違う選手になってしまうけども、そこを必要とする前の段階を軽視して結果的にそこに良いボールを入れられたとしたら、結局誰が三角形の頂点をやっててもあまり効果が無いでしょ?っていうね。
ちなみに、空いてるところをFWに守らせればいいじゃん!っていう発想もあるだろうけど、それをしたら奪った後にカウンターに出づらいし、そうするとまた奪い返されやすくなっちゃうよ。
【原因5 = コンディションや試合中の変化によるもの】
いつもはやってても、その日の調子が悪ければそれが出来ない、なんてこともある。
中央が前に出るという行為は、思っている以上に勇気のいるプレーだったりする。だから少しの迷いがちょっとした遅れを作り出したりして機能しなくなることもある。
身体の調子が悪くて前に出る一歩が遅れる、ということも珍しくない。
そして、その前に出るタイミングが中途半端に遅れると、相手にとってはちょうど入れ替わって置き去りにできる、逆の効果になったりもする。
試合の序盤でそんな体験したら、その日の試合ではもう前に出るのは難しくなる。そこから崩れるのは上記の通り。
他にも試合中の変化でそうなることもある。
戦術変更なんてのはもちろんだけど、他にも例えば、点差だったり、交代選手だったり、天候の変化だったり、会場の雰囲気だったり、そういった変化もある。
試合の序盤で上手くいってても、途中で相手のワンプレーで前に出ることが裏目に出るようなシーンがあれば、そこからは一気に上手くいかなくなる、なんてこともしょっちゅうある。
強い選手がいるチームは、そういう相手の意識をひっくり返すプレーの確率が高いので、「なんだかんだで勝つよね」みたいなことが起きやすいのかもしれない。
習慣化されたものも、強烈な心理的ストレスによって乱れるってわけですね。
はい。
ということで。
『中央が出ていけない守備はボコられる』改め、『守備の時中央も出ていけよ』という話でした。
今回は4バックで話したけど、5バックの中央とか、あとは小学生の8人制の[3-3-1]のDFとMFのそれぞれの中央なんかも、前に出て行く守備が出来るかどうかは結局大事。
記事を読んでいただきありがとうございました!
さて、そんなあなたの推しチームの中央は守備の時に出て行けてますか?
出て行けてなかったとしたら何が原因でしょうか?
(プロの試合の映像だと、原因を見たくてもDFラインが映ってなかったりしますけどね)
もちろん出て行けてなくても上手くいっているのであれば問題ないですね。
終わり
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