理論上の理想の攻撃配置


テーマは「攻撃時のコンパクト」

画像① 広い
画像② 狭い


この画像①と画像②の違い。
見た通り攻撃側(赤)の距離が違う。
画像②にある黒い線は目安として30mを表している。

一般的に攻撃においては画像①のような広がりが推奨されているが、実は画像②の方が効果的ではないか?という話。

理由

画像③ 広い+矢印
画像④ 狭い+矢印


画像③④は画像①②に矢印を加えたもの。
その画像③と画像④の矢印を見比べてみてほしい。
画像③はボールを蹴る距離も、人の移動距離も、画像④に比べて遠いことがわかる。

それによってゲームにどんな影響があるか。
画像③の方が画像④に比べて

  • キック力とキックのスピードが求められる

  • その強いキックをコントロールするテクニックが求められる

  • 相手守備を広げることができる

  • 1対1が生まれやすい、攻撃側個々のスペースは生まれやすい

  • 孤立した状況で味方のサポートを得るための時間を作る必要がある

  • サポートする味方は長い距離を早く移動する必要がある

  • 守備陣形からは離れた形、奪われた後のプレッシャーは遠い

といったところか。

守備側が「コンパクトに守りたい」という望みがあるなら、画像④はわざわざそれを叶えてあげているとも言える。

では実際にそれが守りやすいのかどうか。
広がった攻撃に対して、コンパクトな守備は局地的に数的優位を作れるため効果的と言える。
でもそのコンパクトな守備の中に入り込んで攻撃側がさらなる局地的な数的優位を作った場合、守備側はさらにコンパクトにすることができるのだろうか。
実はここに守備側の限界がある。
ピッチ横幅で言うセンターあたりならそれも可能なのかもしれない。
だがサイドではどうだろうか。
極端な横幅のコンパクトさは逆サイドのフリーを生み出し、その時の逆サイドとはセンター付近に位置する攻撃選手になり、つまりゴールへの高速道路となってしまう。
またセンターだとしても、それが守備側ゴール前であれば、極端なコンパクトで守った場合はペナルティエリアへの侵入を簡単に許すことにもなってしまう。

そもそも守備とは「広く守れるなら広く守るに越したことはない」が本来の形。
「守備をコンパクトにする」とは数的優位とスペースの管理上で仕方なく実施しているもの。
全員がギュッと固まれば、守備の連携が難しいだけでなく、奪った後に攻撃に転じることも難しくなる。

と考えると、攻撃こそ無闇に広がらずにコンパクトにするべきではないか。
WGなどで幅を取る意味とは、相手守備陣形の中央にスペースを作るため、もしくは突破力のあるWGに1対1を作るため、と言える。(高い位置だと、相手DFラインをロックするためもある)
では、相手守備陣形の中央に十分なスペースがある場合、WGの1対1の勝率が低そうな場合、には広がる必要性が低いと言える。

また、ボール扱いの精度についても。
距離が遠くなるほど必要とされるキックの難易度が高くなる。
ダイレクトキックにしても当てるだけならより簡単だが、強く実行しようとするとかなり難しい。
受け手も、全力疾走で受けるのか、2〜3歩動いて受けるのか、であれば後者の方が簡単だ。
ロンドトレーニングでパスがポンポン繋がるのは、狭い距離間で且つ走らないため、精度の高いボールを体勢が崩れることなく迎え入れることができるからと言えるだろう。

もちろん「コンパクトになればなるほど良い」というものでもない。
ボールを通して扱えるスペースを作るための距離間は必要だ。
狭すぎれば、守備側が邪魔になるどころか、攻撃側の味方が邪魔になる。
人とボールのサイズは決まっている。

さて、ではこれらの前提を踏まえて、各高さによる配置の違いを画像で見てみよう。
ちなみに前述の画像①②③④は中盤付近、いわゆるミドルサードと言われる高さでの状況。

画像⑤ Dサード 広い
画像⑥ Dサード 狭い
画像⑦ Aサード 広い
画像⑧ Aサード 狭い


他の高さでも狭くすることによるメリットは得られそうだ。
ではAサードから更に一歩踏み込んでゴール前の様子も見てみよう。

画像⑨ ゴール前 広い
画像⑩ ゴール前 狭い


画像⑨では、ここからの突破力や相当精度の高いクロスが要求されるだろう。
主観ではあるが、画像⑩の状況の方がゴール期待値が高いと感じられる。
画像⑩が理想なのは間違いない。

とはいえ画像⑩の状況を作るのは簡単ではない。
こんなにすんなんりペナルティエリア内に入れてもらえたら苦労しない。

画像⑩の状況を作るには、画像⑨のようなサイド広がった位置から、かまぼこ(ペナルティアーク)付近を経由して、ペナ内に位置した逆サイドにボールを入れる、のような仕組みが必要だろう。
まあそんなプロセスを経なくても、出し手がパスできる状態で攻撃側が中にポジションをとっていれば、自ずと守備側は中に絞らざるを得ないが。

そうやってどうにかして画像⑩の状況までもって来れれば、被カウンターのリスクも少なくゴール期待値も高い波状攻撃が可能になるだろう。


以上、「攻撃時のコンパクト」の有用性の話。
アスリート能力で上回ったりしていて1対1で相手をぶっちぎれるなら狭くするのは悪手というか勿体無いが、そうでない場合や、テクニックに自信がある場合は、攻撃時の配置をコンパクトにするような戦術にすることで、解決できる問題があるかもしれない。
良い子のみんな、無駄に広がるな!

というかそもそも普段みんながやってる練習ってコンパクトな攻撃じゃね?とか言ったりしてね。


終わり


追記


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