守備を崩すには

前提として、どんなに良い守備でも、守備は「タイミング」で成り立っているということを忘れてはいけない。
戦術ボード上で「ここではこう構えてこのコースを切って」とかやってても、実際にそのタイミングでそうなっていなければ、その守備は成立していない。

そしてその”タイミング”は「予測」が元になっていることも頭に入れておこう。
ボールは人より早いし、人も攻撃側は先に勝手に動くのだから、広いコートでそれに対応するには予測せざるを得ない。


でだ。
じゃあそんな守備を崩すにはどうしたらいいかって話だけど。

守備を崩すには、

①スピード = 守備側のタイミングを上回るスピードを出す
②方向転換 = 守備側にタイミングを取らせないために方向転換する
③裏切り = 守備側の予測を裏切る混乱させる

の3つの要素のどれかを持ったプレーが必要なわけだ。


って考えると、足が速い選手はやっぱり今も昔も純粋に有利だね。
だって①スピードそのものだもん。
この①スピードは、人の動くスピードだけでなく、ボールを動かすスピードも含まれるけど、その面ではキック力とボールテクニックは重要だね。
それと②方向転換③裏切りの実行スピード、いわゆる判断のスピードも①スピードには含まれるけど、そのスピードを上げるには「いちいち考えながらやってます」じゃあダメだわな。

②方向転換はさ、絶えずただ方向を変えてるだけでも守備側はタイミングを取りづらいけども、より効果的にするには「いつどの方向にどう動かすとどうなるか」を学ぶ必要はある。
その過程で、ボールを方向転換させる効果的な方法としてポジショニングを学ぶことにもなるだろうね。

③裏切りは①スピードの価値を高めるためにも重要だし、スピード不足を補うためにも必要だったりするね。
緩急でズラす、数的優位で守備側の予測先を増やす、守備側が守れていると思っているところに股抜きパス、などなど。守備側の「〜だろう」を裏切る行為はスピードを際立たせてくれる。


ちなみにこの①スピード②方向転換③裏切りの3つは、11対11の中ではもちろん、1対1の局面でも通用する普遍のもの。


でだ。
ここからがこの記事で言いたいことなんだけど。簡単に言えば

①スピードが無ければ、②方向転換も③裏切りも意味なくね?って話。


「①スピードが無ければ」というか「①スピードが相手より大きく劣っていれば」かな。
大きく劣った状態で②方向転換や③裏切りを繰り返したところで通用しない、ってこと。


「フィジカルレベルがカテゴリーを決める」っていう話にも関わってくるけど、攻撃側の①スピードが低すぎて守備側が攻撃側の動きを見てから動き出しても間に合うレベルの差なら、守備側は予測に頼る必要も無いし、守備のタイミングを合わせ放題になってしまう。

その関係性だと、②方向転換③裏切りはただの小手先の技に成り下がり、単純な力=①スピードにねじ伏せられてしまう。

だからね、巷ではポジショナルプレーやパウサがどうのこうのと言われたりもするけど、そもそも「素早くプレー出来る」っていう前提がカテゴリーの基準値に届かないと、そういうのもあんまり意味がないのよね。

急に野球で例えるけど、ピッチャーの配給や緩急って、バッターが予測して振り出す前提で成り立ってるでしょ?
あれがもし「毎回ピッチャーが投げたボールを見てから振り出してもバッターは十分に対応できる」のであれば、ピッチャーはどんなに配給を工夫しても意味がない。
逆に球速がとんでもなく早いピッチャーだったら、バッターは予測をするしかないし、そこで緩急として急に遅い球が来るから体勢が崩れちゃうのよね。
①スピードが重要ってのは、これと同じようなこと。



そしてコーチらしくここからは育成の話。

その①スピードを身につけるための一つとして、スピードに乗ったままのプレーをもっと容認しても良いんじゃないかな、って最近よく思うようになった。

同じレベルの①スピードをもった相手を攻略する手段として、②方向転換と③裏切りを選手たちに教えてることは多いと思う。
いわゆるスキルや戦術ってのは②③がメインとも言えるし。

けど、その②③を伝える過程で、①のスピードを殺してるな〜って感じることがある。
②③を発揮して相手守備を攻略しようと選手が試みることで、スピードに乗った早いままのプレーが発生しづらくなったりするんだよね。
そうなると、選手たちは①の体験が少ないまま成長することになってしまう。
①スピードという前提が無いと②方向転換③裏切りが生きなくなるのに、指導することでその①を学ぶ機会を減らしているとしたら、なんだか馬鹿みたいな話よね。

それと練習の環境でも思うことがあって。
冒頭で「ボールは人より早いし、人も攻撃側は先に勝手に動くのだから、広いコートでそれに対応するには予測せざるを得ない。」って書いたけど、逆に言えばコートが狭かったら守備側はタイミングが合わせやすいんだよね。間に合うから。
まあだから狭いコートの練習では攻撃側はよりスピードを上げてプレーする必要が出るのだけれども、ただこの環境ってフルスプリントや全力キックでプレーする機会は減るんだよね。
「全力で走って追いついたボールをそのまま強いキックでパスする」みたいなスピードに乗ったままのプレーを体験するという部分では、すごく物足りない環境なんだよ実は。
狭いコートならではのスピード向上もあるけど、たぶんそればっかりだと試合で求められるスピードの全てには対応できない。
広々としたコートでやるってのもやっぱり大事なんだ、と改めて思う。

ただね。
年齢が低いほどフィジカルレベルの個体差がエグいけど、広いコートだとその差がどうしても強調されちゃうのよね。
そこで早熟選手が①スピードだけで相手をねじ伏せたプレーばっかりしていても、いつかフィジカルレベルが拮抗してきたときに手詰まりになっちゃう。
晩熟選手は②方向転換③裏切りで早熟選手に対抗しようとするけど、①スピードの前提が違いすぎると成功体験にならない。
広いコートの中で、お互いの持っているフィジカルレベルによって発生するプレーを尊重しつつも、バランス良く①スピード②方向転換③裏切りを同時に学べる環境にはやっぱりしたいところ。
ここが悩みどころだね。



タイトルから話が逸れてきちゃったな。
まとめると。

守備を崩すには①スピード②方向転換③裏切りが必要だけど、その中でも①のスピードが無いと②も③も意味ないぜ!①を育もう!
という話でした。


終わり

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