守備のやり方のそもそものところなんだけど

2021/9/7追記:目次見出し「中間ポジションの性質とマンマーク」「5バックの理由と4バック」


記事のきっかけ

こんなツイートをした。

この「正面に立つ」が守備でとても大事だと思ってるんだけど、「ボールとゴールの間に立つ」という考えがあることがわかった。

どうやら一般的にも後者で教わることが多そう。

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これをきっかけにこの記事を書こうと思った。


で、その「どこに立つか」でキーになってくるのが、「ボールをどこに行かせたくないか」

この「ボールをどこに行かせたくないか」という意思を持っていることが守備の超基本。

これが無いまま守備をするのは、プレゼントの日としてクリスマスをお祝いするようなもの。

という謎な例えは無視していいです。


本題に戻る。

「ボールをどこに行かせたくないか」を言うなら、ピッチ上のほとんどの場所では間違いなく「前方向」が「行かせたくない」になる。

「自ゴール」って言いたい気持ちもわかるけど、それは一部の場所なはず。

自ゴール前までボールを持ってこさせなければシュートの心配をしなくていいんだから。

自ゴール付近だとしても「自陣ゴールライン付近までエグられてからのクロス」も嫌でしょ?だったら自陣のかなり低い位置ですら場所によっては「行かせたくない」のは「前」になる。

行かせたくない方向を防ぐにはそこに立つのが一番。

だから「正面」なんだよ。

念の為に言うと”ボール”の正面。”ボールを持つ人”の正面じゃない。「行かせたくないのはボール」だから。


真正面じゃなきゃいけないとは言わない。

この記事(同じシオンという名前の人だけど同一人物じゃないよ)の中にある

もう一つのキーファクターとして45°の体の向きを作った際は、後ろの足が行かせたくない方向とボールを結んだ線上にあるのが好ましいです。

この文のように、後ろ足がその線上にあるだけでもいい。

とにかく「前方向」に行かせない場所にいる必要がある。

なぜなら”行かせたくない”から。


いわゆるチャレンジ&カバーと言われるものも要らない

守備では「ボールとゴールの間に立つ」と合わせて、チャレンジ&カバーと言って、こんな形をよく教わる。

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「チャレンジ」がボールを持っている人に取りに行って、「カバー」は「チャレンジがドリブルで前に抜かれた時」と「自分のマークにボールが入った時」に備えた位置を取る、というもの。

ここに物申す。

チャレンジが抜かれた時に備えるのは良いけど、カバーがそれを意識したポジションを取ったら自分のマークはどフリーだ。

とはいえそこまではポジショニングでどうにか出来るかもしれない。問題は実際にチャレンジが抜かれたところにカバーが助けに入った時。

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これ、カバーはスピードに乗ったドリブルに対して遅れて行くことになるし、カバーがマークしてた相手は空いちゃうよ。どっちにも遅れてる状態。だったらカバーがドリブル突破に備えたポジション取ってた意味あるの?ってなる。

もちろん試合なら空いたマークは他の味方が対応することになるんだろうけどさ、この2対2の関係においてはカバーがいる意味無いじゃん。

抜かれたらそこを対応しに行くのは当然なんだけど、縦(前方向)に抜かれるのを前提としてるのがそもそも間違いだと思う。

チャレンジ側がカバーありきの守備になって簡単に縦に抜かれてるのとか何度も見たことが有るけど、カバーの距離考えたらそんなの成立するわけがない。

だから「チャレンジ」が最もやられては行けないのが”縦突破”なわけさ。

どうしても抜かれるならせめてカバーから遠いところじゃなくてカバーが要る方向に抜かれなよ、ってね。

チャレンジが縦方向を邪魔してくれてれば、カバーは横方向のボールの動きに注意するだけでよくなる。

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その結果このぐらいの位置関係になったとしても、チャレンジが抜かれたらカバーは対応に行くことは出来る。どっちにしろ遅れてるんだし。

なんだったら、チャレンジが正面に立っていることで、まっすぐスピードを上げられることが無い分、カバーが間に合う時間を作れる可能性も出てくる。

だからここでも「行かせたくない」はやっぱり「前」になる。

余計なカバーをやらなくてよくなるから。

チャレンジは「サイドに追い詰めるワンサイドカット」とか言って横切りまくってる場合じゃない。

縦だけは死んでも行かしちゃダメなんだ。

それで優位が大きく変わるんだから。

カバーに甘えたらチームが壊れる。

そして自ゴールに近づけば近づくほど、シュートの可能性を考えた対応も必要になってしまう。

だから何のアイデアも無いんだったら絶対に前に進まれてはいけない。

中にドリブルしてきたらどうするかって?

攻撃側のスペースが無くなるだけでしょ。

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横にボールが動くだけなら一生ゴールはされないよ。

ゴール前ではまたちょっと状況は違うけどね。


ディアゴナーレが何のためか知ってる?

チャレカバの派生みたいなので「ディアゴナーレ」という守備ムーブを教わることもよくある。

守備時に横ラインを形成している内の一人がボールにプレッシャーを与えに出ていった際に、その出ていった選手が開けたスペースを同ラインの味方で埋める、というもの。

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ディアゴナーレってたぶんイタリア語で「斜め」って意味だと思うんだけど(英語のダイアゴナル)、出ていく選手に対して斜め後ろをカバーするように動くことから、それで呼ぶようになったのかな?

この動きは何のためにやってるのか、っていう話なんだけども。

これを先程のカバーのようにドリブル突破に備えたカバーと思ってやっていたら間違い。

これは「前方中央(=危険な場所)にボールを通させないため」にやるんだ。

先程のチャレカバのカバーも、それを意識してポジションを取るべき。

ここでも「行かせたくない」のは「前」。その次に「中央」が来る。

順序を間違えてはいけない。

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ちなみにカバーが何もしないとこうなる。危険な場所を使われ放題になる。

だからカバーの味方がスペースを「閉じる」。


で、このディアゴナーレが「前方中央にボールを通させないため」にやるのだとしたら。

ボールへのプレッシャー状況によってカバーの位置が変わる。

ボールホルダーがパスできる状態の時、チャレンジのプレッシャーがボールから数mの距離なら、チャレンジが守れてる範囲は下図の塗られた範囲ぐらいで、ボールホルダーはロングボールを蹴ることも選択肢に入る。

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同ラインのカバーは、ゴロで前に通される範囲を消すためと、ロングボールを出された後の対応も考慮して、チャレンジのけっこう後方でかなり閉じる必要が出てくる。

でももしボールホルダーがパスできる状態の時、チャレンジのプレッシャーがボールから50cm以内の距離にできていたなら、前方向に進まれることがなく、ロングボールへの警戒も要らないため、同ラインのカバーはほぼ真横を狙うことができる。

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なのに、このプレッシャー状況でも、「ディアゴナーレだ!突破に備えたカバーだ!」とか言って、チャレンジの後方を守っていたら、体力を消耗するだけで一生ボールは奪えない。

だから何のためにやっているか知っている必要がある。

その「何のため」を整理してくれるのが、冒頭で言った守備の超基本「ボールをどこに行かせたくないか」

それさえわかってれば、例えばこの十分なプレッシャーが掛かっている状態でのカバーの動きは、

ボールを「前」に行かせたくない

ボールは前に行かないようになってる

「中央」は?

中央も通されなそう

じゃあ横狙っとくか

とポジショニングが決まってくる。

だからディアゴナーレの動きばっかり練習しても、その「行かせたくない」の優先順位が抜け落ちてたら何の意味もない。


言い換えると、チームとして「どこに行かせたくないか」の狙っている形があるなら、「前」に進まれることだってもちろん悪いわけじゃない。

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こうやって進ませた先で閉じ込めて奪うつもりなら、全然それで良い。

「行かせたくない」の共通理解が必要だ。

ただ、サッカーの特徴や、守備の仕組みを考えると、だいたいの場合は攻撃側に「前」に進まれることで不利が増える。

だからやっぱり「正面」に立つことが大事。


”当たり前”を考えよう

冒頭のツイートの引用元にある

当たり前のように教えられてきたけど、果たして本当にそうなのか

という文。

この記事が、それを考えるきっかけになれば嬉しいです。

当たり前に教えられてきた「ワンサイドカット」「チャレカバ」「ディアゴナーレ」が、本当に正しく運用できているのかどうか。

改めて考えてみると面白いですよね。

その守備面を考える上では、攻撃側の視点から考えるのも一つです。

例えば攻撃側から考えたら「ディアゴナーレって横パスずっと回してたらバテるんじゃね?」とか「チャレンジの隣が必ず後方をカバーするなら、ボールの隣のやつは真横にサポートしてたら絶対フリーじゃん」とか「俺たち前に行きたいのに前が開いてるぜ」とか気づきがでます。(意地悪をしようと考えるのがコツです)

そんな時守備側はどうすれば?って考えると、理解がおかしい部分や不足している部分などが出てくるかと思います。

そういうのを見つけた時に脳汁が出ます。


ちなみに、本記事は基本原則的な部分の話なので、「こういう場合はどうするんだよ」「こういう選手だったらどうるすんだ」みたいな話とはレイヤーが違います。

以上、何かのお役に立てれば。



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以下 2021/9/7追記分
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中間ポジションの性質とマンマーク

「中間ポジション」というのを聞いたことがある人もいるはず。

それを教わった人もいるはず。

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上図の白丸の選手たちみたいな、パスを通されないようにスペース管理しながらカバーも考えてどこにボールが出るかによって2つ3つの行き先を選べる”中間”のポジション、ということで「中間ポジション」。(たぶん攻撃の中間ポジションもあるよ)

ボールから遠い場所に位置する選手がそんな役割をよく担うことがあるはず。

ボール付近やDFラインなど、どこかに守備側が数的優位を作ろうとすれば、他の場所が数的不利になる。

その数的不利な場所にボールが入った時に遅れないように、様々な場所に動けるポジショニングを取っておく、という意図でやっていると思う。

で、この中間ポジションなんだけども、”中間”をスタート位置とするだけあって、そこから動く速度が必要になる。

中途半端に遅れていくと、ちょうど入れ替わられてしまうタイミングになる場合も珍しくない。

そのままボールの先々で遅れていったりもする。

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(上図は雑な例だけど、こういうこと。取りに行ったタイミングでボールを動かされるを繰り返して、その歪みが広がって大きなフリーを作ってしまう的な。)

だから「中間ポジション」は便利だけど、万能ではないわけだ。


この記事でも書いたけど、ポジショニングは「先回り」あってこそ。

“ポジショニング“とは、「どこにどんな準備をして居れば効果的か」を考えてピッチ上に位置取る行為。
そのポジショニングは「相手より早く動く」手段の中でも特に効果的な「先回りする」を可能にするスキル。
攻撃ではボールを動かしたい場所、守備ではボールを動かされたくない場所、に先回りすることがサッカーでは出来る。

遅れて行くようなら、そのポジショニングは効果的では無い。

中間ポジションはその「先回り」という目的が達成出来るかどうかで、天国と地獄がはっきり分かれる。


そこで問題になってくるのが近代サッカー。

単純なテクニックの向上だけでなく、ポジショナルプレーで判断スピードも整理されてきているのもあって、ボールの動きが尋常じゃないぐらい早い。

そう。

中間ポジションはその早いボールの動きに対してはカモになってしまう。

人が走る速さには限界がある。そしてボールは人を簡単に置き去りにする。

だから「間に合わない」という現象が出てきてしまう。

そうなると先回りになっていないし、中途半端に遅れるぐらいだったら、最初から引いて自ゴール前に先回りしとこうぜ!にならざるを得ないことも多々。


そこで再検討されたのがきっとマンマーク。

ボールは人を経由する。これはサッカーの原理。

中間ポジションの位置でボールが出されてから動いていたら間に合わない。だったらボールの行き先、つまり”人”に対して先回りしておこうぜ!で、マンマーク気味の戦術の有効性が再利用されたのではないかと。

その背景の一つとして、ポジショナルプレー的な発想も影響していると思う。

ポジショナルプレーは、ピッチいっぱいにバランス良く人を配置するように、静的に整理されたポジションを取ることが多い。

となると、人に付くマンマークも、各々のターゲットがわかりやすく、やりやすい。

ポジショナルプレーの影響でボールスピードが上がっているなら、それに対抗する手段としてマンマークが採用されるのは、わからなくもない。


マンマーク的な守備に対しては、マークが混乱するようなポジションチェンジや2〜3人のコンビネーションなどが有効になってくる。あとは1対1での突破。

そうなると今度は、攻撃側の距離感が近くなってスペースを管理するゾーン的な守備が効果を発揮するようになる。1対1に強い相手には複数で守れる。

というループがサッカーでは繰り返されるんだよねきっと。

試合中の局面によっても変わるのは、静的な位置関係で組み立てて無理な突破が無いビルドアップに対してはマンマーク気味、複雑な動きで狭いところを強引な突破もありで攻めてくるフィニッシュに対してはゾーン気味、という使い分けが発生するから。

サッカーには「これだけやってればいい」は無いな、とつくづく思わされる。


ちなみに中間ポジションはゾーン気味の発想だとは思うけど、「マンマーク的な考え」でやるものと「ゾーン的な考え」でやるもの、のどちらもあるとも思っている。

「2つ3つの行き先を選べる”中間”のポジション」の行き先として捉えているのが、「人」なのか「場所」なのかの違いがそうなるのかなと。

どちらにしろ「それをやることで先回りが成立するのかどうか」が大事になってくる。


5バックの理由と4バック

中ポジ(中間ポジションの筆者的な省略)はボールスピードが早い相手のカモになる、の理屈で言うと。

5バックが流行り出してるのもそこに理由があるのではないかと。

近年のサッカーはパススピードが上がってるし、立ち位置も整理された状態でのボール循環も徹底されていることから、逆サイドへのボールや、サイドとインサイドの出し入れなど、DFラインにスライドが求められるアクションに、4バックだと対応が間に合わないケースが増えてきた。

というのが理由。

特に、4バックでSHが逆サイド側のスペースに降りてくる仕組みは、中ポジが遅れるのと同様に遅れることが多くなった。

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同じくDFラインの話で、SBが外に出ていった時の、CBとの間(通称:チャンネル)への対応も、遅れるランキングでは上位。

CBは中を埋める役割があるから出ていけないことが多い→じゃあ誰がそこを埋めるのかと言えば、前から下がってくる中盤の選手=遅れがち。

だから5バックにして危険なところから先回りで埋めていこう!の発想になったと思う。

危険の優先順位は、『後(背後)>横>前』&『中>内>外』だけど、じゃあ「DFラインの外」と「中盤の中」だったらどっちが危ないのか、って言ったら私は「DFラインの外」だと思うし、だからこその5バックが生まれたんじゃないかなと。

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(危険の優先順位を並べ替えると、
後(中>内>外)> 横(〃)> 前(〃)
になるか、
”前”だけ外>内>中になるかも)


ただこの辺を言い換えると、要はDFラインのスライド対応が間に合わないから5バックにしたいわけで、守備面だけで言うならスライドが間に合うならわざわざ後ろに人数かけないでも守れるかも?になる。

だから、4バックだったら外に誘導するなら絶対にそのサイドに閉じ込めるつもりで守備するべきだし、そうじゃないならそもそも外切りして中にボールを誘導すれば数的優位&スライド不要なんじゃない?と机上の空論では思うよ。

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上図は外切り[4-4-2]例。

その昔「佐々木なでしこ」の時はそんな狙いを持った[4-4-2]だった気がする。


「これだけやってればいい」が無いサッカーだから、理論が合っていて優れていたとしても、必ずそこにはデメリットがあるはずだけど。

やるのは人間だからね。

そもそもバラつきがあるから。

そのメンバーでどうやったら先回りできるか、でポジショニングやフォーメーションを調整しないといけない。

だから「5バックだから全て止められる」というものでももちろんない。どんな布陣にしようと、相手より遅れてたなら何も防げない。

逆に、パススピードが遅くてサイドチェンジに手間取ったり片サイドからしか攻めない相手なら、4バックのスライドでも十分間に合うはず。

相手のボールスピードが早くても、自分たちの機動力(走力+反応速度+ポジショニング)がそれ以上のレベルなら、4バックのスライドでも何も問題は無い。

4バックで守ることにより、奪った後の前線の人数をより多く確保することで、それがプレッシャーとなって、相手の攻撃スピードを遅くできるかもしれないし。

5バックだから硬い、という”当たり前”は疑わなければならない。



終わり

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