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VTuberの公式TSがなぜ苦手なのか理解できなさすぎたので理解を試みた話。



きっかけ

 推し(VTuber)が、最高な歌ってみたをハロウィーン当日にいきなり出した。

 本当にいきなりで、どの楽曲を歌うかとか、そもそも歌ってみたを出すことすら事前に知らされてなかった。(とはいえ、「お知らせ」の匂わせはしていたし、ハロウィーンに歌ってみたを出すのはVTuber界でよくあることではある。)
 サムネイルに写っているのは、バニーガール(にしては布が多めだが)であるが、推したちは、男性ヒーローとしてデビューし、普段はその格好で活動している。バニーガールではない。今回、彼らがバニーガールになったのは、歌ってみたの本家も男性でありながら、MVではバニーガールになって
いるからである。


 VTuberには、ファンアート(FA)を描いて本人が推奨するハッシュタグをつけて投稿する文化がある。そのハッシュタグには一般的なファンアートを投稿するタグと、そうではないハッシュタグを投稿するタグがある。

 一般に、ファンが公式からネタもなくTS(性別変更)ファンアートを投稿する場合は、一般的なファンアートタグには投稿しない。
 逆に、公式からTSのファンアートを求められることや、エイプリルフールなどにVTuber本人にとても似た別の性別の存在が現れたりする。それらの場合には、それ専用のハッシュタグが提示されることもあり、そちらにファンアートを投稿する。

 普段からTSを好む者は今回の歌ってみたの投稿に歓喜し、すぐにファンアートを描いた。だが、ハッシュタグの付け方に悩んだ。今回の3人にはTS用のハッシュタグはなかったし、これまでに言及もなかったからである。
 反対に、TSが苦手な者も悩んだ。苦手なものが流れてくるので。

 そこで議論が起こる。「配慮しろ」だとか「自衛しろ」だとか。
 これが、オタクの学級会で済めば良かったのだが、それだけには止まらず、VTuber本人にも矢印が飛ぶことになった。

 そこで絵が描けないTSが好きな私は思った。「なんでそんなにTSが苦手なん?」と。

このnoteの立ち位置

 このnoteは、今回の議論に何かしらの意見を投じるものではない。したがって、「〇〇はこうすべきである/すべきであった/すべきではない/すべきではなかった」などの提言をすることを目的としていない。
 ただただ、TSが好きである私が「なんでそんなにTSが苦手なん?」という疑問を解消する必要があると思った過程と、その疑問の解消の過程を記録するものである。

 その過程には、沢山のフォロワーさん(じゃない人もいる)からのマシュマロが大いに役立った。役立ったレベルではない。マシュマロがないと解消できなかった。多大なる感謝を改めて申し上げる。

「なんでそんなにTSが苦手なん?」という疑問を解消する必要性

 通常、違う意見を持つ者が衝突したとき、X(Twitter)に住むオタクの間では、ブロックやミュート等の機能を駆使し、互いに関わらないように/その話題に触れないようにすることがスマートなムーブだとされる。だが、今回、私にはそうできない理由があった。

 「TSが苦手な人とトランスヘイターが同じ層ではないか」という考えが拭えなかったからだ。(「トランスヘイター」という言葉が強すぎたなと反省しています。申し訳ございません。「トランスフォビア的な思想を持つ人」などの表現がベターだったかなと思います。)

 とても良くない考えだと思う。この考えを抱いた私自身にとても危機感を覚えた。今すぐにこの考えを払拭し、改めなければいけないと思った。きっとこれは私の認識が誤っているからであって、きちんと認識を改めたら誤解が解けるはずなのではと思った。でも、どんなに私1人で想像力を働かせても、TSが苦手な人の意見を探してみても、上手くその考えを払拭できない。
 それゆえに、この疑問をポストするに至ったのである。

前提

 公式からネタの提供もなくいきなり創作されたTS(主に女体化)のファンアートが苦手な人がいること、またその理由は私でも想像ができ、それらがトランスフォビアとは別の理由であることも想像ができていたので、今回の対話では扱っていない。(これに関連したマシュマロを送っていただいた方には解像度を上げるために非常に助かったので感謝している)
 話したいのは、「(今回のように)公式から提示されたTS(主に女体化)自体や、それに関連した二次創作の一枚絵などのFAが苦手な人が、なぜ苦手なのか?」である。

 苦手な理由を聞き出したので当然であるが、今回頂いた意見の中にはTS(主に女体化)に対して否定的な文章が含まれる。それらは、特定の演出や思想の上でされた一部分のTS(主に女体化)を否定するものが殆どである。
 今回のきっかけとなった歌ってみたは、たまたま、今回のきっかけとなり、分かりやすい例として、私と私のフォロワーの共通認識になっただけである。頂いた意見が指すTS(主に女体化)は、必ずしも、今回のきっかけとなった歌ってみたの女体化を指すわけではない。必ずしも…というか、このnoteを執筆するにあたってはその可能性を排除している。このnoteに登場する意見はどれもあなたの推しの行動を否定したり、非難するものではない。安心して欲しい。
(なぜ今回の件が起こってしまったのか的なことはずっと考えてはいるので、今回のnoteとは別で文章化したいという気持ちだけはある。)

 とはいえ、このnoteに書いてある何かしらが起因して、強い精神的なストレスを覚えた場合には無理せずブラウザバックをして欲しい。そこまでして読む文章ではない。

 これらのことを念頭に置いた上で、以下を読み進めて欲しい。

「公式TSが苦手な人とトランスフォビア的な思想を持つ層は同じではないか」という考えに至った背景

 VTuberがTSすることと、トランスジェンダーの人が(社会的、または医療的に)性別移行することにはどちらも「本人の意思」が必要であると私は解釈している。(トランスジェンダーの人が性別移行するために必要なのは、本人の意思だけではない。また、VTuberがTSするにあたっても、事務所に強く勧められた等の他者の介入によるTSの可能性がない訳ではないがここでは、本人の意思によるものとする。)

 トランスジェンダーの人の性別移行に対して他者が何かマイナスな意見を本人に届く形で表明することは、その本人を尊厳を脅かす行為であって許されざることである。そういった行為を行うのがトランフォビア的な思想を持つトランスヘイターである。トランスヘイターらと、公式TS(主に女体化)がTSであることだけを理由として「苦手だ。気持ち悪い。受け入れ難い。」とSNS上で表明する人との違いが私には分からなかった。どちらも同じ理由で「最初に男/女と分類されたなら、そこから出てくるな。変わるな」と言っているものだと思っていた。

 また、今回のnoteの端々で書かれている(主に女体化)に引っかかった方も多いだろう。勿論、今回のきっかけとなったのが女体化だったために、女体化が話のメインであることは否めないのだが、それだけではない。
 女体化と男体化には様々な違いが存在するようである。私自身それはなんとなく認識しており、その受け取られ方の違いの理由は(作り手・受け取り手それぞれの)ミソジニーによると思っていた。その点でも、現実に起こっているトランスヘイトと構造が同じであると思っていたのだ。

 勿論、これらの誤った認識は改まる。

 また、私に意見をくださった方々の多くは、TSが苦手ではあるがSNS上など多くの人から見られる場では苦手だという意見を表明せずに、私の疑問を解消するために、(マシュマロというプライベートなツールを利用して)付き合ってくださった心優しい方々である。
 今回の歌ってみたを投稿したVTuber、TSが好きなオタク、そして勿論トランスジェンダーの方々を傷つけないように配慮されてきている方々だ。私が先述した、「トランスヘイターとの違いが分からない」という層とは若干違うことをご了承願いたい。

 以下からは、マシュマロでいただいたTS(主に女体化)が苦手な理由や、苦手な要素のをもとに、私が「それは本当にトランスフォビアには繋がらないのか?」と意見を述べる形で進む。
 そのために、少々強い語気になってしまうことがある。先ほども述べたが、強い精神的なストレスを覚えた場合には無理せずブラウザバックをして欲しい。そこまでして読む文章ではない。

女性性を露骨に押し出している

 「女性性を露骨に押し出している」女体化が苦手だという意見をいくつか頂いた。胸やお尻などを強調した女体化ということだろう。

 トランス女性が性別移行した結果として、巨乳になることはありえないことではない。巨乳になって、胸元が多少開いた服装をすることだってあるだろう。それ自体を非難することはし難いはずである。

 トランス女性とVTuberの公式女体化の違いがあるとすれば、トランス女性は一個人であるのに対して、VTuberの公式女体化には公共性があると解する場合である。その場合、許される表現に差があるのは納得がいく。
 今回のきっかけの歌ってみたがそれに当たるかどうかはこの記事の趣旨から離れるのでここまでにとどめておく。

 ちなみに、男体化は平気だが女体化は苦手である人の多くがこの理由を挙げていた。

公式のビジュアル(性別)と著しく違う姿が事前予告もなく突然出されたからでは?

 「公式のビジュアル(性別)と著しく違う姿が事前予告もなく突然出されたからでは?」「突然出されたら二次創作と変わらない」という意見。

 もちろん、突然なのでビックリするのは分かるし、私もビックリする。が、かといってそれが、受け入れ難い理由にはならないのでは?と思う。私は、突然でビックリしたが、受け入れているし、同じような人も沢山いる。

 また、現実社会に置き換えてみても、それまで無理してシスジェンダーのように振る舞っており他者から見てもシスジェンダーに見えていたトランスジェンダーが、少し時間を置いて久しぶりに再会したら、性別移行をしている可能性は0%ではない。それに対して、「予告なく性別移行した姿で現れるなよ!」とは言い難いはずである。

ある程度のガチ恋思想がある人で、男性だけが恋愛対象な人は受け入れ難いのでは

 「ある程度のガチ恋思想がある人で、男性だけが恋愛対象な人は受け入れ難いのでは」という話。ガチ恋ではないにしろ、「男性の推し」に拘っている人ということであろう。ここでは分かりやすいので、ガチ恋ということにする。

 ここで初めて、私は「なーるほど!」となった。

 相手の性別が変わってしまって、自分の恋愛対象外になってしまったということだ。
 それは大変なショックである。

 同性愛者は異性を恋愛対象から外し、異性愛者も同性を恋愛対象から外す。それらは無意識的に自分の意思で他者を恋愛対象から外している(とする)。それに対して、TSは相手が恋愛対象外に移ったということである。

 これはもちろん現実のトランスジェンダーの人が相手でも似たようなことが起こりうる。
 シスヘテロ女性がクローゼットなトランスヘテロ女性に恋心を抱いていたが、何らかのタイミングでカミングアウトをされた場合である。それは必然的に失恋を意味し、失恋のショックが受け入れ難いがために、その人がトランスジェンダーであることに八つ当たりしてしまうのも分からなくはない。
 
 まあ、外から見れば、それがトランスフォビアからくるものか失恋からくるものかの見分けはつかないが。

結論

 私が思っていた以上に、人間は性別に拘りを持って生きているし、拘りを持ってオタクをしていることが分かった。
 それが分かったのは、ひとえにマシュマロをくださた皆さんのおかげだ。改めて感謝申し上げる。

 そしてこれを執筆するのに2週間近くかかってしまったこと、申し訳なく思う。私の中で沢山の思考が広がってしまい、それに付随して調べ物が増えたせいである。このnoteにはそれらの要素を一旦排除する形にしてなんとか書き上げることができた。時間の余裕と余力があれば、調べた結果などを参考にしたnoteも書きたいという気持ちがあることだけはここに書き記しておく。

📝今後、今回の件に関して書きたい話

  • ルール/マナー/棲み分けの話

  • 卑猥/猥褻/センシティブってどこからやねんの話

  • VTuberをどこまでリアル/フィクションのものとして捉えているかの話

  送っていただいたマシュマロの殆どが、この上の3つに分けられる(もしくはそれらが融合した)ものだった。今後、余力があればこれらについても深掘りしていきたい。

んで、歌ってみたは最高なので聴いて

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2023/11/14 18:20頃に誤字脱字の修正。加筆を行いました。

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